第二章 折角だから異世界満喫するぜ
第30話 コウキの目標?
【王都ギルド】ギルドマスター執務室
現在この部屋で、王都ギルドマスターを務める総帝と、精魔帝『ユノー』剣帝『あかり』の3人が、突如現われ、Ωランクを授けられた男の話をしている。
「総帝様、それでそのコウキという冒険者はオメガランクと言う新たなランクを作ってまで、私達と同格だと言わなければ成らない程の実力だとおっしゃるんですか?」
「では尋ねるが、ユノーは精魔帝として『ドラゴンファング』を相手にして魔法一発だけで勝負を決める事が出来るのか?」
「勝利することは出来ますが、魔法一発と言う条件だけでは厳しいかと思います」
「更にガースは確認したようだぞ、お前は魔導師なのか?とな、彼はこう答えたそうだ。『JOBは無職ですよ?魔法は最近覚えたばかりで一番苦手ですね』だと」
「JOBが無職でその強さだと言う事は、LV5未満の状態からたった一体の敵を倒しただけでLV20を超えるという、ありえない条件をクリアしなければ成らない筈ですが?それを成し遂げる方法が・・・・ぁ・・・もしかして・・・コウキはファルムの出身だと言われましたよね?」
「うむ、そう聞いている」
「あかり、どうやら見つかったようだよ、使い捨て君、オメガの正体はほぼ間違いなく使い捨て君のはずだよ、聖剣取り戻さなきゃ」
「ん?ユノーそれはどう言うことだ?聖剣を盗まれたのか?」
「あ・・・」
「もう隠そうとするから話が面倒くさくなったんでしょ、総帝様にちゃんと報告しなさいよ」
「総帝様、申し訳ございません王宮からお借りした、「ドラゴンイーター」を使い捨て勇者招喚で召喚した勇者に持たせて、特攻攻撃を仕掛けました所、悪龍『ゾルゲ』の討伐に成功いたしましたが、そのまま勇者がこの世界に残ってしまったようで、何らかの理由で聖剣を握ったまま立ち去ってしまいました」
「ほう、『ゾルゲ』を討伐したのかそれならば、聖剣の一本や二本の紛失など些細なことだ、堂々と報告すれば良かった物を、俺ですら過去に5度挑戦していずれも逃げられた。
厄介なゾルゲを討伐したことは、国を上げての祭りに成る程の成果だ、聖剣はゾルゲの討伐と刺し違えに砕けたと報告すれば良い。
報告が今まで上がって無かったという事は、ゾルゲの死体はアイテムボックスの中か?
早速、討伐を発表し、王城前の広場にその頭部の展示をしよう。頭部だけでも7メートル程のサイズだったな
その他の肉や爪、鱗、牙などは全てギルドに納品して貰うぞ」
「あの・・・総帝様・・・お肉が・・・・もう食べちゃいました」
「はぁ?ゾルゲのサイズは60メートルはある、肉の量は5トンくらい在ったはずだが?」
「そうなんですが、お肉が美味しすぎて4人で3食とおやつを全て、ゾルゲ肉でこの一月過ごしていたら無くなってしまいました」
「なんと勿体無いことを、以前別の真龍を私が討伐した際に、ゾルゲの半分ほどのサイズであったが、肉だけで1億Gになったというのに」
「えええぇええええ、総帝様それマジですか?」
「俺が嘘を付く必要がないだろ?」
「じゃぁ使い捨て君、オメガはどうしたらよろしいでしょうか?」
「お前達の召喚で呼び出してしまったんだろ?何故消えなかったのかが非常に興味深いな、過去に召喚が成功したのは、王都の開祖の父であったタロウ様と200年ほど前に魔神の乗り移ったゴーレム討伐に召喚されたイチロー様だけであったが、お二方とも召喚してある程度は戦えるレベルまで育ててから、討伐に向かわれた後にご自分の世界へ帰還された。そこに今回のオメガとの状況の違いが在るようだな」
「オメガは帝会議に招集しないんでしょうか?」
「無職のオメガにどの帝を名乗らせる?ニート帝か?」
「無理・・・ですね」
「ジェイクの言葉を信じるとオメガは決して悪意の人物では無さそうだし、この国やギルドに対して明確な反抗をしてこない限りは、手を出さないでおく。もし問題があれば俺が出ればいいだけだ」
「かしこまりました。私達はゾルゲの討伐を公表した後はそれぞれの国に一度戻ります。御用があれば念話でお呼び出し下さい」
その日のうちに、王城の前にゾルゲ討伐の証としてゾルゲの頭部が陳列された、その頭部には頬肉の部分が無く少し間抜けな見た目だったそうだ。
王都では長年この世界に災厄を振りまいた悪竜の討伐の事実が公表されたことで、その日から1週間に及ぶお祭りが開催され、討伐を成し遂げた3人の帝と1人の魔族の娘はこの世界の歴史に英雄として名を刻んだが、4種族の力を合わせる事でのみ実現される、勇者召喚の秘技が公表されることは無く、コウキが召喚勇者である事実は、隠匿された。
◇◆◇◆
(総帝)
しかし、ありえない現象が重なったものだな、召喚勇者はその召喚の対象となる敵を討伐することで、元の世界に戻ることが出来るはずなのだが、この世界に残ってしまった。
私なりの考察では、恐らく過去の召喚者は、勇者としてのJOBを獲得した後にある程度の鍛錬を重ねた上で、討伐に向かった。その期間のうちにはこの世界の女性との交わりで子孫も残している。タロウ様はこの国の開祖の父として、イチロウ様は倭国の建国に力を注がれた。
オメガの場合は、ユノー達の中途半端な知識で召喚されていきなり特攻攻撃に使われたらしいが、よくそれで『ゾルゲ』を討伐できたものだな。
この世界の災厄と言われるゾルゲは、私が総帝に就任して以降5度に渡り戦いを挑んだ。そのいずれもまともに相手にされることもなく、私の攻撃と引き換えに街を一つ壊滅させ、その姿を消していた。
2度目以降では近隣の街は避難を完了させてから討伐に向かったのだが、それでも受けた被害は莫大なものだった。
今回のような、ターゲットとして捉えられる前の段階での特攻攻撃でしか、倒すことが出来なかったという事は、なんとなく理解が出来るが、それにしても出来すぎだ。
ゾルゲの討伐に寄ってもたらされた経験値はどれ程のものであったのだろう?
現在私のLVは350を誇る、帝たちで100~150程度のLVだこの差は、帝が10人がかりで私に挑んでも私に攻撃を当てることなど出来ない位の差がある。
恐らくゾルゲ自体のLVは1000を大きく超えていたのでは無いだろうか?それを討伐すれば半分程度のLVには届くほどの、経験値を得たはずだ。
だとすれば、現時点でもコウキの実力はこの私を上回るのか?1人の武人としては、是非にでもやり合いたい。しかし、私が負けた事実が知れ渡ると、この世界のパワーバランスが崩れ去り、各国の戦争行為が活発化することも考えられる。
幸い俺はこの姿を、世にさらしていない。行ってみるか?名乗らずに戦えば負けたとしても問題はない、いきなり殺されれば話は別だがな!
俺は王都ギルドのマスターも兼任はしているが、実際は表舞台に立つことがないので、全ては元拳武帝のジェイクに任せてある。もし殺られたとしても何とかなるだろう。
早速、ジェイクを呼んだ。俺の姿を知っているのは、帝以上の立場にある者だけだ。その帝達でさえ、仮面の下の俺の顔を知っている者は限られる。この国の王タロウ・ノア10世としての顔を
◇◆◇◆
俺は無事に自宅に戻ってきた。カオルの作るあったかいご飯と和食の夕ご飯を食べると、とても落ち着く。
今日は肉じゃがだった。海がこの辺にはないので、焼き魚を食べるのは中々難しい。川魚だと穫れるのだが、ご飯に合う焼き魚は、やはり海の魚だ。サンマやイワシにサバ最高だよな!ブリの照焼なんかも捨てがたい。
川魚は、俺の中では酒の肴としての料理にはアリだが、御飯のおかずにはちょっと違うんだ。このコダワリを解ってくれるやつとか、この世界には居るかな?
まぁそんな話はさて置き、俺は盗賊団の討伐の報奨として結構な広さの土地を貰った。ここを開発して俺の楽園でも作るかな。現時点で俺の屋敷には2軒を併せて58人も人が居る。女性が54人だがな。彼女たちに開発の仕事をしてもらうのはどうなのかな?女性が開拓は厳しいかな、ちょっとユーリたちを集めて聞いてみるか。
俺は、屋敷のリビングに初期メンバーの皆を集めて聞いてみた。
「なぁみんな、盗賊討伐の報酬でな、オークに襲われて壊滅した集落一帯を丸ごと貰ったんだが、どうするのが良いと思う?」
ユーリがまず意見を言った。
「ご主人さまなら、そこを足がかりにして、深淵の森を超え獣人国へと繋がる新しい交易路を確保することも可能なのでは無いでしょうか?位置的に獣人国に繋がれば海沿いの漁師町バロンへ繋がると思いますよ?距離は、バロンまで森を50km程進んだ場所になりますが」
「そうなのか?王都までが150kmほど在ったから、全然バロンの方が近いじゃないか。それを当面の目標にして開発しようかな、カイルとハンクとジョアンナは出身は獣人国だよな?ハンクとしてはどう思う?」
「深淵の森を通り抜ける街道を、本当に作り上げることが出来れば、この街は凄い発展を遂げることになると思います。このファルムの街は、獣人に対しても差別的な考えを持つものは少ないので、獣人国側から見ても他のどの領地との交易より、ファルムとの交易を望むのではないでしょうか?」
そこでカイルが手を上げた。
「私は、獣人国で1つの村落を治める立場にあったから解りますが、獣人国と言うのはあくまで人族側から見た場合の総称であって実際には小国の連合体です。こちらの領でいうとファルム辺境伯がファルム国王と言う感じですね。そう言った国王が3年に一度の武闘大会に出場して優勝した物が、獣人国国王と言われる存在です」
「それはまた凄い脳筋国家何だな、逆に言えば実力で勝てばこちらの言う事を聞いてもらえたりするのか?」
「身体強化系以外の魔法を使わずに、行われた戦いであればそうなりますね」
「もしだ、俺がその大会に出て優勝したら俺が獣人国の王になれるのか?」
「コウキ様は獣人ではございませんので、獣人の嫁を娶り、子供を成されれば認められます。獣人国はどこも一夫多妻制が普通ですので、余り気にに為さらないで、獣人の嫁を娶ればいいと思いますよ?」
「まぁそう言う事は、いい出会いがあればだがな」
「今いる50名の女性の中にも獣人は10名ほどいますので、御側付きにされてみてはいかがでしょうか?日頃から考え方などを聞いておけば、獣人という存在が解りやすいと思いますよ?」
「うーん、今うちにいる娘達はみんな、辛い思いをしてきているから、男を怖がったりしないのか?カオルはどう思う?」
「あーコウキ様結構、女性経験少なかったりするのかな?私も含めて今ここと、大きい方の屋敷に居る女性は、ジョアンナを除いて、みんなご主人様に声を掛けられて、抱かれる事を望んでいますよ?」
「はぁ?また随分とストレートな発言だな、この世界の女性は基本イザベラと変わんないような脳みその構造なのか?」
「そうじゃありませんよぉ、それだけご主人様に魅力があるんですよ」
「俺は今までの人生で、モテタ事なんか無かったから解んねぇよ」
「そうだったんですか?でもご主人様、私が保証しますよ。ご主人様は見た目も含めて素敵な男性です。もっと自信を持たれて大丈夫ですよ」
サリナが手を上げて、言葉を発した。
「私からもいいですか?ご主人様はこの世界の基準でもモテルと思いますよ?この世界の勇者として伝わっている、タロウ様とイチロウ様の肖像に雰囲気が似ていらっしゃいますし、その勇者様の血を引いている存在だと言われても殆どの方が信じるんじゃないでしょうか?」
「あー、タロウとイチロウだって?そんなの絶対俺と同じ世界から呼び出されたに決まってるじゃないか、こりゃ一度その辺りを調べたら、俺が元の世界に戻る方法も解るかもな」
「ご主人様は、元の世界に戻りたいんですか?」
「いや、戻る方法くらいは知っておきたいかな?と言う知識欲だ」
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