第21話・ドラゴンの涙粒が宝石になって私の家まで飛んでくる。

ポンポンとバェェはサンサーン火山に行く前に、コンコルド鉱山に立ち寄りました。

「ドワーフのおじさん、おばさん、こんにちは。」

「ああ、魔法使いのおじょうちゃん、こんにちは。」

「火山の噴火は相変わらず?」ポンポンはドワーフ達がまだ火事で困っているか心配していました。

「おじょうちゃんが言っていた通りに水瓶を置いたらだいぶ早く消せるようになったよ。」

「噴火は前よりひどくなっているけどね。」

ドワーフ達はかたまってウンウン言っています。

「そっかー。あたし、これから火山に行ってくるから、なんでそんなに噴火するのか調べてみるね。」


サンサーン火山の中への入口は、サンサーンの湖がある所の反対側の山の中腹にありました。火山は入口に近付いただけでもとっても暑くて、ポンポンもバェェもいっぱい汗が出てきました。

「バェェ、暑いね。あんた大丈夫?なくなっちゃわない?」

「バェェェェ~」バェェはいつもより舌をダラっとたらして、少しだけ目を回しています。

「バェェは外にいた方がいいんじゃない?」ポンポンはバェェがとけちゃうかもしれないと心配になってきました。

「バェ?バェェェェ!!!」バェェは体を左右にゆすって、何回かまばたきをしました。どうやらバェェは一緒に中についてくるようです。

「どうしてもムリそうだったら、すぐ言うんだよ?」

「バェ!」

ポンポンとバェェは火山の中に入って行きました。中はとっても広くて、壁に沿ってグルグルと一本道になっています。底の方を覗いてみると、とっても赤いマグマが池みたいになっていて、その真ん中にまるい地面と、そこまで行ける細い道が残っていて、そこに赤いドラゴンが一匹いました。

ポンポンとバェェはドラゴンのところまで行ってみることにしました。一本道はとっても細くて、大人だとすれ違うこともできないくらいだったので、ポンポンとバェェは横ではなく縦に並んで進みました。道には石がたくさん落ちていて、ポンポンはその石につまづかないように注意しながら壁から手を放さないようにして少しずつ降りて行きました。

「バェェ、大丈夫?」ポンポンが振り返って見てみると、なんとバェェは顔が3つに減っていました。いつもだったら5つはあります。

「バェ…」バェェは舌をベロベロ出しながら、なんとか返事をしました。

「大変!バェェ、ちっちゃくなってるよ!」

「バェ…?バェェ!!」バェェも自分が小さくなっているのに気付いてビックリしましたが、もう一度何回かまばたきをして、「バェ!」と、しっかり言いました。

やっぱりバェェは最後まで一緒に行くようです。


そうこうしているうちに、一番下にいるドラゴンのところまで到着しました。

「ドラゴンさん、こんにちは。」

「君、だあれ?」

上から見たときはわからなかったのですが、ドラゴンは大きな目から大きな涙粒を流して泣いていました。

「あたしはポンポンだよ。こっちのモコモコはバェェ。暑くて半分になっちゃってるけどね。ドラゴンさん、どうしたの?」

「ボク、こないだ卵を産んだの。とっても久しぶりに産んだから、すごく大切な卵なんだ。この卵はずっと温めていなくちゃいけないんだけど、見てごらん、ボクのお腹の下。」そう言ってドラゴンは少しだけ脚をどけて、ポンポンが見やすいようにしました。するとそこには大きい卵がひとつと、卵の半分くらいの大きさの宝石がたくさん置いてありました。

「卵と宝石だね。」ポンポンは見たまんま答えました。

するとドラゴンはまた涙をこぼして、それがマグマの中に落ちました。ポチャンと落ちた涙粒は、すぐに跳ね返って壁沿いの細い道にコロンと落ちました。それは道に落ちている石と同じようですが、よく見ると、それはひとつひとつ宝石みたいにキラキラしていました。

ポンポンは、その宝石みたいな石をひとつ拾ってドラゴンに言いました。

「ドラゴンさん、これって宝石みたいだね!」

「宝石だよ。」ドラゴンは泣きながら答えました。「ドラゴンの涙はマグマに落ちて跳ね返ると宝石になるんだ。ドラゴンの涙の宝石はとっても珍しいんだよ。」

「珍しいの?いっぱいあるよ?」ポンポンは宝石を見まわして言いました。

「それは、ボクがいっぱい泣いているからだよ。ボクはここでじっとして卵を温めなきゃならないのに、宝石もいっぱいあるから、とっても狭くて身動きが取れないんだ。それで悲しくなって泣いちゃうんだけど、そうするとまた宝石が増えてってまた泣いてしまって宝石が増えていって、どんどん狭くなっていくんだよ。」

そう言ってドラゴンはまた涙を落としました。今度はとっても大きな涙粒だったので、マグマに落ちて跳ね返った宝石は一本道に落ちずに、そのまま高く飛んで、火山の噴火口から外に飛んで行ってしまいました。

そうです。ドワーフの家を燃やしていた火の粉の正体はドラゴンの涙粒だったのです。

こうなったら、ドラゴンもかわいそうだし、ドワーフの人達も困っているし、このままだと赤色も手に入らなそうなので、なんとかドラゴンを泣き止ませなきゃなりません。

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