第51話・トロトロした鏡に吸い込まれ、望みを叶える準備をする
「ピョンピョン!!」と、ヌボチが呼ぶ声もまるで耳に入っていないかのように、ピョンピョンはぴょこんぴょこんと跳び跳ねて、あっという間にポンポンの目の前にやってきました。
「えっ、ピョンピョンちゃん、大丈夫!?」
「バ、バェ…。」
ポンポンとバェェもピョンピョンの突然の行動にとってもビックリしました。
ピョンピョンは、ポンポンにもバェェにも何も答えず、ジっとポンポンのことを見ていたかと思うと、次の瞬間には、ポンポンが手に持っていたアメーリアの祠とサンボーラの祠の鍵を、パクっと一口。大きな口でひとのみにしてしまいました。
「ピョンピョンちゃん!なにしてんの!?」
そんなポンポンの怒鳴り声もおかまいなしに、ピョンピョンはふわっと浮かび上がり、2つの長い耳をクルクルと横に動かして、天井の金色のでっぱりの鍵穴のまわりをサワサワと優しく何度かなで始めました。
それからピョンピョンはポンポンの目の前に静かに降りてきました。
まだフワフワと浮かんでいます。
天井の鏡は鍵穴のでっぱりが消えて、ピョンピョンが耳でなでたところだけ、鏡とは違う、トロトロの膜のようになっていました。
ピョンピョンは口をいっぱい大きく開けて、1本の金色の鍵を出しました。
金色の鍵は、フワフワとただよって、ポンポンの手の中におさまりました。
鍵の大きさは、ちょうどアメーリアの祠とサンボーラの祠の鍵を2つ一緒にくっつけたくらいです。
サンボーラの祠の鍵はもともと金色でしたが、それよりも、もっともっと輝く金色をしていて、鍵の上には大きくて真っ赤なハートが1つついていました。
それからピョンピョンは、ポンポンを見つめ、静かに言いました。
「色の魔法使いポンポンよ、ついてまいれ。」
それはいつものピョンピョンとは別の人のような話し方と声をしていました。
ポンポンもバェェもロロさんもヌボチも、みんな不安そうな顔をしています。
ピョンピョンはそれからまたふわっと浮かび上がり、天井の鏡のトロトロの膜の中に吸い込まれていきました。
「ピョンピョン!!」ヌボチがピョンピョンを呼んでも、やっぱり聞こえないみたいです。
「バェェ、ロロさん、ヌボチ、あたし行ってくるよ。
ピョンピョンちゃんのことも心配だし。それに、この上がきっと太陽にいちばん近い広間だと思うんだ。」
ポンポンは本当はとっても不安でしたが、勇気を出すように何度もうなづいて、両手をグッと力いっぱいにぎりました。
「ポンポン様!私もご一緒したいところですが、この先は選ばれた者しか行けないのでしょうね…。
ご無事で!必ずご無事でお戻りください!!」
ロロさんは今まででいちばん泣いていました。
「ロロさん、また泣いてるの?大丈夫だよ。
あたし、まだまだいっぱいやることあるし、ロロさん、あたしの伝記を書いてくれるんでしょ?」
ポンポンはロロさんの顔を覗き込んで言いました。
「はい!この上の階がどんな様子かおしえてくださいね!」
ロロさんがハンカチで涙をぬぐいました。
「ポンポン、ビャンビャンがピョンピョンを神殿に連れていったのは、色の魔法使いが来たときのためって言ってたんだ。
きっとピョンピョンにはなにか色の魔法使いのための使命みたいのがあると思う。」
ヌボチがピョンピョンを探すように天井を見上げました。
ポンポンも一緒に天井を見上げます。
「うん…。あたしもそう思う。
これが終わったら、元のピョンピョンちゃんに戻ってくれたらいいんだけど…。」
「必ずピョンピョンを連れて戻ってくれ!」
ヌボチがポンポンの両手をギュッとにぎりました。
「うん!!」ポンポンも力強くうなづきました。
ポンポンは、ロロさんが背負っていたドラゴンが作ってくれた色をまとめる玉を背負ってからバェェに天井の鏡のトロトロになっているところまで連れていってもらいました。
「バェ…バェ…」
バェェは心配そうに5つの顔でポンポンのことを見ています。
ポンポンはバェェを見てクスッと笑いました。
「大丈夫だよ、バェェ。
そうだ、戻ったらね、メリーベール村の近くの沼に連れてったげる。立派な苔がいっぱい生えてるとこなんだよ!」
「バ、バ、バ、バ、バェェェェ!!!!」
バェェがフルフルっと少しだけふるえました。それからヨダレがちょっとだけたらしています。
「じゃあ、行ってくるね!」
ポンポンは天井の鏡のトロトロのところに両手をあててみると、吸い込まれるように天井の中に入っていきました。
ポンポンが入った鏡の中の部屋は、ゴマーベールの塔のヌボチの部屋よりも少しだけせまい、まあるい部屋でした。
部屋の真ん中ににはどこまでも上にのびていくグルグルした螺旋階段があります。
ピョンピョンは、その螺旋階段のいちばん下の真ん中でポンポンのことを待っていました。
「ついてまいれ。この先に、そなたの望みしものがある。」
ピョンピョンはやっぱりいつもと違う別の人のような話し方と声でそう言い、それからフワーっと浮かんだかと思うと、あっという間に遥か上、螺旋階段の上の上までまっすぐ飛んでいってしまいました。
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