花札学徒鉄火録～遥恋篇～（旧版）

※この作品は2019年10月14日に、『花札学徒鉄火録～正伝～』へ組み込みました。
頂いたコメント等々は此方で、「遥恋篇」は「正伝」の方でお読み頂ければと思います。



日本の何処か、冬には大雪も珍しくない地方にある「花ヶ岡高等学校」。

この高校は不可思議極まり無い文化を持つ。それは「賀留多の自由使用が黙認されている」という事だった。

独特な不文律は、更に奇妙な文化をも生み出す。

それは――解決不能となった揉め事を、賀留多の勝敗で決着する《札問い》というものであった。

ジリジリと暑い夏の昼下がり。二年生の女子生徒、左山梨子は私室に一人、浮かない顔でクッションを抱き締めていた。

彼女は数ヶ月前、一人の下級生の男子と《札問い》を通じて知り合った。

闘技中に見せる彼の表情、不器用な優…続きを読む