第11話 人数増えちゃったな

 イザベラを連れ家に戻った。転移で戻ったがイザベラは転移は初体験だったようで、「私の初体験を奪ったわね責任はちゃんと取りなさいよ」とまた意味不明なことを言ってたがスルーした。


 居間には、女性達が揃っていて、カオル達が用意した軽食と飲み物で寛いでいた。みんな落ち着いてはいたが楽しそうな雰囲気では無かった。そりゃそうだよなオークに攫われた所から記憶が無くて、いきなり見知らぬ家に居たら不安しか無くて当然だ。


 イザベラがみんなの前に出て声をかける。

「私はこのファルムの街の、領主の娘で現在領主代理をしているイザベラ・フォン・ファルムと申します。皆様に事情をお聞かせ頂き、今後の身の振り方の相談を受けるために参りました。大変つらい思いを成されたでしょうが、折角助かった命です。この国、この街のために、役立てる事をお勧めします」


 改めて、女性達を見回すと10台半ばから40台手前くらいまでの女性達が揃っている。オークの本能として妊娠可能な女性を攫っていたんだろうな。だが、それは裏を返せば妊娠の出来ない女性や男性は、問答無用で殺戮し食料とされたであろうと、予測できる。


 女性達を代表して比較的年上のレイアと名乗る女性が、口を開いた。


「私達は、オークに攫われた所から記憶がないの、誰一人としてね。でも私もこの国で生活してきた女だから、オークに攫われることの意味は当然わかってる。恐らく私達はみんなオークに犯され、その子供を身ごもっているはず、その先がどうなるかも、イザベラ様は解るでしょう。このお腹を突き破って出てくるオークに殺されてしまうのを待つだけの身です。出来れば苦しまずに殺していただける事を望みます」


「レイア、勝手に死ぬなんて言葉を口にしてはなりません。しかしその心配する気持ちも解ります。安心しなさい。そこにいるコウキによりあなた達の身体と記憶は、攫われた時点まで巻き戻されて居ます。オークに犯され子供を宿した事実は既に存在しないのです。今からみんなの希望を聞くわ。まず出身地と名前、襲われた時の状況、その場所の現況を分かる範囲でいいわ。一人づつ聞かせて頂戴。コウキ、文字の書ける人を貸していただけるかしら?手分けして聞き出せばすぐ終わるわ」


 それから、俺、カオル、ユーリ、アラン、サリナ、イザベラで一人づつと話をした。6人で聞けば一人あたり5人と話せば済むので、2時間もかからずに、聞き取りは終えた。


 イザベラが、聞き取った内容を纏め、結論を下す。


「このファルムの街の領主代理としてみなさんにはこの町で暮らすための、市民権を用意して差し上げます。残念ですが、恐らくあなた方の出身された村は、存続してないと判断したほうが良いでしょう。私もギルドマスターとして早速、調査の指示は出しますが、結果が出次第で復興をするのか、廃村とするのかの決定を国と相談して決めたいと思います。当面の生活はコウキさんが皆さんのお世話をして下さるはずです。視線はイヤラシイかも知れませんが、いい人ですので、一週間後にもう一度皆さんのお話を伺いに参ります。それまでに一人ずつの、これからの希望を決めておいて下さい」


「おい、イザベラこんな大人数俺にどうしろっていうんだ。寝室も足りないだろ」


 「内側の街の屋敷を差し上げたでしょ、寝具や必需品は今日中に運び込ませるから、そこで面倒を見て上げなさい、全員女性ですし家事は大丈夫なはずですから、食料だけ準備してあげれば問題ないはずです」


「コウキも抜かないと色々溜まるでしょ?この中からパートナーを探せばいいじゃないの。でも正妻は私が来るから妾としてなら許すわ」


 「ちょっと待て、俺はイザベラを貰う予定もないし、何で領主の娘がこんないきなり現れた怪しい男に、嫁ぐとか言ってるんだ?頭沸いてるとしか思えないぞ」

「勘です、貴方はきっとこの国を根底から覆すだけの存在に成る、私が色々奮い立たせながらサポートするわ、そのためには、私が使えるものは全て使って上げる、この身体も自由にさせて上げるわよ?」


「俺は面倒臭いことは出来るだけやらない主義なんだ。大体なんでそんな立場や実力があるのに、最初会った時にオークに攫われてたんだよ」

 「あーそこを聞くのね、アリスと散歩がてらにオークの出現報告が多かったから、状況把握をしようと思って出掛けてたのよね、で、私がちょっと催しちゃって、お花摘みに行ってる間に、襲われちゃっててね、私魔法は得意だけど、近接は全然だから、侍女たちを守るためにしょうがなく一度捕まったの」


「じゃぁ山賊の時は?」

 「あれも山賊たちが既にアリスの乗ってた馬車の扉を開けてたから、魔法が使えなくて」


「お前さ賢そうに見えて、馬鹿なの?どっちも自分で突っ込んでいかないで、人呼べばいいだけじゃないか、少なくとも山賊の時は、側に俺が居るの解ってたんだし」


 「眼の前に襲われそうな人を見かけて、それを見過ごすような行動は出来ないでしょ?」


「まぁいいや、イザベラは面倒臭いけど、悪いやつではないから取り敢えず協力はする。嫁にする話は現時点ではあり得ないけどな」


 「人前だからって照れる必要は無いのよ?私も伯爵家の嗜みとして、殿方を喜ばせるテクニックは磨いておりますからね」


「いいから、そこから会話を切り離せ」


 「コウキ、取り敢えず彼女達の身柄はよろしく頼むわね、ギルドの周辺調査が終わってから、改めて行動予定を立てるわ」


 イザベラが帰った後で、改めて女性達の方に向き直り、


「取り敢えず移動しよう、あなた達が暮らす事になる屋敷に案内する。ユーリ、こっちの家の事はカオルに任せて、ユーリは当面新しい屋敷の方で、彼女達のまとめ役を頼みたい」

 「畏まりました。彼女達の世話をさせて頂きます」


 20分程歩いて新しい屋敷に到着した。改めて見ても広い屋敷だな。中を確認していくが、直ぐに使うことにも問題は無さそうだ。1人1部屋というわけには行かないが、当面は問題ないと思う。庭も凄く広いので、増築をしても問題無さそうだな。だがこの屋敷は家賃月額20万Gだったって事は買ったら4億8千万だったのか、今住んでる屋敷も、1億2千万だよな、今回の討伐報酬で6億も貰ったって事なのか。その額が討伐報酬として妥当な物なのか、それともイザベラの思惑での過剰な物なのかは、まぁゆっくり調べたら良いか。ハンクならすぐに調べれるのかな?


ユーリが問い掛けて来た。「ご主人様は、彼女達をどのようしたいと思われているのですか?ご主人さまの世話をさせるだけなら、私達だけで十分なので、彼女達をこのままここに住まわすのなら、何か事業を起こされるべきだと思いますが?」


「そうだな、何か考えよう。まだ俺もこの世界に何が在って何が無いのかも、把握できてないから、そう急ぐ必要もない、冒険者の収入だけでも、結構な高額になりそうだしな。この人達の心の傷も癒やさなければならないだろうし、ユーリには苦労を掛けるが宜しく頼むな」

 「私はご主人様の奴隷でございます。命じて下さればそれに従わさせて頂きます」


「ユーリありがとう。でもなユーリ達は奴隷として卑下した生き方はして欲しくないんだ。俺の家族として胸を張って生きて欲しいから、思った事をなんでも言ってくれよ」


 その会話が終わる頃には、イザベラの手配に因るものであろう、大量の荷物を積んだ馬車が屋敷に到着した。みんなの手を借り、屋敷内に運び込み、生活の準備を整えてもらった。


 「ではユーリ、彼女達のことは任せた。何かあれば連絡をくれ」


 と伝えて俺は、家に戻った。家に戻って、使用人達を集め今後の方向性を決める事にした。


「アランとカイルは、基本的に俺と行動を共にして貰って、冒険者として活動してもらう。ハンクは継続して自由に動いて情報を集めてくれ。カオルはこの俺達のホームと成る家のことを任せた。ジョアンナにはまずは鶏小屋だが、今回新しく連れて来られた女性達はみんな村の出身だから、農作業を手伝わせることもいいだろう。必要な人数を言ってくれ、希望者を募る。フローラはさっき連れてきた女性達の中に、ドワーフの娘も居たようだし、これも希望を聞いてからだが、鍛冶を手伝って貰えたらいいな。サリナはもう少し体力を回復させてからだな」


魔法での治癒は、欠損回復だった他の人達と違い、病気からの回復だったサリナはちょっと時間がかかっている。焦る必要もないけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る