第15話 エグゼクティブルーム
[タカナシラキサマ、アイソミツキサマ、エグゼクティブルーム イドウシテクダサイ]
美月と抱き合ってると突然声がした。
「エグゼクティブルームってどこかな?」
「……分からないよ。初めて聞くもの」
カプセルが開くと、ソラ君がいた。
「ラキさん、お疲れ様。美月もお疲れ。エグゼクティブルームに案内するよ」
ソラ君に会うの久しぶりの気がする。ソラ君の背中を追って、美月と手を繋ぎながら、心臓の高鳴りをおさえた。何か言わなきゃ。
「……あっ、そうだ。カイロと、ダウンコートありがとう。本当に助かっちゃった。クリーニングして返すから、もう少し待ってね」
「いいよ、いつでも。……あっここだから」
素っ気ない返事に少し落ち込む。ソラ君のことだから、優しく頭を叩かれると期待していた。ソラ君はエグゼクティブルームの扉を開けると、先に入るようにしてくれる。
「さあ、どうぞ。お嬢様たち、まずは好きなケーキと飲み物をカウンターでお取りください」
「きゃあ、ラキ、ケーキだって。わあっうれしい。……ラキ、どれにする?」
カウンターには、10種類位のケーキが並べられている。私はモンブラン、美月はレアチーズケーキをお皿に取り、紅茶を頂く。
「現代に戻ってきたら、この部屋に入って、少し甘いものをとってね。体力使うから。……あっ、ラキさん、寒くなかった?説明してなくてごめんね。行きたい場所によって、必要なアイテムを入力してね」
「そこ説明大事でしょ。私、カメラ持ってけば良かったよ。携帯電話ダメって言うから、タイガーマスクの写真取り損ねた」 美月がケーキをほおばりながら、ソラ君に文句を言う。
「あっ、<こはいかに>のマニュアル、二人にメールで送ってあるから後で読んでね。注意事項は守ってね。ラキさん、今日は特別だよ。風邪引かせるわけにはいかないからね」
ソラ君はニコッと笑う。やっぱり、優しい。
「何かな?怪しい。……特別って何したの?」
「私、笠地蔵の物語なのにこの春の格好のまま行ったの。寒くて震えてた所に、お爺さんがソラ君に預かったもの渡してくれたの」
「あー、そういうことね。……ねっ、ふたつめ食べていいのかな?私、お腹すいちゃった」
美月はケーキを取りに席を外した。ソラ君と二人きりになってドキドキする。
「俺、ふたりの<こはいかに>ずっとこのソファで見てたんだけど、二人ともまじめだね」
ソラ君が指差す先に大画面のテレビがある。
「えっ、こんな大画面に私映ってたの?ソラ君に見られてたなんて恥ずかしい」
「……まじめって誰の話かな?」美月が今度は定番イチゴショートをお皿にのせてきた。
「美月の話だよ。正義感強いって話。でも驚いちゃった、あんなに熱く語る美月を初めて見たもの」 私は美月に話をふる。ソラ君に誉められて、なんか恥ずかしかった。
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