第30話 ソラ君の本音
――ソラ君の住んでるマンションに到着する。
「やっばっ、同じ高校生でも社長って違うね?ウチなんかこのエントランスと同じ広さだよ」
「吹き抜けだよ。何階建てなの?」
「10階だったかな……ソラ君そこだから」
エレベターで10階に向かう。
心臓がバクバクする。同級生のお見舞いなのに、美月も花音ちゃんも一緒なのに……。
10階に着くと、玄関のドアの前にソラ君が立っていた。グレーのパーカーだ。
「いらっしゃい。……まっ入ってよ」
ラフな格好で、軽いノリで……どれだけ心配したと思ってるの?
「ワンルームじゃないよね?こんな広い所に一人で住んでるの?」美月の声は大きい。
「……腹へった。これがおにぎりか?」
「まさか初めて見るの?」珍しそうにソラ君はおにぎりのフィルムをはずしている。
「なにこの番号?あー海苔と別になってるぅ」
昭和の人?まるでコンビニのない時代からタイムスリップしてきた人みたいだ。
「……仕方ないよね、今まで自分で買ったことないものね」花音ちゃんがソラ君を庇う。
「それにしても旨いなあ。このチキンも最高だよ。手掴みで食べるとさらに旨い。ずっと憧れてたんだよ、俺。……炭酸飲みながら、チキン食べるの夢だったんだ!」
「うっそー、うちなんか、家族でやるよ。ファミリーサイズのチキンとコーラとたまにポテトの取り合い!弟の飛鳥なんて一リットル飲んじゃうもん。……ソラ君お坊っちゃまだね?」
「ふだん、食べなくても、クリスマスは?」
「……ソラ君の事だからフランス料理のフルコースだったりして。お金持ちの子は違うよね」
からかいすぎた。ソラ君が黙った。しかも、表情が曇ってきた。
緊張するとはしゃいでしまう私の悪い癖。
「……そう、俺んちフランス料理のフルコースだけど、文句ある?……それにしても庶民の食べ物にはまりそ。花音、幾らだった?」
ソラ君が笑った。……怒ってない。
「みんなからのお見舞いだからお金はいいよ。明日は学校こられるでしょ?」
花音ちゃんが聞く。――ソラ君沈黙。
「まぁ無理しないでね。……またメールくれたらいつでも来るからさ」美月が男友達のようにソラ君の肩を叩く。えー私何て声かける?
「……ソラ君、お大事にね。明日学校で」
精一杯の言葉だ。……美月のようにソラ君に気軽に触れられたら楽なのに。
「……ひとりに……ひとりになりたくない」
えっ?私に言ったの?美月も花音ちゃんも玄関に向かっている。スリッパ脱いでる。
「ラキ、帰るよ、……早く」美月の催促。
「ソラ君の、またね」手を振る私。
「……ひとりにしないで欲しい……」
ソラ君の消えかかる声を聞かないふりしてしまおうか、今の言葉を美月と花音ちゃんに伝えた方がいいの?迷う。困る。どうすればいい。
ソラ君の初めて見せる本音に戸惑った。
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