第29話 ソラ君、仮病ですか?

 放課後


「……えっとねぇ、ソラ君の家に行く前にコンビニ寄っていいかな?」

「もちろん。お見舞いなんだからさ。……何買って持ってく?」

「あっ今、見るね。メール来たんだ」花音ちゃんが自分のケイタイを取り出す。

「いい?覚えてね。アイスクリームはストロベリー味、チキンを3つ、1つは辛いのにして。レモン味の炭酸と、あとお握り3個、タラコと梅干しと……1つは任せる」

「何それ?えー体調不良でそんなに食べる?」

「……そうだよ、体調悪いときに食べる物じゃないよね。アイスクリームはいいとして、普通、お粥とかうどんじゃないの?」

 

 美月も私も呆れて、花音ちゃんのケイタイを覗きこむ。よろしくのスタンプまである。


 3人で歩いて5分の所にコンビニがある。学校のそばにあると便利だ。

「……ソラ君、コンビニ禁止なんだ。体調管理の為に自宅のお手伝いさんの料理しか食べられない決まりなの。事故しないように本当は自転車通学も禁止。けど最近、お父さんに内緒で一人暮らしのマンション借りて、自転車通学始めたんだよ。週末は帰るけどね」花音ちゃんがカゴに商品を入れていく。

 

「……そっか、<こはいかに>の社長だものね。何かあったら大変よね」美月が同情する。

「私なんか、お母さんがお弁当面倒だとコンビニのお握りよく買うけど……そっか、ソラ君にしたら食べたいランキング1位かもね」

「じゃあ、あと1つは何する?鮭かイクラ?庶民的な昆布にしてあげる?」

 人の為にお握り選ぶって初めての体験だ。私はなんかソラ君が不憫になる。

「全種類買っちゃおうか。私たちもお腹空いたしね。……はいっ、イクラと高菜もあるよ」

 

 ソラ君って普通の高校生じゃないんだ。もしかしたら、まだ経験してないこともあるかも知れない。


「あっ、またメールだ。……お腹空いたから早く来いって、全く何様なのかな?」

 花音ちゃんが怒りながら、けど嬉しそうに言う。……ソラ君と花音ちゃんて付き合ってるのかな?……そんな事今、聞けない。


「ソラ君、結局仮病だよね?安心した」

「ラキは優しいね。……仮病のふりしてるのはね……実はラキに会いたいからなんだよ」


 嘘?嘘?うそでしょ!花音ちゃんにからかわれてるたけだよね?

 

 自分でも顔が赤くなるのが分かった。



 

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