第46話 ソラ君 走れメロス

「万歳、王様、万歳」声の主がアップになる。


「やっぱり、あの子だ。ソラが馬に乗せた子よ」

 顔を確かめると……老人のそばにいた若い娘だ。


「メロスを磔の柱から降ろすように!」

 王の命令に従って家来達がメロスをおろし、縄をときはじめる。


「私の民よ、今まで悪かった。私は側近を殺した。私は誰一人信用出来なかったからだ。妻も子供でさえも私を裏切るのではないかと疑っていた。しかし、今、私の恐怖による政治が民の残虐さを増長させてしまったかもしれない。私はここに誓う。もうむやみに人を殺さないと誓う!」


 王の宣言を聞いた民衆がどよめいた。恐れから解放されたように笑顔になる。


「メロス、助かったな。いいか、お前のセリヌンティウスへの熱い思いがこの王の心を溶かしたのではない。王の支配を受ける民の一人一人が王を受け入れたんだ!」


 クタクタになり、うなだれるメロスだソラ君は、容赦ない言葉をかける。


「分かっている。そんなこと分かっている」


 ずっと走り続けてきたメロスの体はボロボロになり、声もかすれている。野をこえ、山をこえ、川を渡り、山賊と打ち倒したメロスの服はビリビリに破れている。


「あの、これを」少女がメロスに、緋のマントを捧げる。


「ほら、メロスの裸を誰にも見せたくなくて、少女がマントをかけてあげると思った。いい、セリヌンティウスがその理由をいうよ」


 美月の言葉通り、セリヌンティウスはその少女が、メロスの裸を誰にも見られないようにマントを渡したと説明した❗


「こはいかに、こはいかに」

ソラ君の自問自答の時間になった。

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