第13話・虚空に浮かびし時、銀色の鍵を授けよう。
バシャッ!!
ポンポンとバェェはずぶ濡れで、今度はサンサーンの湖に到着しました。
「地図、大丈夫かな?」全身ずぶ濡れのポンポンは鞄からおじじ様が作ってくれた地図をとりだして広げてみました。
大丈夫。おじじ様の魔法がかかっているので地図は濡れていません。
「あれ?黒を取ったからかな?」地図はバンパルネールの森の所についていた黒い丸がポコっとふくらんで少しだけ光っていました。
ポンポンは回りを見渡しました。霧がいっぱい出ていますが、たしかにサンサーンの湖が目の前に見えます。霧のせいか、とっても薄い水色をしています。よく見ると湖の真ん中に小さな島が見えます。
「バェェ、小島が見えるよ。船がないか探してみよう?」
ポンポンとバェェは湖の回りを一周してみましたが、小島に行くための船はどこにもありません。
どうしようかとポンポンが考えていると、バェェがポンポンに体をすり寄せてきました。
「うわっバェェ、どうしたの?やめてよ、うわーっ。」
ボヨンッ。
バェェがあんまりすり寄せてくるので、ポンポンはバェェに乗っかってしまいました。
なんとバェェは人を乗せて飛ぶことができるのです。
「えー。バェェ、乗れるならはやく言ってよー。」ポンポンはちょっとだけ、くちびるをとがらせました。
「バェェェェ。」バェェはうれしそうにボヨンボヨンと跳ねます。バェェはちょっとだけいたずらっ子みたいですね。
ポンポンとバェェは湖の真ん中の小島に到着しました。小島には鎧を着た男の人の銅像が1つだけ建っていて、『ターレンスの像』と書かれていました。
ポンポンはためしに杖でターレンスの像をコンコンっと叩いてみましたが、特に何も起こりません。ターレンスの像は苔だらけだったので、バェェがあっという間にその苔を全部食べてしまいました。おかげでターレンスの像は苔はひとつもなくなりましたが、バェェのヨダレまみれで少しかわいそうです。
「バェェ、像をキレイにしたいから水をくんできて?」ポンポンはお腹いっぱいで大きくなったバェェに言いました。
バェェは湖から水をくんできて、その水と、さっき食べた苔を少しターレンスの像にかけました。ポンポンが鞄から布を取り出してターレンスの像をキレイにふいてやると、ターレンスの像は青くピカーっと光り、それから湖の霧が空の上にあがり、さっきまで霧のせいでとっても薄い水色だった湖はすっかりとっても濃い青色になったのでした。
空にあがった霧は少しずつ真ん中に集まっていき、ターレンスの像の真上で大きなかたまりになってから、ターレンスの像に霧が全部降り注ぎました。
すると、ターレンスの像はさっきまでよりも、もっともっと青く光ったのです。
「ねえバェェ、青色ってこの像から取れるのかな?」
「バェ…」
ポンポンはとっても青くなったターレンスの像に杖を当ててみましたが、残念ながら青色はちっとも杖の魔石に入っていきません。すると、ポンポンはターレンスの像の台座にある小さな鍵穴を1つ発見しました。
「鍵穴の下に『アメーリア』って書いてる。あっ!ひょっとして…」ポンポンは地図を広げました。サンサーンの湖から東に行くと、アメーリアの祠があります。
「バェェ、アメーリアの祠に行ってみよう!きっと鍵があると思うんだ。」
「バェェェ」
ポンポンはバェェに乗って、2人はアメーリアの祠へとむかいました。
アメーリアの祠は薄暗い場所でした。
真ん中に大きな石の道があって、その両側には等間隔に小さい柱が何本か立っています。小さい柱はポンポンより少し大きいくらいの高さで、その上にはゴツゴツした四角い物が1つずつ乗っています。
真ん中の大きい石の道を奥の突き当たりまで行くと、祠があります。祠といっても小さな神殿のようで、ギザギザした扇状の屋根を支えるための真ん中がくびれた柱が何本かあって、その真ん中には石の道の横の小さい柱に乗っているゴツゴツした四角い物をもう2回りくらい大きくしたゴツゴツした四角い大きい物が乗っていました。
アメーリアの祠は、なんともおごそかな場所で、声や咳、足音1つたててもいけない気分になってしまう場所で、ポンポンはなるべく足音をたてないようにつま先だけで歩き、うっかり声がもれないように口を両手でおさえて、バェェは可能な限り体を小さくして、呼吸まで止めて、静かに静かに移動しました。
大きい石の道の両側にある最初の小さい柱の横を通ると、突然、柱の上のゴツゴツした四角いものが、ポンッと明るくなりました。
ポンポンとバェェはとってもビックリしましたが、なんとか声は出さずにすみました。でも互いに目をまんまるくして見つめ合いました。
それから静かに頷きあって、祠の奥へと足を進めます。小さい柱は横を通る度にポンッポンッと順々に明かりがついて行きます。
そしてついにポンポンとバェェはいちばん奥の祠に到着しました。祠の真ん中のゴツゴツした四角い大きい物はとってもキレイで、ポンポンがそれに触ってみると、体がフワッと浮き上がりました。
「うわっ!!」
「バェッ!!」
ゴツゴツした四角い大きい物はポンポンが触ったところからジワーっと明るい光が広がっていき、それと同時にポンポンの頭の中にもある言葉が広がり、それはそのまま自然と口から出てきました。
我は色を司りし者なり
我に支えし者よ
我の命に従い
我の求める鍵を与えよ
ポンポンがフワフワと浮かびながらそう言うと、ゴツゴツした四角い大きい物はさらに強く光り、その中から静かに銀色の鍵が飛び出してきました。
ポンポンがその鍵をつかむと同時に、ポンポンはゆっくりと地面に降り立ちました。
ポンポンはまだ体がフワフワする感覚のまま、ゴツゴツした四角い大きい物の光がおさまっていくのをボーッと眺めていました。
「バェ?」
ポンポンはバェェの心配そうな声でハッとしました。
「バェェ、鍵が手に入ったよ!ターレンスの像のところに戻ろう。」
「バェェェ」バェェはボヨンと1度跳ねました。
ターレンスの像に戻り、鍵穴にアメーリアの祠で手に入れた鍵をさしてみると、ポンポンの予想通り鍵はピタッとはまりました。それからターレンスの像は少しだけガタガタっと揺れて、先程ターレンスの像に降り注いだ青い霧がすーっとポンポンの杖の魔石に入っていきました。
「うわーっ!黒の時みたいに杖の魔石がちょっとだけ青くなったよ!」
「バェェェェ」バェェもうれしそうに左右にボヨンボヨンと揺れました。
「あっ!髪の毛も七色の部分がちょっとだけ広がってるよ!それに…うんしょっ、地図…あっ!やっぱり!サンサーンの湖の青い丸がポコってふくらんで、ちょっとだけ光ってるよ!色が増えてくと、こうなるんだねー。」
ポンポンはうれしそうに自分の髪の毛の先の七色になった部分をさわりました。
「バェェバェェェェ」バェェは少しだけ優しくポンポンに体をすり寄せてきました。
「え?あっ!おなかすいた?」ポンポンは髪の毛から目を離し、バェェの方を見ました。
「バェェ!!」バェェはうれしそうにポンポンを自分の背中にボヨンッと乗せました。
「じゃーあ、湖のほとりに苔がいっぱい生えてた所があったから、そこでバェェのごはんにして、あたしは今日は…」
ポンポンがそう言うと、バェェは大急ぎで苔のある場所へと行きました。バェェの上で地図を広げたポンポンは次の行き先を考えます。
「んーっと、青の次は黄色だから、次はオシーゲの大渦だ。ちょっと遠いなー。あ。今日はションシャンシャンの都の、おじじ様のお友達のおまじない屋さんのおばば様のところに泊めさしてもらおうか。バェェ、もういい?」
「バェェェェ」バェェは満足そうにボヨンボヨンとしました。
「じゃあ、東に行って!ションシャンシャンの都に行くよ!」
「バェェ!!」
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