第21話 ソラ君とのメール

 それは絵文字1つないメールだった。内容が変わるわけないのに、無意識に画面をふく私。

 

 何を期待してたんだろう。『お疲れ様』も『今日は楽しかったね』の1文もない。ただの注意事項がぎっしり書かれているメールだ。私は携帯電話をベッドに軽く投げて、自分も倒れこんだ。


 少し眠ってしまったのかな。寒気がして喉が痛い。羽毛布団をかけようとした時、またメールの着信音が聞こえた。今度は花音ちゃんか、美月かもしれない。携帯電話に手を伸ばす。


 ソラ君からのメールだ。


「ラキさん、今日はお疲れ様でした。雪国に行ったから、風邪でもひいてないかなって心配してます。😷もしか体調悪かったら🙏。けど今日のラキさんの<こはいかに>👍だったよ。明日はバイト入れそうかな?待ってるね💟」


 思わず吹き出しそうだった。初めてお母さんが私宛にしてきたメールに似ていたからだ。日本語覚えたての外国人みたい。


「ソラ君、心配してくれてありがとう😆💕✨

色んな事がありすぎて😨の私。でもソラ君のおかげで楽しいよ。😆明日も🙋ます。 ラキ」


 私も初心者みたいに返信した。さすがにハートマークを入れるのにはとまどう。まだ告白もしていないのだから。


「ラキさん、俺に何か言いたいことはないのかな?首を長くして待ってるんだけど。🐴」


「ソラ君、それはキリンではない……😝」「🐂🐐🐗🐏🐓🐇……見当たらないよ!」「ソラ君って面白い人だね。😄👍」「ありがとう。😘ラキさん。おやすみ😪」


 その後、どう返信していいのか迷う。突然のおやすみだけは想像していなかったからだ。


 付き合っていれば、メールじゃなくて電話だから、眠いのが分かる。からかわれただけなのかな?なぜかポロリと涙がこぼれた。

 

 気持ちを伝えるのは、メールや電話ではなく、言葉で伝えたい。〖首を長くして待ってるんだけど〗の文字がかすむ。

 好きな人が出来るとどうしてこうなるんだろう?素直になれない自分にいらついた。


 ため息をついて、深呼吸して気持ちを切り替えて、キッチンへ行くことにした。


「あっ。ラキ、今から小早川ソラ君の<こはいかに>見るんだけど、ラキも見る?お腹すいちゃって……パソコン持参しちゃったの」

 お母さんが少女のように舌を出して、カップヌードルにお湯を注いでいる。


「花より団子だね。私も食べながら見る」


 気持ちを切り替えてソラ君を画面でじっくり見ることに決めた。

 

 


 

 


 


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