第25話 ソラ君 鬼畜
さっきと同じシチュエーションだ。
「……あっ、あんなところにソラ君がっ!」
土下座をしている父親の後ろにソラ君が立っているのを見つけて私は画面を指差した。
「きゃあ、後ろ姿もイケメンねっ」
年甲斐もなくお母さんが軽く手をたたき、お父さんにシッとされた。
「父ちゃんじゃないよ!よその人だよ」
また男の子が涙声で訴えている。(確か次はお父さんがごめんねって謝るよね?まさかのここでソラ君質問するのかな?)
後ろ姿のソラ君が子供のそばに行った!
「……大丈夫だよ。辛かったね」いきなり抱きしめる。男前すぎるソラ君。
「そう、あの人は君のお父さんなんかじゃないね。よその知らないおじさんだから。涙を拭いて。……その男性を別の部屋に、早く!」
ソラ君の声が部屋中に響いた。促されるまま二人の刑事が、土下座している父親の両脇を抱えて部屋から出て行く。
「えっー誰もソラ君の存在突っ込まないの?」
「シッ」と今度は私がお母さんにされた。<こはいかに>はそういうもの?そうでしょうきっと。
アングルが替わる。ソラ君が男の子の頬につたう涙を拭いてあげている。
ソラ君らしいクチャクチャのティッシュだ。
「……君は十分苦しんだね。お母さんや弟、妹に会いたいかな?」
「うん。……でも弟は死んじゃったよ。よっこは今どこにいるの?父ちゃんと出掛けたまま帰ってこないんだ。……母ちゃんは?」
もう嫌だよ。この話。私はお母さんの肩を掴む。お母さんが小刻みに震えている。
「……よっこは保護されて、あっ、またすぐに会えるよ。……母ちゃんはまた違う男の人と何処かに行っちゃったんだよ。……あきらめな」
3人で口を開けてしまった。まだ7つの子供に言う言葉じゃないでしょ!
「君は父ちゃんや母ちゃんが嫌いなの?」
「……ううん。好き。よくおもちゃを買ってきてくれたし、遊んでくれたよ。優しい父ちゃんだよ。……母ちゃんもね、でもね……ぐすっ」
「男なんだから泣かないの!……君は母ちゃんに捨てられたんだ。父ちゃんに殺されかけたんだ!」語気を強めるソラ君、今現実を伝えるのは厳しすぎる。
「知ってるもん!僕たちは母ちゃんにおいてかれたんだぁ。それで弟はあのおばさんにいじめられて……父ちゃんは困ってたんだよ。子供を捨ててきなっておばさんに言われて困ってたんだっ。よっこもどっかに連れてかれた。僕も、ぼくも邪魔だったんだぁ」
「じゃあ、君は父ちゃんが嫌いだね?」
「……大嫌いだぁ。父ちゃんなんか死んじゃえばいいんだ!よっこを捨てようとしたぁ、ぼくを2度も殺そうとしたぁ、父ちゃんなんか嫌いだ!死んじゃえばいい。悪い事をした父ちゃんなんか警察に捕まればいい」
男の子のが大泣きをしている。ソラ君はただ黙って見ている。……残酷な問いかけをしているソラ君に少しいらっとした。
「……殺そうとした父ちゃんを憎みな。捨てた母ちゃんを恨みな。一生かけて償わせるんだ。復讐するんだ!」
「ふくしゅう?……仕返しするってこと?」
ソラ君の口から一番言って欲しくなかったワードに私はショックを受ける。
「そう、仕返しだ。……けどされた事と同じようにする事じゃない。父ちゃんに毒を盛る事でも、崖から突き落とす事じゃないんだよ」
「……よく分かんないよぉ。何するの?」
「……憎しみや恨みを生きるバネにして、相手より幸せになることだ」「しあわせ?」
「復讐」と一番正反対の「幸せ」というワードに私は違和感を覚えた。お母さんとお父さんが軽く頷いている。何でそうなるの?
「子供は親を選べないんだ。……自分を守るのは自分しかない。……強くなりたい?」
「……うん」男の子のが弱々しく答える。
「強く生きるために今、父ちゃんと母ちゃんを憎むんだ。こっちから捨てるんだ!」
「……父ちゃんのバカヤロウ、母ちゃんのバカヤロー。えーんえーん」男の子の泣き声が大きくなっていく。
ソラ君は男の子を強く抱き締めながら、頭を撫でる。ソラ君らしくクチャクチャに撫でる。
「コバヤカワソラ コワイカニ」
自問自答の時間が来た。ソラ君はゆっくり男の子のから離れた。ソラ君の顔のアップになる。目にうっすらと涙が滲んでいる。
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