第20話 お父さんはダイヤの7 お母さんはハートの3

「……ラキも成長したな。お父さん嬉しいよ」

 ビール一杯目なのにお父さんが、涙ぐむ。


「やだぁ。お父さん、ラキは小さい頃から物事を深く考えるタイプでしたよ。今日の質問もラキらしかったわ」

 お母さんが褒めてくれる。私は勉強は苦手だったけど、読書は大好きだった。


「ただ、他の人が考えないような事を質問してきたわね。一番面白かったのが、シンデレラなんだけど、ラキ覚えている?」

「覚えてないなぁ。どんな事を聞いたの?」


 子供の頃の話をされるのって嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な心境になる。クリームシチューをもう少し足しに席を立つ私。


「……シンデレラのお父さんはどうして、あんな意思悪な継母と結婚したのかって泣いてたのよ。ブスな娘つきのブスな嫁だもの。シンデレラのお母さんは綺麗な人なのに、どうして再婚相手があんなブスなのか疑問に思ったのね」


 お母さんがお父さんに面白おかしく話す。

「普通、5歳くらいの女の子なら、カボチャの馬車とかガラスの靴、素敵なドレスの話をすると思うのよ。おませな子供なら王子様に憧れをもって、私もシンデレラになるって願望言うのにね。ラキは面白い子だったわ」

 

 そんなに笑わなくてもいいのに。お父さんももらい笑いをしている。

「……そう考えると、今のバイトむいてるかもな。今日のラキの評価はダイヤの7にしたよ」

「お母さんは、えっとね、ハートの3だわ」

「えっ?なんで知ってるの?そのシステム」


 私も美月も今日教えてもらったばかりだ。

「何でって、<こはいかに>のチャンネル登録をすると、必ず見た後に押すのよ。コメントは自由だけどね。それでバイト代が決まるんでしょ? 視聴者にとっても考えさせられる時間だわ。花音ちゃんのお父さんの書いた本に感化されて、賛同してるから、純粋に評価出来るの」


 花音ちゃんのお父さんが書いた本?そういえば、お母さんは感動したって言ってたな。どんな内容なのか気になる。


「お母さん、その本読ませてくれる?」

「……寝室にあるから、後でラキの部屋に置いておくね。それより、今から美月ちゃんと、ソラ君の<こはいかに>見なくちゃ。楽しみだわ」


 お父さんもお母さんも、ずっと同じ家に住んでいたのに、今までなんで黙ってたんだろう?タイムトラベルも世紀の大発見なのに、今までどうして教えてくれなかったんだろう?私の頭は?マークがいっぱい。そんな時、メールの着信音がなる。


「……あっ、ソラ君からだ。お母さん、ちよっと、自分の部屋にいるね。本貸してね」


 事務的な内容だろうけど、ソラ君からのメールに心が踊った。




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