第33話 お金持ちになりたい!
「……何でラキは即答しないの?こんな不公平な世の中、お金があればって思わない?」
「それはそうだけど、身分相応でいっ……」 ――バシッ「痛い!」美月が背中を叩く。
「ラキは、本当に苦労している人見たことないからそんな事言うんだよ!」
「……ごめんね」私はとっさに謝る。確かに身分相応でいいなんて綺麗事だ。美月の従兄弟のケイ兄ちゃんの話を思い出した。時給が健常者の10分の1なんてありえない。美月の叔母さんも不公平な世の中を憂いでいる。
「美月は女タイガーマスクになりたいのよね?ケイ兄ちゃんの個展を開いて生活を楽にしてあげたいんだよね?だから……。」私も美月もしんみりしてしまう。
「アイスクリームでも食べる?」二人の空気の悪さを感じとったのかソラ君が3つテーブルに置いた。ストロベリー、バニラ、抹茶だ。
「俺は買ってきてもらったストロベリー」
――家にあったんだ。何で?
「今日はストロベリーの気分だったんだよ」私に答えるかのようにソラ君がはにかむ。
せこい事を言うつもりはないけど、ひとつ200円以上のアイスクリームだ。限られたお小遣いの中で買ったんだよ、ソラ君のお見舞いだから買ったんだよ!家にあるなら要らないよね?そのお金でかわいいノートが買えたのに。
「お金って何のためにあると思う?」アイスクリームのフタを開けるソラ君。バニラと抹茶アイスを私たちの前に差し出す。無言で美月が私の前に抹茶を置いてくれる。私が好きなのを知っているから。何ヵ月も冷凍庫に入ってたのかな?ガシガシの氷の粒がフタを開けたらとんだ。
「……自分の欲しいものを買うため?」恐るおそる答える私。さっきの心の中の愚痴が漏れた気がした。
「もちろん。……けど、それだけじゃないよ」
「美月の様にケイ兄ちゃんの為に、つまり他人の幸せの為にお金が欲しいこともあるよね……ソラ君はどうしてそんなに必要なの?」
「アイスクリームのフタの氷が答えです!」
私は美月と顔を見合わせた。ソラ君の言葉の真意が分からない。
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