第14話 盗賊ってお約束なの?
スタート時点では、俺は馬に騎乗した。各PTから二人ずつ、馬車の中に座乗して夜明けの明星は4人PTなので、二人が騎乗する事になる。
ファルムを出発して、1時間ほどが経過し、最初の宿場町まで30分くらいの距離の時に異変を感じ取った、どうやら盗賊団の様だ。俺はナビに確認してマップに素早く表示させる。敵は25名正面に15名と両サイドの草むらに10名が潜伏している。
とりあえずこのまま進めても良くないと思い、先頭の馬車に近寄り停止させる。
「何事だ」と商隊の商人さんが聞いてきた。
「どうやら、盗賊団のようです。一度ここで待機してもらって、俺達で殲滅してこようと思いますが、それで構いませんか?」
「まだ何の影も見えないのに何故解る?」
「勘?ですかね」
「フム、そう言うことも大事なのかもな、間違っていたら遅れてしまう分評価が下がるぞ」
その段階で漸く他の馬車も停止して、冒険者たちは集まった。
俺のPT以外の7名は信用していないが、「間違ってた場合の責任は俺が取る。早速殲滅に向かいたい」と言って、商隊の護衛に残るのは、『夜明けの明星』に頼みたいがいいか?と確認を取った。
何でコウキが指図をするんだ?カイルさんが指示をするならまだ解るがと、ユーキが言ってきた。俺は面倒くさくなったので、「じゃぁユーキ達も待機しとけばいい」と言って、カイル、アラン行くぞと3人で向かった。
盗賊の姿が見えてきた。「3人だけでこんな所で何をしてるんだ?今から大きな商隊が通るのを待ち構えてるのに邪魔をするなら殺すぞ」と声を掛けてきた。
「お前たちは盗賊か?」
「だったらなんだ?」
「確認をとっただけさ、違うと言われたら攻撃をされるまで待たなくちゃならないからな」
「何を待つんだ?さっさと死ねよ」と言って斬りかかってきた。
アランが盾で受け流し、カイルが関節を決めて腕をへし折った。
「先の街まで後30分程ですから、生きたまま捉えて、奴隷として売るほうが得です」と言ってきた。
俺は「そう言うもんなのか?なら面倒臭いが生け捕りにしちまうか」と次々に15人の盗賊たちを体術で倒していく。
カイルが俺が倒した盗賊たちの肩の関節を外し、アランが縄で縛り上げていく、両サイドの草むらに隠れていた10人は、右側の草むらから5人が飛び出してきたが、アランが剣の腹で次々と打ち据え倒した。左の草むらは動きがない。
ハンクが殺っちまってるかな?殺してなけりゃ良いが指示してないからなどうだろ?物の10分ほどで、25人の盗賊団は、縛られ転がされていた。その頃には商隊の馬車もやって来ていた。
ハンクが倒した5名も骨折や腕の怪我は負っていたが、死者はなかった。ハンクは、馬車が来た時には既に姿を隠していた。
商隊の代表者のハッサンさんが声を掛けてきた「今回は副マスターのオークラさんから凄いのが、護衛に付きますから安心して下さいと言われてましたが、聞き及んだ以上の手際ですね、感服しました。
彼らをどうしますか?捕まえた盗賊を売り飛ばしたりした場合は、利益は、商隊と護衛の半々と言う決まりになりますが?」
俺は「それで構いません、俺が次の街まで率いていって、後から追いつきますので、先に進んでいって下さい。
商隊の中から1人と『夜明けの明星』か『ユーキと愉快な仲間たち』から1人犯罪者の引き渡しをしたことのある者を俺に付けてほしいですが、構いませんか?」
ハッサンさんは、「不正が無かった事を証明するための指示としても的確です、そうしましょう」と俺の意見を認めた。
『夜明けの明星』のアンナと商隊のオロゴンさんが付き添ってくれる事になり、騎乗用の馬3頭に乗り縄で縛り上げた盗賊を護送することにした。
俺はこの時点でこの盗賊たちが移動手段を持たずに来ている事が、気になったが、他の人間が誰もそこに触れないので、まぁ良いかと思ってしまって、そのまま1時間ほどを掛けて、盗賊を近くの街の衛兵の詰め所に引き渡した。
賞金首や奴隷としての価値の確認には時間が掛かる、という事なので、帰りに寄ることを告げ、商隊を追いかけることにした。
「この辺りの盗賊団としては有名なのか?さっきのは」とオロゴンさんに聞いてみたが、この辺りだと1つ100人規模の盗賊団があるせいで、他の中規模の盗賊団は存在しませんねと言った。
「おい、それってさっきのは100人のうちの25人だったんじゃないのか?本体が危険だ急ごう」
俺は少し焦ってマップを確認する。ヤバイ、盗賊を現す赤い点が大量にあり、それに囲まれるような形で青い点が一箇所に寄っている。
距離はどうだまだ10k近く離れてる。馬で飛ばしても10分以上は掛かるな、「オロゴンさん馬を頼む」と言って、俺は馬を飛び降り、一直線に、馬車の方に走った。
5分程で商隊の影が見えてきた既に取り囲まれている。俺が立ち止まると、ハンクがスッと近寄ってきた。
「どういう状況だ?」
「盗賊団は、商隊を殲滅することは基本的にしません。そんな事をすると、領主軍が本気で潰しに来ますから、今は恐らく妥協点の交渉中です。
恐らく荷物の半分と随行している女性を置いて行けという指示を出しているはずです。
しかし先程先発隊を倒してしまったので、もしかしたらもう少しキツイ要求をしているかも知れません」
「盗賊のほうが優位って事か?」
「数が違いますからしょうが無いでしょう」
「だが、俺はそんな要求を飲む気はサラサラ無い。今度は殲滅でも仕方がないな、ハンク俺の攻撃に合わせて、後ろからどんどん戦力を減らしていってくれ」
「畏まりました」
俺はその位置から交渉をしに来ていたであろう、盗賊団に向かって投石を開始した。3人が商隊の方に来ていたので、3個の投石をして、死体を3つ作った。
そのままの勢いで盗賊団の正面に躍り出て、アラン以外は全員商隊を守る事に専念してくれ、俺とアランだけで殲滅は十分だ。俺は聖剣を取り出し、アランと共に敵に突っ込んでいった。
「盗賊の癖に交渉してくるなんてどんな基準なんだ?異世界意味解かんねぇ」と叫びながらどんどん盗賊を斬り倒していった。アランも「俺も基本退治する事に賛成ですから、スカッとしましたぁあ」と叫びながら、俺と変わらないペースで倒している。
後方でもハンクが一撃必殺で襲いかかっているようで、見えている数の割に、敵の勢いが無い。30分が過ぎる頃に盗賊の首領らしき男が白旗を掲げて前に出てきた。
「もう十分だ勘弁してくれ、盗賊だが、仲間が殺されるだけの状態を、見過す事も出来ねぇおとなしく捕まるからこれ以上仲間を殺さないでくれ」と言って来たので、その言葉を聞き入れ、剣を収め、傷口が塞がる程度のヒールを掛けてやった。
「助ける条件はお前達の本拠地の場所を吐くことだ。確認して嘘であれば、全員ここで首を跳ねてやる」
その言葉で、敵の本拠地を聞き出し地図に書き込み、ハンクの位置を確認して、地図を結びつけた石を投げた。ハンクは石から地図を取り外すと、静かに消えていった。
俺とアランは、商隊に戻り、誰も怪我をして居ないかの確認をした。既にアンナとオロゴンさんも商隊に追いつき合流していた。
再び大量の盗賊を捕まえてしまい、俺は商隊長のハッサンさんに、「どうしましょうか?」と伺いを立てた。
「いやぁきっと今回の行商を無事に済ませて戻って来た場合以上の利益を初日の半分の時間で出してしまいましたよ。今日はゆっくりと次の街に行って、盗賊を引き渡し、少し早いが宴会を催しましょう。もちろん全て私が奢ります」
監督官のドイルも「カイルさんが従っているのも、納得しました。
私なんかより全然強いじゃないですか、コウキさんだけでなくアランさんでも私じゃ全く相手にもなりません。しかし一応試験は王都までですから、よろしくお願いしますね。
まだ残り2つのパーティの試験は続行中ですから、今後はコウキさんは、残り2つのパーティから要請があって、戦闘に出る以外は何もしないで下さい。
コウキさんが出ると、他のパーティの査定ができませんから」と言ってきた。
これは俺達の試験は初日にして終了フラグが立ったのか?
俺もアランも剣で斬り倒してはいったが、一応急所は外していたので死亡者は、後方でハンクが襲った3名と俺が最初に投石で殺した3名だけで終わっていた。既に俺が魔法で止血も行ったので、重傷者も少ない。全員を縄で縛り大行列となり次の街に入っていった。
街に入って、盗賊の引き渡しが終わる頃には、ハンクが戻ってきていた。商隊に見られぬように、俺に連絡をしてきた。
アジトは間違いなく地図の場所に存在したこと。そこに結構な量の財宝と牢に入れられて奴隷として売られるのを待つだけだったであろう女性達が20名ほど存在していたことを、伝えられた。
「ハンク、夜に俺が一度抜け出して財宝はアイテムボックスに収納する。女性達はそれが終わって以降に、明るくなってからが良いな、開放してやってくれ」
「了解しました。では現地でお待ちしてます」と言って再び消えていった。
盗賊の首領は、俺に命を助けられたことを、一応恩に感じたのか、俺以外に本拠地の場所を話すことはしなかった。
そして、奴隷としての販売金額は商隊と俺達冒険者で折半、更に今回のメンバー10名で頭割りという事を、俺も守らせた。
本拠地のことなどを追求し始めない事の、バーター取引だな。それでも総勢で100名分の奴隷販売代金と幹部たちに掛けられていた、賞金首による賞金の総額は2000万Gに及び日本円で2億円だ。
冒険者一人あたりの収入でも、1000万円相当に及ぶ、半日試験に参加しただけでこの収入になって文句を言うものなど、誰も居なかった。むしろ他の参加者たちは俺を神のように扱い始めた。
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