第17話 新たな問題勃発

 ゼーレの街の繁華街にアランとカイルを連れて、繰り出した。まずは一杯引っ掛けてそれからだな。


 西部劇で出てくるようなバーが在ったので3人で入店した。開いてるテーブルの席につくと、何処からともなくハンクも現れた。店員の女の子が注文を聞きに来たので、取り敢えずエールを頼み、「この店のおすすめ料理は何だ?」と聞いた。


 「この町では牛肉料理を、食べていかないと駄目ですよ」と言われた。


 この周辺で育てる牛はエールを飲ませて育てているそうで、肉質がきめ細かく、サシの入り具合が抜群なんだそうだ。お薦めの牛肉料理を4品頼み、エールで乾杯した。


 「ハンク、今日は何か面白い情報は在ったか?」

「そうですね、大きな声では言えないので、少しお耳を貸して頂けますか?」


 と言って囁いてきた。この領内でゼスト侯爵の四男にあたる子爵家と、隣接する準男爵家の間に、揉め事が起こっており、戦争にまで発展しそうだと言う内容だった。別に領内の揉め事なんかは、介入する気もないしどうでも良いことのような気がしたが、問題はその場所にあった。


 明後日出発して王都方面へ向かう街道を進むと、必ず両方の貴族家の領内を通る事になる。


「ハンクの情報ではどうなんだ?明後日俺たちが通過する時に、既に戦時下に有るなんて事はないだろうな?」


 「十分にありえると思います。既に子爵家の方が領地沿いに兵士を集めていると言う事ですね」


「そうか、ハッサンさんには明日相談してみるとして、原因は何なんだろう?領内での揉め事なら侯爵家が直接仲裁したりしないのかな」


 そこで料理が届いたので、エールのおかわりを注文して、取り敢えず料理を楽しむことにした。異世界情緒のあふれる、不思議な味付けだったが、どれも素材の良さを引き立てていて、満足だった。


「これも、今日入手した情報ですが、どうやら侯爵様がご病気でもう長くないようです。今回の争いは次期侯爵争いの為に、少しでも領土を広げて発言権を高めようとした、子爵の暴挙ですね」

 「後継ぎって決まって無い物なのか?」


「この国では法律で、子供だから跡が継げる、と言う訳では無いので」

 「それってどう言う事なんだ?」


「侯爵や伯爵の領地は県とされてます。県令の職位は、その領内に在籍する貴族が全員で投票をして、一番得票を集めたものが、県令としての、侯爵や伯爵の地位に就くことが出来ます。殆どの領内では先代が健在の内に根回しをして、爵位を引き継いでからゆっくりと隠居生活を過ごされますが、今回はどの子爵様も決め手に欠けてるみたいで、侯爵様も跡取りを指名されないままに、寝込まれてしまった状態で、既に意識が混濁されているらしいです」


 「結局それで揉め事が起これば、迷惑をするのは住民なのにな。どの世界でも政治は不毛過ぎるな」


 折角夜の街に出てきてるから、難しい話はそこで切り上げて、二軒目は女性がサービスをしてくれるようなお店に行って、みんなで盛り上がった。カイルとか嫁さん一筋なのかと思ったら、結構はっちゃけて楽しんでた。


 翌朝、ハッサンさんのもとを訪ね、昨日ハンクから仕入れた情報を伝えた。ハッサンさんは少し困った表情をしたが、


「他領の商隊に対して攻撃を仕掛けてくるような暴挙は、恐らくして来ない筈です。予定通りに出発しましょう。万が一もありますから、この地での仕入れは抑えて、動きを身軽に出来る様にはしておきます」


 商隊主の決定であれば従うしか無いな、俺達は何が起ころうと対処できるように準備をしておくだけだ。


 この日は、俺達は別段この町に用事があるわけでもないので、一度ファルムの街に転移で戻った。丁度イザベラが、屋敷に来ていたので、領内の盗賊団を壊滅して、奴隷として捉えられていた女性達を保護した事などを伝えた。


 「コウキは増々ハーレム街道を爆進中だよね。私と結婚する頃には子種が空っぽになって赤ちゃん作りが出来なくなっちゃうよ?」

「心配しなくてもその予定は無いからな」


 「まぁそれは置いといて、領内に巣食う盗賊団の壊滅は領主代理として、お礼を言わせて頂きます。でもねコウキこの盗賊団の壊滅で、郊外の地域は増々危険を孕んだのも事実なんだよ。大きな盗賊団が壊滅すると必ず小さな統率の取れてない、盗賊団が雨後の筍のように出てくるの、何か良い手は無いかしらね?」

「まぁそう言うこともあるかもしれないな、警備隊の数を増やすとかで対応できないのか?」


 「そうね、それが一番いい方法だとは思うけど、警備隊は維持費が大変なの、それを展開して維持するために税を上げなければならなくなるのも、避けたいのよね」

「旅人や商人には盗賊問題はでかいけど、街から出ない人達には直接の驚異という点では、余り影響がないからな、税金が上がるとなれば、反感もありそうだな」


 「そう言えばアジトから貯め込んでいた財宝も回収してきたが、遺品とかであれば家族の元に戻して上げたいと思うが、どうしたら良い?」

「コウキは無料で戻して上げたいとか思ってるんでしょ?それは無理だからね、そんな事すると、必ず『私が遺族です』と言って、詐欺師が大量発生するだけだから」


 「じゃぁどうするんだ?中には本当に遺品を思い出として大事にしたくて、欲しがる人もいるだろ?」


「それでもね、適切な市場価格を払って買い取ってもらう方法を取るしかないのよ、証拠とかそんなのはいくらでも捏造できるから、まぁそれは私の方でやらせてもらうわ、あのグレゴリー盗賊団はかなり有名だったから、討伐して財宝を回収したので遺族の方に優先買取権がありますと、街中の公設告知看板に日時を書き出せば、かなりの人数が訪れるわ、そこで売れた商品の収益は、ギルドが手数料を10%ファルムの街が税として15%を貰って、残額は全てコウキの物になるわ」


 「そんなに貰ってしまって構わないのか?まぁ貰えるものはありがたく頂戴するけどな、その市で売れ残った物はどうなるんだ?」


「それは現物でコウキが保持してもいいし、街の古道具商に一括で売り捌いてもいいわ」

 「そうか、じゃぁ現物で貰うことにしよう、ハッサンさんに全部やらせてみようと思う」


「あの親父は、見た目怪しいけど商売に関してだけはキッチリ信義を通す人だから、決して騙したりはしないと思うわ」


 「ではイザベラに任せるな」


「それと別に盗賊団の殲滅に対しての報奨を、ファルム領主代理として用意しとくわね、護衛任務が終わった頃には、一通り提示できると思うわ」

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