第3話 ソラ君何処へ?

 その日以降、私はソラ君を見るとドキドキした。もちろん、中学の時に好きな男の子がいたし、告白もしたことがある。


 また振られるの嫌だな。告白して振られるとご飯が喉を通らない。


「ラキ、アルバイトする? この学校って、親と先生の許可あればできるんだって」


 美月が嬉しそうに、アルバイト許可書を私の机の上に置いた。


「部活はどうするの?ソフトボール続けるんじゃないの?」


「もういいかな。洋服も財布も欲しいから」

 美月もオシャレに目覚めたのかな。私もアルバイトすることにした。


「ふたりとも、アルバイト考えてるならいいお店紹介するよ」


ソラ君の声が聞こえて、振り返るとすぐ近くにソラ君の顔があった。香水のいい香りがする。


「まさか、夜のお店じゃないでしょうね?」

美月がソラ君に聞き返す。


 「そんなとこ、退学になるでしょ。健全なお店だよ。時給もいいし、雰囲気最高」


  間髪入れずに、美月は断る。ソラ君みたいな子とかかわると、ろくな事がないと言った。


「花音ちゃんがあんたのせいで目をつけられたんだからね」 美月がソラ君に食いかかる。


「花音ちゃんって、あの色白美人な子でしょ。あの子となら噂になっても嬉しいけどな」


 ソラ君の言葉に動揺した。花音ちゃんが百合の花なら私はアザミ。花音ちゃんがプードルなら私はパグだ。ソラ君の顔をまともに見られない。

  

 やっぱりソラ君みたいな子は花音ちゃんがお似合いだ。私は色つきリップを誰にも気づかれないように拭き取った。


   ▣


 帰りに美月と繁華街に寄る。田舎でも、駅のそばには何件かのお店があり、高校生のアルバイト募集の広告が貼ってある。


「飲食店がいいよね。コンビニだと不特定多数のお客さんだから怖いな」

  人見知りで内気な私は、飲食店のキッチン希望だ。お皿洗いだけでもいいかな。


「アッ、ソラだ。小早川ソラだ」

 美月が私の肩を叩く。美月の指先に目をやると後ろ姿のソラ君がいた。


「何処に行くかつけてみようか。バイト先?」


 私は、半分好奇心で美月のあとを追う。バイト先ならいいけど、デートだったりして。


 ふと、そんな考えがよぎって、尾行し始めた事を後悔した。彼女を見たら嫌だな。


「あの店に入って行ったよ」 美月がひそひそ声で言ってくる。


 喫茶店のようで喫茶店ではない、木の扉。


 いかがわしいお店かな。そんな風にも見えない。扉を開けるとき、ベルの音がした。


「ラキ、私たちも入ってみようか」


 大胆に美月はその扉を開けた。私は美月の腕にしがみついて中に足を踏み入れた。


 

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