第47話 ソラ君 メロスこはいかに

「俺はこう思います。メロスほど、自己中心的で、他人に迷惑をかける輩はいません。王様に激怒し、人質セリヌンティウスの寿命を縮め、妹に結婚の日取りを強制的に決めるこんな奴は処刑されてしまえば良かったと思います」


 メロスの事を輩とか、奴呼ばわりしてるソラ君に驚いた。


 右端にリアルタイムでコメントが入る。


「そうだった、<こはいかに>の時間になったらコメント自由に送れるんだったね。ラキも送る?このパソコン使っていいよね。何て書く?」


 美月は打ち込む気があるらしい。


「待って、私はソラ君の考えを聞きたい」


 人差し指を唇に当てる。美月も同じ仕草をして画面に集中した。


「現代はメロスのような人間が多すぎる。自己陶酔して本当に大切なものを自分の観点で見るんだ。今でこそメロスは英雄扱いだが、俺はそうは思わない」


 ソラ君のアップに胸が高鳴る。


「ラキ、見て、コメントが荒れてる。え~と」

 美月が指差す画面の端を私は目で追った。



「ソラ君がエキサイトしてる。ヤバ」

「彼に何があった?」

「ソラ君カッコいい!がんばれー」

「私もメロス嫌いです。自己中だしキモッ」

「そうだ、そうだ。犬殺して偉そうなんだよ!」

「これって太宰のリアルじゃね?」

「そうそう、旅館代支払えないリアル太宰」


 もはやメロスではなく、太宰批判になっている。ソラ君が止まった。そしてゆっくり……。



「人を信用するって、やっぱ大切な事だ。親に殺されかけた俺はもう誰も信用出来なかった。けれど、一番の裏切りを経験したから分かるんだ」


――そうだった、ソラ君は家族に見捨てられた事があったんだ。


「美月、私たちは絶対にソラ君と友達でいようね。せめてこの高校生活の間だけでも」

「そんなの当たり前だよ」


「コバヤカワソラゲンダイニオモドリクダサイ」


 ソラ君の<こはいかに>が終わった。


 

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こはいかに 星都ハナス @hanasu-hosito

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