第24話 鬼畜 クエスチョンシーン
映画〖鬼畜〗のクエスチョンシーン
白髪交じりの刑事が、崖から落とされた息子の父親に怒りを込めて問い詰めている。
「お前の事は完全黙秘したよ。あんな目にあいながら庇うなんて、やっぱ親子なんだなぁ。よくバチが当たらなかったな!……何と言って謝るんだっ!えー謝りきれないだろおっ!」
警察署に呼び出された父親は、観念した様子で土下座をし、頭をうなだれている。
そこへ足に包帯を巻かれた7才位の男の子が、婦人警官に連れられて部屋に入ってくる。
(息子よ、生きていてくれたのかっ。) 安堵と後悔が入り交じった顔で息子を見ている父親。そこには殺人未遂した鬼畜の父親ではなく、涙でぐちゃぐちゃの父親がいた。息子に謝り、抱きしめようと近づく父親。
犯人を特定するために、刑事が息子に問い尋ねる。優しく、それでいて父親に対する憎しみを含んで語気を強めて聴く。
「さぁ坊や、見てごらん。あの人知ってるよな?……誰だか言ってごらん」
息子は父親を涙顔で真正面にとらえるが、何も言わない。もう一度、刑事が促す。「坊や、どうしたんだよ。お父さんだよな?」
「違うよ!父ちゃんじゃないよ!……父ちゃんなんかじゃないよ!……よその人だよ。知らないよ!……父ちゃんじゃない」涙声で、それでいて大きな声で否定する息子。
「ごめんねっ!ごめんね。……ごめん……」
父親は息子の足元に伏し、号泣する。両の手のひらを合わせて泣きながら、ごめんねを繰り返す。懺悔の言葉を聞きながら、涙を流し続ける息子。
何かにとりつかれたように泣く父親がフェードアウトしていく。
「……グスッン。人があんなに泣くのってあんまり見ないから、貰い泣きしちゃう」
「だよな。お父さんがこの父親の立場なら、自分を庇う息子を抱きしめるだろうな」
お父さんとお母さんがまた涙している。
「ラキはまだ親になった事ないから、男の子に感情移入しちゃうんじゃない?」
「……そうね。この子はお父さんが殺人未遂の罪で捕まるから、知らないっていい張ったんだね。私だったら……無理かな。お父さんってとびついちゃう。ずっと一人で怪我までして不安だったんだよ。会ったら安心して……うっ」
何て重い映画を観てしまったんだろう。最近の「虐待」のニュース記事が頭にちらつく。
親のエゴで虐待される子供が多い世の中だ。高校生活を満喫している私でも知っている。
「この父親は弱いんだろうね。お金にも女にも、自分の欲望にも弱くて、全てのしわ寄せが、子供にむかったんだよ」
お父さんが珍しく怒って、ビールのグラスを音を立ててテーブルに置く。
「そうね。……この父親はもう息子に触れる事は出来ないでしょうね。子供3人を亡き者にしようとした罪の意識は大きいでしょう」お母さんがため息混じりに意見を述べる。
お父さんもお母さんも、真剣に感想を言う事に私は少し戸惑った。日常会話よりも深い事と私を大人として扱ってくれている照れもある。
「ではお待たせしました!……ソラ君の<こはいかに>見ましょう!」
お母さんが明るく言う。気持ちを切り替えて、パソコン画面を見つめる。こんな重い物語を選んだソラ君が何倍も大人に感じた。
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