第12話 PTとクラン

 「なぁカイル、カイルはSランクの冒険者だったよな?」

「はい、そうです」


 「アランはギルドランクとかあるのか?」

「俺は軍に所属していましたので、ギルドカードは無く階級章がその変わりでしたね。少佐の階級はSクラスの冒険者と同じだけの、扱いを受ける事が出来ました、現在は国ごと無くなっているので、何も証明する物が無いですけどね」


 

 「アラン、奴隷の場合はギルドカードは作れるのか?」

「ご主人様の許可があれば可能ですね、基本的にご主人様より上のランクを与えられる事はありませんが」


 「そうか、じゃぁ俺もとっととランク上げてしまって、アランに相応しいだけの立場に引き上げてやるな、イザベラにさっきギルドに行った時に言われたんだが、王都までの護衛依頼を完了する事が、Bランク昇格の条件らしいから、早速受けてくる。アランとカイルと3人でPT登録もしておこうかな」

「ご主人様、PT登録も必要ですが、ご主人様の場合はクランの届け出をしておいたほうが良いかも知れません」


 「クランってなんだ?」

「クランは個人ギルドの様な物ですね、独自に依頼を受けたりする事も出来るので、ギルド手数料分得な稼ぎになります」


 「会社みたいなもんかな?それってギルドからしてみたら上前を跳ねることが出来ないから、睨まれないのか?」

「独自でも受けれますがほとんどの依頼は、クランとして、ギルドから纏めて依頼を受注してきて、それをクラン内で振り分けて達成する形ですね、個人のランクの縛りは無くなります。ギルドから見ても1人ずつに受注されるより手間が省けるので喜ばれますよ」


 「その場合は個人のランクの格付けとかはどうなるんだ?勝手にできないだろう?」

「Cランクまではクランの基準で構いませんが、Bランク以上はギルドで試験を受けるので同じですね」


 「面倒な依頼はどうせイザベラしか持ってこないだろうし、カイルがそう言うなら作っておくか」

「クランの格付けは登録地のギルドマスターの一存で構わないので、恐らく現状でもSランク程度のクランとして認められるはずです。カイルがSランクですし、ご主人様は、恐らく帝クラス以上なのは、イザベラ様も理解しているはずですので、それだと今の状態でもSSランクの依頼まで、受けられますから便利ですよ」


「解った、じゃあ取り敢えず3人でギルドに行くか」


 もう夕方に差し掛かっていたが、ギルドに行ってアランの登録と、PTの申請、クランの申請を行った。クランのランクだけは、明日イザベラが決定するそうだ。


 アランは問題なくCランクスタートとなったが、オークラは最近ボロ負けするパターンしか存在してないような気がする。副マスターで、実際はAランクの実力って言うのがどうも信用できないな。


 「俺が弱いんじゃなくて、コウキ達が異常なんだよ」とほざいてた。


 Bランク昇格試験を受けたいから、王都への護衛依頼を紹介してほしい事を伝え、家に戻った。


 家に戻ると、カオルが夕食を用意していた、ハンクも戻ってきており、みんなでオーク肉のカツが乗ったカレーに良く似た料理を楽しんだ。

 「カオルこのカレーぽいのはオリジナルか?」と聞いてみたら、

「私の記憶の中のカレーを再現しようとしてるんだけど、何処か違うんですよね、何が違うのかヒントが無いかな?」


 「そう言う事なら、俺は少し協力できるぞ、総合食品メーカーの営業職だったから、それなりに食材の知識はあるからな」

「そうなんですか?コウキ様是非色々相談に乗って下さいね、私の記憶だと家庭料理の粋を出ないから、調味料の知識なんかは不足してるんですよね」


 「こっちの世界で元の世界のレシピサイト見たいのが見れたら良いのにな」

「コウキ様後で少し二人でお話できますか?」


 そして食後に書斎にカオルが来た。

「みんなの前でむこうの世界の話をすると変かと思って、二人でお話をさせて貰う様に頼みました」

 「そうだなその話をする時は二人のほうが良いと、俺も思う」


 俺はこの世界で他にも俺の世界から、現れた人間が居るのかとか、カオルが作りたい物のイメージを聞いたりしながら、過ごした。


 まず、俺以外の転移者だが、この世界では転生者なら居る可能性が高いと言うことだった。


 魔法の存在する世界だが、向こうの世界の科学を利用したような器具も存在するのが理由だった。


 転移は俺が言われたように強大な敵を倒すために、一時的に召喚されて、その術式が終了すると同時に消滅するものが、この世界では存在するらしいが、カオルでは詳しくは解らないと言っていた。


 気になったのでカオルは何年の日本から来たんだ?と聞いたら2000年の8月までの記憶があるそうだ、30歳で主婦をしていたが、交通事故で死んで、記憶が戻ったのは、この世界で10歳の時だという事だから、38歳程度の人生経験を持った、18歳の女の子って事だな。

 

 俺が2019年の日本から来たことを言うと、羨ましそうに、19年後の流行りはどんな感じなのかを尋ねられたが、若干世代のズレが有り上手く伝わらなかった。世代的には俺の母親とかのほうが近いのかな?


 それでも、この世界で俺が暮らしていく上で、貴重な元の世界ネタで会話が出来る人物が居る事は、重要な要素だと思う。カオルが居てくれてよかったと思う。

 カレーの調味料に関しては、俺が思い出しながら書き出して置くことを伝え、また話に付き合ってくれと言って、自分の部屋に戻っていった。


 カオルが部屋に戻ると今度はハンクが訪ねてきた。俺を探していた少女達の続報だが、俺の風体とかは解っておらず、最近現れた男性という事だけで捜しているようだった。但し剣の事を言ってたらしく、そう言えばこの剣って妙に切れ味が良いなと思いながら、鑑定を掛けてみた。


聖剣 ドラゴンイーター


ドラゴンと対峙した場合に加護の力が発揮される。


攻撃力  +200

重量   +10


 あーこの世界のステータス基準で考えたらこの性能だとLV+200の価値があるな。そりゃ捜してしまうか。どうしようかな特徴的な剣だし、これから見つかっちゃうんじゃ俺としても困ったことになりそうだな。


 当面はこの剣は、アイテムボックスに放り込んでおいてイザという時だけ使うことにするか。普通のモンスターだと、石投げるだけで大体倒せそうだしな。


 加護の力か、誰の加護なんだろう。召喚はされたけど、神様とか会ってないしな。


 でも。俺はBランク昇格試験で一時この街から離れる事になるし、転移出来る場所を沢山増やせるから、捕まらないだろうし、捕まっても簡単に逃げれるだろうから、気にしなくてもいいかな。


 ◇◆◇◆ 


 翌日、朝からギルドに護衛依頼の確認に行くと、早速明日出発の商隊の護衛任務があるそうだ。


 受けることを伝えると、護衛が総勢10名の依頼だから後7人程が増えるのと、試験を兼ねているので監督官がひとり着くことを、伝えられた。


 監督官は、何もせずただ見るだけだそうだ。逆に言えば監督官が動かなければ行けないような状況に追い込まれれば、試験は失敗と言うことかな。


 クランの件は、イザベラがまだ出勤しておらず結果はまだだと言う事だった。


 今日はそれだけを確認して、まずはユーリの居る大きな屋敷の方に向かった。


 一日が経過して、女性達も落ち着きを取り戻しており、口々に俺に対して救ってもらったお礼を言ってきたが、視線が妙に熱い。ユーリに確認してみると、俺のことを一晩かけて神のような存在だと教えこんだと言っていた。


「ユーリ、なぜそうなるんだもっと普通に接してくれたら良いのに」

 「それだと、ご主人様の威光が解らないですから、実際ご主人様のやっている事は、この世界で他にできる物がいるか、解らない程のレベルの物です。出来るとすれば、中央の教会の教皇や聖女と言う職を持つ者に限られるでしょう」


 すると、女性達のリーダー的存在のレイアが、代表して口を開いた。


「私達は、この先生きていくにしても、オークに攫われた女として、白い目で見られてしまうのは、間違いないですから、コウキ様の庇護のもとで暮らしたいと思います。出来ればユーリさん達のように、奴隷契約をしてもらいたいと思うんですが、駄目かな」

 「何故自分から奴隷になりたいなんて言い出すんだ?何も得がないだろ」


「奴隷に成ることで、コウキ様に信用を得ることが出来ると思えば、それを望みます」

 「その返事は少し待って欲しい、そこまでの決意があるって解っただけでも、十分に信用はできるから、あまり難しく考えるなよ」


「ユーリもしかして、洗脳系の何かの術とか使ってるか?」

 「精霊の言葉を借りて語りかけると、心に訴えかけますので、彼女達のように、拠り所を捜している状態の時に、精霊の言葉は効果的でしたね」


「まぁ状況が状況だから。駄目とも言わないけど、無理強いはしないでくれよ、自由にさせてやりたいからな」

 「畏まりました」


「明日から、王都に護衛任務で出かけるが、俺は転移が出来るから休憩中に一度は顔を出すようにするので、心配はするな。何かあればイザベラかギルドのミチルに相談すれば大丈夫なはずだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る