第47話・黄金色に輝く手の中の太陽を持ち上げる。

アンギンザラー大陸に戻るとすぐに、バェェは地面に顔をこすり付けて生えている草をモシャモシャと食べました。バェェの1つになっていた顔はすぐに5つに戻ったので、みんな一安心でした。

先程まで海の色は一面きれいな七色でしたが、ポンポンが七色の星の涙に乗って大陸についたとたんに海は青色に戻りました。

そして、七色の星の涙も海からはなれ、ポンポンたちがおりると、地面の上でひとまわり小さくなりました。

「無事に戻ってこれましたね。」ロロさんがピョンピョンをおろしてからホッと一息ついて、右手で髪をペタペタとなでました。

「もどった!もどった!」ピョンピョンもうれしそうに地面をコロコロと転がりました。

「バェェもちゃんと戻ったね!よかった!」

「バェェ!!」

ポンポンとバェェもうれしそうにぴょんぴょんボヨンと跳ねました。

「それでは、七色の太陽のほほ笑みを探しに、コンコルド鉱山に行きましょう!」

ロロさんのかけ声でポンポンとバェェとピョンピョンはきちっと背筋を伸ばして整列しました。

「じゃあ、ロロさんは七色の星の涙に乗って移動する?」

ポンポンがバェェによじ登ってロロさんに尋ねました。

「いいのですか!?」ロロさんはとっても興奮した顔で、七色の星の涙にお行儀よく背筋を伸ばして座りましたが、「あれ?」七色の星の涙はちっとも動きません。

「あれぇ?ダメだね?」ポンポンがバェェの上でゴロゴロしながらちょっぴり笑いました。

「そんなぁ…。」ロロさんは大粒の涙を流してガックリと肩を落としました。

ポンポンはバェェの上からピョンッとジャンプして地面に立って言いました。

「じゃあ、ロロさん、バェェに乗りなよ。あたし、七色の星の涙に乗るよ。」

「はい、わかりました…。」ロロさんは肩を落としたままバェェに乗り込みました。


七色の星の涙に乗ったポンポンと、バェェに乗ったロロさんとピョンピョンはコンコルド鉱山に到着しました。

ドワーフたちはいつも通り、ポンポンたちを歓迎してくれました。

「と、いうわけで、七色の太陽のほほ笑みを探しに来たの。どこにあるか知らない?」

ポンポンがこれまでのいきさつと、今回、コンコルド鉱山に来た目的をドワーフたちに話しました。

ドワーフたちは頭を寄せ合って、なにやらコソコソ話し合い、ポンポンの事をたまにチラチラ見てはまたコソコソ話し合ってから、一人のドワーフがポンポンにとても小さな声でこう言いました。

「これは、内緒の話なのですが、七色の太陽のほほ笑みと言う名前かはわからないけれど、このコンコルド鉱山の奥の奥のずーっと奥に昔からすごく大きい宝石ならあります。あんまり大きいから誰にもとれないんですよ。」

「じゃあ、それが七色の太陽のほほ笑み…」

「シー!!!」

ドワーフたちがいっせいにポンポンが話すのを止めました。ポンポンもビックリしてあわてて両手で口をおさえました。

「大きな声で言わないでください!」先程のドワーフが、また小さな声で続けます。

「これは、内緒の話なのです!本当はドワーフしか知らない、誰にも言っちゃいけない話なのですが、あなたは私たちドワーフを何度も助けてくれたので、特別におしえてあげます。鉱山の奥の奥のずーっと奥です。ついてきてください。」

「ありがとう。」ポンポンが小さな声で言いました。


鉱山の奥の奥のずーっと奥は、とっても遠くて、とっても時間がかかるので、ロロさんが歩きながら、先代の色の魔法使いから聞いた話しをおしえてくれました。

「七色の太陽のほほ笑みについて、先代はこう言っていました。

 『青き太陽の喜びが満ちるとき

  青き太陽はほほ笑み

  ほほ笑みは弾け広がるであろう』

と、そう言っていました。」

「ほほ笑みが、弾ける?」ポンポンは首をかしげました。

ロロさんは、道すがら、先代から聞いた、先代が色を集めたときの話や、新しい色を作ったときの話、ロロさんが先代といっしょに旅をしたときの話、先代がおしえてくれたまじないの話なんかをしてくれました。

ポンポンは、自分も色の杖を完成したあとのことをいろいろと想像して、とてもワクワクしてきました。


そのうち、鉱山の奥の奥のずーっと奥よりもっと奥にあるとっても大きい宝石がある広くなっている部屋に到着しました。

その宝石は、とっても大きくて、七色に光り輝いていました。

ポンポンは七色の星の涙からおりて、大きな七色の宝石の前に立ちました。

ポンポンがその大きな色の宝石に手をふれると、ポンポンはスーッとその宝石の中に入ってしまいました。

宝石の中は、外側から見るよりも、ずっとくすんだ七色で、なにか周りがよどんでいるように七色の帯状のものがたくさんウネウネとしていました。

ポンポンは七色の星の涙のときの黒のように、なにかが出てこないか、あたりをキョロキョロみまわしましたが、なにも現れませんし、ただまわりのよどんだ七色の帯状のものがウネウネし続けているだけでした。

待っていてもちっとも何も出てこないので、ポンポンは自分の書いた『色の誕生の物語』の太陽のことを思い出しました。

―――太陽は…青と黒がパチンッパチンってした星から生まれた…。

そこまでポンポンが思い出すと、まわりのよどんだ七色の帯状のものがピタッととまり、泡が弾けるようにパチンとなにかが弾けました。

弾けたところは、それまでのよどんだ色ではなく、もっと明るい七色になりました。

ポンポンは続けます。

―――太陽は…まばたきをして…ポコッポコって…海からカケラが出てきて…

すると、今度はさっきよりもたくさんパチンッパチンッと弾けて、明るい色がさらにきれいなほとんどキラキラした色になりました。

―――それから…青といっしょに…パチンパチンって…色をいっぱい…

ポンポンの耳には青と太陽が色を生むときのパチンパチンという音が聞こえてきます。

ポンポンは、なんだかとっても楽しくなってきて、手をパチンパチンとしてみました。

するとポンポンの手から七色の泡がポワンポワンっと生まれました。

ポンポンは、なんだかとっても嬉しくなって、手をいっぱいパチンパチンとしました。

なんだかとっても楽しくって、ポンポンはにこにこしながらパチンパチンとします。

七色の泡はどんどんどんどん増えて、あっという間に宝石の中が全部きれいな七色になりました。

宝石はひときわ強い光を放ちます。

ポンポンが思わず目をギュッとつむってから開けてみると、ポンポンは宝石をさわる前の時のように、宝石の目の前に立っていました。

ポンポンが宝石の外に出ても、光はいっこうにおさまらず、ついには宝石の外、洞窟の中が全部ピカーっと七色になりました。

ポンポンは宝石の中でのことを思い出して、もう一度手をパチンパチンとしてみました。

すると宝石は光るのをやめて、大きな宝石の真ん中から小さな小さな宝石がポンッと出てきました。

それは、ポンポンが両手で持てるくらいの大きさで、フワフワと浮いてポンポンの真上でピタッととまりました。

バェェとピョンピョンとドワーフは宝石を見て、目と口を大きく開けていましたし、ロロさんはポンポンの姿を見て「美しい」だとか「神々しい」だとかブツブツ言いながら涙を流していました。

ポンポンは、自分の真上にきた宝石を見ながら、ぼんやりと、これは七色の太陽のほほ笑みだなぁと思い、七色の星の涙に座りました。

ポンポンは七色の太陽のほほ笑みと七色の星の涙にはさまれる状態になりました。

もちろん、ロロさんはさっきよりも感動してたくさん泣きました。

ポンポンたちが鉱山から外に出ると、七色だった鉱山の壁は普通の色に戻ってしまいました。

ポンポンたちはドワーフに別れを告げて、バラの雫をもらいにポーツネール村へと向かいました。

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