第39話 そばにいて欲しい
明日、学校に持っていく書類を準備した。――ラキさんと、美月の二人分だ。封筒を2枚用意する。
デジタル社会なのに、アナログ的な茶色の封筒に少しイラついた。印鑑も用意する。
「なんか、めんどくせ。けど、飯は独りより、たくさんがいい。そう思うだろ?――今から何を作ってくれる?」
広いマンションに、話相手はアームロボットだけだ。さっき、ラキさんから電話があったけど、すぐに切った。
断られるのが怖かった。だから、先にラキさんの親に電話した。リアルタイムニュースの手配もした。
誰かそばにいて欲しい。もう10年以上独り暮らしだ。孤独は自由じゃないんだ。この世の中の矛盾に牙を剥いても折れるだけだ。お金?――お金なんて捨てるほどあるよ。社長という肩書きもあるしね。
「ソウデスネ カクテルツクリマショウカ?ダメ ソラハ ミセイネンダ」
アームロボットが忘れた頃に返事をした。人間の顔色から、健康状態を見極めて、必要な栄養を補給する。
タンパク質もミネラルもカロリー計算までしてくれるアームロボット。
そのお陰で俺は健康体だ。タイムスリップした身体はかなり疲弊する。そんな夜は必ず、赤身の肉だ。
アルコールをすすめてくるとは、初めてだ。アームロボットは精神状態まで読み取ったらしい。
誰かにそばにいて欲しい……呟きもきっと聞いていたはずだ。
自分でプログラミングしたロボットに慰められるとは思わなかった。
「ありがとう。君のいう通り、俺は未成年だから酒はやめておくよ。もうすぐ、孤独じゃなくなるんだ。さっき、君が作ったオムライスに感動していた友達が、そばに来てくれる。その時は君の料理の腕前をもっと披露してもらうよ。楽しみだ」
明日、学校に行くのが嬉しくて仕方ない。親に殺意を持たれる辛さを、苦しみを理解してくれる聖母となってくれる事をラキさんに求めていた。
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