第5話 奉公人
『ナビ俺って欠損とか回復できるのか?』
『はい可能でございます。死亡以外の症状は病気も怪我も問題なく治癒出来ます』
それなら、ぐっとハードルは下がったな。
マルクスによって10名の女性が連れてこられた。10代前半から30代くらいに見える女性達で人種も様々だ。
全員が真っ白のシーツの真ん中に穴を開けただけのような布をかぶされ両サイドは紐で結んであるだけの状態だ。ちらりと見える隙間からは下着も確認できない。
「欠損や傷、入れ墨などの確認をする為に、このような状態での面会となります。これから15分間ほど私は席を外しますので、ご確認の上ご健闘下さい。コウキ様の右手の方から6名が借金奴隷左手から4名が犯罪奴隷となります。過度のボディタッチ等はご遠慮下さい」
名前と年齢、人種、購入金額を書いた一覧表を渡され、マルクスは退出した
ミーシャ 12歳 人族 300万G
カオル 18歳 人族 250万G
サマンサ 25歳 獣人族 180万G
ベアトリクス28歳 獣人族 120万G
アンナ 36歳 獣人族 180万G
リリス 45歳 魔人族 100万G
フローラ 48歳 ドワーフ 15万G
ダキニ 80歳 ダークエルフ80万G
ユーリカ 180歳 エルフ 800万G
ジョシュア 25歳 人族 300万G
一番安いのはフローラか、でもドワーフやエルフって年齢が見た目じゃ全くわからないな。ユーリカなんて20歳にも見えないよ。
2人程選ぶか、後は欠損者を見せてもらって決めよう。
「フローラは家事は得意なのか?」
「はい、鍛冶は得意です」
じゃぁ値段も安いし一人はフローラでいいか、もう一人は人族が良いかな獣人族の子とかだと食事の好みとかで大変かもしれないし、ミーシャじゃ若すぎるな、残りはカオルとジョシュアか日本人っぽい名前のカオルにしとこう。でもこんなシチュエーションで、横から見える姿がすごいそそられてしまうよな。
15分が経過してマルクスが戻って来た、「お気に入りの娘はいらっしゃいましたか?」
「はい、カオルとフローラをお願いしたいと思います」
「ありがとうございます。早速用意をさせて頂きますが、オプションなどは良かったでしょうか?」
「オプションとは?」
「主にコスチュームでございますね、借金奴隷であっても、局部を露出するような物でなければ、ある程度はご主人さまのお気に入りのコスチュームを着用させることは出来ます」
「イヤイヤ普通のメイド服でお願いします、スカートの丈も短すぎないようにね」
「畏まりました、その様にご用意させていただきます」
「後ですね、欠損者を見せていただくことは出来ますか?」
「可能でございますが、移動は困難なのでコウキ様に部屋までおいで頂くようになりますがよろしいでしょうか?」
「構いません」
「では早速ご案内させて頂きます」
厳重に鍵のかかった扉を開け地下へ降りていく、少し臭うな。
「臭いでしょう、この地下では売れる見込みの無い者を、死なない程度に食事を与えて居るだけでございます。病気で死んでしまった場合には奴隷商には罰則は無いのですが、餓死をさせると厳しい行政処分が下りますので、お金ばかり掛かって大変でございます」
臭いがきつくなった頃にまさに牢屋と言った感じの場所へ辿り着いた。
男女が3名ずつ居る。みんな欠損や明らかに末期の病の様相を呈している。
「犯罪奴隷ということですが、どのような犯罪を?」
「主に戦争奴隷でございますね、人殺しや強盗などの凶悪犯は奴隷にされること無く死刑になりますので」
「この人達はいくらするんですか?」
「お買い求めに成るのですか?失礼ですが回復手段でもお持ちなのでしょうか?」
「いえ、興味本位です」
「そうですか一人5000Gになります。この値段は当方に利益はございません。隷属術式の施術料でございます」
「全員お願いします」
「畏まりました、くれぐれも餓死や虐待死はさせないようにお願い致します。奴隷の主人に対して厳しい罰則がございますので」
「解りました」
「ではすぐに用意をさせて頂きます」
俺は結局8名もの奴隷を購入してしまった。271万Gを支払ったが、人8人の命が日本円で2710万円か命の安い世界だな。
隷属師と言われる職業の人間がそれぞれの肩に、文様を書き込み、術式を発動する。
「これで奴隷契約は完了致しました。本日はお買い上げありがとうございます」
人数が多いので馬車をチャーターして自宅へ戻った。
フローラが鍛冶の設備を見て興奮している。
「これで思うがままに鍛冶が出来るよ。ご主人さまありがとうございます」
「あれ?フローラが得意なのって家事じゃなくて鍛冶なの?」
「剣や鎧を造るのが得意です」
「料理や洗濯とかはどうなの?」
「女性ですから当然一通りは出来ますよ?得意料理はミミズの炒めものと、冬眠中の蛇を使った活き造りなんかは評判がいいですよ?」
「料理はカオルに任せて、掃除とか洗濯を頼むな」
「カオル、普通の料理を頼むぞ」
「かしこまりましたご主人さま、ミミズが出てきたら私倒れそうです、蛇も」
「心配するな俺もだ」
さて問題は、欠損組の6名だな
アラン 40歳 人族 隣国の兵士で階級は少佐だった。両腕欠損
ハンク 35歳 獣人族 隣国で諜報活動を行っていた豹の獣人。両足欠損
カイル 30歳 獣人族 獣人国で武芸の師範をしていた狼人族。両目欠損、片腕欠損
ユーリ 80歳 ハーフエルフ 奴隷の主人に対しての反逆、重度の性病、両足欠損
サリナ 28歳 人族 隣国の女兵士階級は少尉、末期がん
ジョアンナ25歳 獣人族 カイルの妻、狼人族両足欠損
「こんな役立たずを集めて、何をさせるつもりだい物好きなご主人様だな」とアランが言い
「この世の地獄を早く終わらせて欲しいの、隷属契約で自害も出来ない地獄から救って下さい」とユーリが頼んで来た。
んー言葉が重い
「俺はお前たちを買った、買った以上はちゃんと働いてもらう、その為にお前たちを治す。今日ここで起こる事は他言を禁ずる。これは命令だ。今日はゆっくり休めそして明日からはしっかり働け」
【治癒】
全員を柔らかな光が包む、3分ほども続いたであろうか、光が消えていった跡には欠損を含め、全ての怪我病気の治った6人の姿があった。カイル夫妻がお互い抱き合って涙を流している。他の4人もそれぞれの身体を確認し、体調も回復している事に気づき、言葉を失っていた。
「後で食事を届ける。明日は一人づつ改めて話をさせてもらう」
カオルに全員分の食事を頼もうと思ったが材料が何もない、カオルに必要な材料を書かせてフローラに買い物に行かせた「くれぐれもミミズや蛇を買ってくるなよ」と念を押した。
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