第22話 ソラ君はどこにタイムトラベル?
「……カップヌードルってありがたいわ。小腹がすいたときにちょうどいいのよね。……ラキはダイエット中じゃないの?」
こんないい匂いしてたら無理だよ!テープをピリッと剥がしてお湯を入れる。3分待つ間にソラ君からのメールの事をすっかり忘れる。シーフード味のカップヌードルには敵わない。花より団子の自分にあきれる。
「さぁ始まるわよ!」お母さんはソラ君の大ファンらしい。同じクラスだと言ったらサインを頼まれかねない。
さっきまでメールしてたって知ったら……また思い出しちゃった。
「それにしてもソラ君ってイケメンだね」
「だって、イタリア人の血が入ってるもの」
「うっそ!どうりでねぇ。……バイト先で会うことあるんでしょ?サインもらってよぉ」
そうだ、クラスメートだしバイト仲間だ。いや、ソラ君はオーナーの息子だ。サインなんかもらえないよ!
「きゃあ、何?今日のソラ君渋いねぇ」パソコンに向かって黄色い声を出すお母さん。「何が渋いの?……何?」興味津々の私。
お母さんがパソコン画面の右下に出ている赤い文字をタップする。
「えー、何それ!どういうこと?初めて見た」
画面が切り替わり、その物語のあらすじが書いてあることにびっくりした。
「ラキは、<こはいかに>に出ている側だもの、知らないことだらけでしょ。右下にタイムトラベルしている物語のタイトルがあって、そこをタップすると、本来の物語について知ることが出来るのよ。知らないまま見ることも楽しいけど、知ってる方がどんな質問するのかワクワク出来るでしょ。」
……それはそうだけど。まぁ私の場合の〖笠地蔵〗は有名だもの。すんなり見る人が多かったに違いない。美月のだってお母さん、お父さん世代は容易に理解出来ただろう。
「……でっどうする?あらすじを読んで思い出すパターンもあるし、一話だけ試聴する事も出来るのよ。ソラ君の<こはいかに>を見たあとで本来の話を見ることも出来るけど……」
そんな色んなパターンがあるのか。何も分からないまま始めちゃった。レストランなら、店のメニューを全部覚えないで、オーダーとっちゃってる感じかな?
カップヌードルが冷めちゃう。どうしよう。
「お母さんも、この話は小さい頃、一度見たっきりだからあんまり覚えてないな。映画一本観たら、二時間はかかるね。……あっ、ダイジェスト版見ようか?そのあと、ソラ君が質問する場面の10分映像を見よう。いい考えだわ」
お母さんが独り言を始める。……ズーズッってヌードルをすすりながら聞く。美味しい。
「いいよ。……お母さん、明日も仕事でしょ?私も学校あるし、明日バイト入るから、ダイジェスト見て、質問する場面見て、ソラ君見ようか?あと少し待ってね」
シーフードヌードルはスープが美味しい。飲み干してから、ダイジェスト版を見ることにした。
「……ソラ君はどこにタイムトラベルしたんだ?……お母さんはソラ君の顔がタイプだろうけど、お父さんは違うぞ」
お風呂上がりのお父さんが突然会話に交じってくる。<こはいかに>のバイトを始めていい事もあるものだ。
「ソラ君は高校生とは思えない洞察力と観察力があって、深い考察の上で質問するんだよ。そこがお父さんは好きなんだ」お父さんが腕組みしながら感心したように呟く。
「でも私はラキの純粋な思考も好きよ。……カップヌードルの後はコーラでしょ?体に悪いものとりたくなるときってあるわね。分かる」
我慢したらよけいに太る。この前、エグゼクティブルームでケーキを食べてから止まらない。思春期って大変。恋は変なストレスなのだ。片想いのストレス。ソラ君への片想いの事を両親に言えないストレスも加わった。
「お父さんも見るでしょ?あなた、〖鬼畜〗っていう映画知ってる?ソラ君はそれなのよ」
「……知ってるよぉ。誰に質問するんだろう?」お父さんが目を輝かす。私は初めて聞いたその〖鬼畜〗に首をかしげた。
「まずはダイジェスト版を見ようか?」
お母さんがダイジェストの所をタップした。
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