第27話・都の占い師のおばばの予言の的中率は高い。
二つ目ののろし台についた時には、陽が少し傾いていましたが、今は夏なので、夕焼けの時間までは確かにまだたっぷりありそうでした。
ポンポンは二つ目ののろし台の横の山小屋をノックしました。
「こんにちは。おばあちゃん、二つ目ののろし台の魔女でしょ?一つ目ののろし台のおばあちゃんが、このお菓子を持ってけって言ったから持ってきたの。」
そこには一つ目ののろし台の魔女とよく似たおばあさんがいました。
「おや、すまないねえ、お嬢ちゃん。ああ、これはあたしの大好きなお菓子なんだよ。どうもありがとうね。」
「どういたしまして。あたしもう行くね。早くしなきゃ、山が桃色になっちゃうの。」
「おや、そんなに急いでどうしたんだい?」二つ目ののろし台の魔女はとってもとっても不思議そうな顔をしました。
「あたし、山がいちばん桃色になる時に一つ目ののろし台と二つ目ののろし台の間に行かなきゃならないの」
「あんたにもこのお菓子を食べていってほしかったんだけど、どうやら急いでるみたいだし、引きとめちゃ悪いね。」
「そうなの、ごめんなさい。」
「いいんだよ。だけど、夕焼けまでならまだまだたっぷり時間はあるよ。すまないけど、三つ目ののろし台にいる妹のところまでこの飲物を持って行ってくれないかい?」
「え…今から?」ポンポンはちょっと嫌な顔をしました。
「三つ目ののろし台にいる妹は、この飲物が大好きでね。一つ目ののろし台の姉のお願いを聞いてくれたあんたなら、あたしのお願いも聞いてくれるかと思ったんだよ。なんせ、夕焼けまでまだまだたっぷり時間はあるからね。ここから三つ目ののろし台はほんの目と鼻の先くらい近いんだよ。」
そう言って二つ目ののろし台の魔女はとっても悲しそうな顔でさめざめと泣き始めました。
そんな風に言われると、ポンポンはなんだかとっても悪いことをしている気分になってきてしまい、三つ目ののろし台の魔女に飲物を届けに行くと言ってしまいました。
「すまないね。お嬢ちゃんとバェェちゃんにはお礼をしたいから、また帰りにあたしんとこに寄っとくれよ。」
「うん…時間があったらね。」
ポンポンは大急ぎで三つ目ののろし台の魔女の山小屋まで行きました。
山小屋についた時には陽はだいぶ傾いていましたが、夕焼けの時間には少し早いみたいなので、ポンポンはほっとして三つ目ののろし台の横の山小屋のドアをノックしました。
「こんにちは。おばちゃん、三つ目ののろし台の魔女でしょ?二つ目ののろし台のおばあちゃんから飲物だよ。」
「あ、ああ、おや、すまないね、お嬢ちゃん。」一つ目ののろし台と二つ目ののろし台の魔女にそっくりのおばあさんが息を切らしながら言いました。あんまりゼーゼー言ってるので、ポンポンは少し心配になりました。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「その飲物を、このコップについどくれ。」
三つ目ののろし台の魔女はポンポンがコップにそそいだ二つ目ののろし台の魔女からもらった飲物をゴクゴクと一気に飲んでしまいました。
「ふう。」三つ目ののろし台の魔女は、一息ついてからポンポンに言いました。
「お嬢ちゃん、もう遅いから今日は泊っていきなさい。」
「あたし、すぐに一つ目ののろし台と二つ目ののろし台の間に行かなきゃ。それに夕焼けまではもうあんまり時間がないから急がなきゃないの。」
「そうは言っても、もう陽が沈んじまうよ。見てごらん。」
「え!?」ポンポンとバェェはビックリして窓から外を見てみました。たしかに外はもう夕焼けで赤くなっていて、もう間もなくいちばん桃色になる時間になってしまいそうです。
「えっ、さっきまでまだ青い空だったのに!」
「バェェェェ」
「ああ、山は陽が落ちるのが早いからね。」
三つ目ののろし台の魔女は、歯を出してニッと笑いました。「今から行ったって間に合わないよ。真っ暗になっちまう。今日は泊って行きなさい。」
「うん…」
「バェェ…」
ポンポンとバェェはなんだかすっかりくたびれて今日は三つ目ののろし台の魔女の言う通り泊まらせてもらうことにしました。
実はこののろし台の魔女、ションシャンシャンのキンティールが言う通りあんまりいい魔女ではなくて、それどころか、とっても意地悪な魔女でした。
というのも、こののろし台の魔女、実は3人ではなく1人なのです。
ポンポンがのろし台からのろし台まで移動するよりも早く次ののろし台に来ていたので三つ目ののろし台に来た時にとても息を切らしていたのです。
そして、この魔女はとっても意地悪なことに、ポンポンのことを引きとめただけでなく、魔法を使って夕焼けの時間を早めてしまったのです。
キンティールの不安が的中しましたね。
翌朝、ポンポンとバェェは今日こそ夕焼けの桃色の時間に間に合うように、のろし台の魔女から何をお願いされても、断ってしまおうとうなづき合いました。
「おばあちゃん、泊めてくれてありがとう。あたしもバェェももう行くね。」
「あいてててててて」のろし台の魔女は背中をたたきながらポンポンに言いました。
「お嬢ちゃん、すまないけど、ほんの1時間ばかしでいいから背中をさすってくれないかい?昨日あんたにあたしのいつものベッドをゆずっちまったもんだから、あたしは普段寝ない方のベッドを使ったんだよ。そうしたら、慣れないせいか起きたら背中が痛くてね。」
そう言われたらポンポンは断ることができなくなってしまいました。
「1時間だけだよ?」
「ああ、1時間だけ頼むよ。まだ朝だから、今日はたっぷり時間があるからね。」そう言って、のろし台の魔女は歯を出してニッと笑いました。
のろし台の魔女の背中を1時間さすったポンポンは今度こそ引きとめられないように勢いよく立ち上がりました。
「じゃあ、おばあちゃん、今度こそあたし行くね。」
「ああ、そしたらこのお菓子を二つ目ののろし台の姉に届けておくれ。ほんの通りすがりにね。」
「えー…」ポンポンはちょっと嫌な顔をしました。
「二つ目ののろし台の姉があたしに飲物を持たせてくれたろう?あたしも二つ目ののろし台の姉に何かお礼がしたいんだよ。普段は足が悪いもんだからちっとも会いに行けないからねえ。お嬢ちゃん、ほんの通りすがりなんだし、頼まれてくれんかね?」
そう言ってのろし台の魔女はさめざめと泣きました…いいえ、泣きまねをしました。
「うーん…、いいよ。通りすがりだしね。」
のろし台の魔女の泣きまねに気付かないポンポンは、またのろし台の魔女の意地悪に引っかかってしまいました。
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