第28話 ソラ君、今日は学校休むんだって

 いつもの桜並木が今日の朝は違う。花が全部舞って、葉桜だもの。当たり前か……。

 

 ――ソラ君にどんな顔して会おうかな?何て話を切り出せばいいのかな?……慰めてあげる方がいい?全く触れない方がいい?


 昨日のソラ君の過去の話をどう受け止めたらいいのか分からない。


 母親に捨てられ、父親と継母に殺されかけた衝撃的な過去。私には理解出来ない。違う世界の話。小説みたいな過去。鬼畜って……何?


「……かわいそう。かわいそすぎるよ」早く美月と花音ちゃんに会いたいよ。


「ラキ、おはよう!」自転車置き場に美月が先に来ていた。一安心する。「おはよう、美月」

 

「昨日のソラ君、びっくりしたね」「うん」

 言葉に詰まった。もう来る?その話。

「おはよう!美月とラキ」花音ちゃんもいる。


「私は知ってたんだけどねっ。……別に二人に話す事でもないかなって思って……」

「そっそうだよ。みんな知られたくない過去の1つや2つあるものよね」美月が苦笑いする。


「じゃあそういうことで。この話おしまい」

 話を振った美月が軽く手を叩く。おばさんみたいねって私と花音ちゃんが笑う。


 そうだよ。私の周りにはたまたま普通の子しかいなかったんだね。両親が揃っていて、普通に家庭円満に暮らして、同じ16才になっただけの話。ソラ君も過去がどうであれ、同じ16才。


「……それより今日ソラ君、体調不良で学校休みなんだって。終わったらお見舞い行く?」花音ちゃんのまさかの発言に驚く。


「……バイトどうする?」

「……うーんと、私はパスする。ソラ君のお見舞いに行こうかな。……てか何で花音ちゃんソラ君が休むって知ってるの?」

「今朝、連絡あったから。お見舞い来いって」


 お見舞いの催促って初めて聞いたね。けど3人なら安心してソラ君に会えるかも。

「……急に幼い頃の出来事を思い出して、精神的に参っちゃったのかな?」

「ソラ君にかぎってそんな事ないよ!」

 

 美月も花音ちゃんも声を揃えて否定する。


 ソラ君て何処に住んでるの?知らない。

 何が好きなの?苦手な食べ物ってあるの?

 私はソラ君の事何も知らない。けど、放課後会えると思うと嬉しくなった。


 



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