第44話 ソラ君 メロスの勝利
「若い娘さん、名前はなんと言う?」
ソラ君が、馬からおりて尋ねている。
「名乗るほどの者ではございません。それよりもあなたはあのメロス様とどんな関係なのですか?セリヌンティウス様ともお知り合いなのですか?」
質問されているソラ君は聞こえないふりをして馬の頭をなぜている。白い馬に優しい眼差しを向けるソラ君はいつものソラ君だ。
「さぁ、この馬に乗って。今からメロスを追いかけるから。先回りをしよう」
「どうして私が行くんですか?おじいちゃんをほっては行けません」
「心配しなくてもいい!仲間に手厚く保護するように頼んであるから。さぁ乗って」
ソラ君は強引に娘を馬に乗せた。
本当にメロスを追いかける気なのか、追いかけてどうするのか検討がつかない。
「あーもしかしてあの若い娘って、分かった!」
美月が大きな声をあげる。私には分からない。
ソラ君と若い娘を乗せた馬が走り出す。とても速い。ソラ君が馬を乗りこなせるなんて知らなかった。
――二人の顔がアップになる。ソラ君の表情は真剣だ。ソラ君が何か言っている。風の音で聞こえない。
突然字幕が出た。リアルタイムなのに、ソラ君の口の動きと字幕がほぼ同時だ。
「振り落とされないように、ちゃんとつかまってね。……俺はメロスと今日初めて会ったし、セリヌンティウスを見た事もない。ただ、ああいうタイプがキライでね。セリヌンティウスも苦手さ。
あとで仲間に入れてくれと言う王も気に入らない。処刑場所に行って、言いたい事全部言うつもりだから連れて行くよ!」
ソラ君は何を言うんだろう。
「あの子かわいそう、いい迷惑だよね」
「ラキ、もしかしてヤキモチやいてんの?」
色白で艶のある黒髪の少女を後ろからソラ君が抱き締めているように見える。
「そっ、そんな事ないよ。美月、やめてよ」
私は苦笑いで画面をじっと見詰めた。
場面が処刑場所に切り替わった。
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