第52話・わたしの旅を一段ずつかみしめて、羽ばたく蝶を捕まえにいく。
ポンポンはピョンピョンのあとを追って螺旋階段を登り始めました。
螺旋階段の一段目は、とっても黒い色で、足を乗せると吸い込まれそうなくらい黒い色をしています。
ポンポンはとってもこわかったのですが、その階段は足がふれたところから小さな星屑が少しだけ飛んで行くので、ポンポンはすぐにこわいのを忘れてしまいました。
階段の、すぐ次の段を見てもわからなかったのですが、だいたい二十段くらい登ったところで、ポンポンは振り返ってみました。すると、一段目は黒い黒い色をしていましたが、二段目、三段目と、わずかずつ色が薄くなっていって、いろいろな種類の黒色になっていました。
だいたい百段くらい登ったところで、階段は突然青色になりました。その青色も、黒と同じようにだいたい百段くらいいろいろな種類の青色になっていました。
青色の次は黄色。その次は茶色。その次はみどり色…と、だいたい百段ずつポンポンが集めた色の順で階段の色がかわっていました。
ついに白い階段の最後の一段を登ったとき、螺旋階段の真ん中に透明なガラスみたいにキラキラしたドアがあらわれました。
ドアには鍵穴がついていたので、ポンポンはピョンピョンが先ほど口から出した金色に赤いハートのついた新しい鍵をさしてみました。
ドアはカチリと音をたてて鍵を開けて、音も立てずにフワッとドアが開きました。
ドアの先は、たしかに先代の色の魔法使いが言った通り、太陽に最も近い広間で、世にも稀な美しい部屋でした。
部屋は広間の名にふさわしくとっても広い部屋で、はしからはしまで走ったら、きっと息が切れてきまうほどです。
天井はそれほど高くないのですが、屋根は透明になっていて、何本も細いすじが入っていて、まるでお花のように見えます。
部屋中、キラキラした金色と銀色の粉がたくさん飛んでいて、その粉は、肌にふれると、不思議と幸せな気持ちがします。
それから部屋の真ん中にはアメーリアの祠やサンボーラの祠にあった玉を置くための台座が1つだけポツンと置いてあって、その上にピョンピョンが立っていました。
「色の魔法使いポンポンよ、ここにそなたの持ってきた七色の玉を置くがよい。」
そう言ってピョンピョンはフワッと台座の上に浮かび、宙に浮かんだままクルクルとまわり始めました。
ポンポンはピョンピョンの言うとおり、七色の玉を台座に乗せました。
それからピョンピョンは、クルクルとまわるのをやめて、七色の玉の上に静かに乗りました。
そして突然ピョンピョンは、立派な前歯を七色の玉にむかってツルハシのように振り下ろしました。
ポンポンはあまりのことにビックリして声も出せません。
ピョンピョンが前歯を立てたところは当然傷になっていましたが、それはただの傷ではなく、鍵穴のかたちになっていました。
ピョンピョンはぴょこんとジャンプして床におりると、コロコロと台座とポンポンのまわりを転がって歌い始めました。
七色・鏡・光を映す
星のかけら
太陽のしずく
七色・鏡・光を掴む
銀の鍵
金の鍵
七色・鏡・光を描く
心のかたち
丸い結晶よ
七色・鏡・光をかざす
ひとつにあわせ
赤き心を
七色に込めよ
七色をひらけ
歌い終わってもピョンピョンはなおも転がり続けます。
ポンポンはピョンピョンの歌の通り、七色の玉の鍵穴に金色に赤いハートのついた鍵をさしこみました。
すると七色の玉はパカッと2つにわかれ、中から世にも美しい無数の七色の蝶々が透明の屋根にいっせいに飛んで、屋根を通り抜け空の彼方に飛んでいきました。
どのくらいたったでしょうか。
七色の玉から全部の蝶々が出ていって部屋の中はシーンとしています。
ピョンピョンももう転がるのをやめていました。
ポンポンには、飛んでいった蝶々が戻ってくるとわかったのでしょうか。
ポンポンは色の杖を空に向けて、高くかかげて持ちました。
すると空から蝶々ではなく、無数の色の粒が降り注いで、その全てがポンポンの色の杖に入ってしまいました。
屋根は透明だったのが、色の粒が降ってきたせいか、いろんな色が細かいすじに仕切られ、さっきよりもきれいな、本物の花よりも、もっときれいな花のように見えます。
色の粒がすべて入った色の杖は、一度強い光を放ちました。
ポンポンはあまりのまぶしさに目をギュッとつむりました。
そっと目を開けてみると、茶色かった色の杖は真っ白になっていて、杖の上についた魔石が入ったあみあみの籠がなくなっていて、かわりに七色の大きい蝶々がひとつついていました。
その蝶々はとっても不思議な色で、見る角度によって金色にも銀色にも七色にも見える、もっときれいな色にも見える、ポンポンが今まで見た中でいちばんきれいな色をしていました。
あんまりきれいだったので、ポンポンは一雫の涙を落としました。
それはそれは大きな涙粒で、ポタッとポンポンの足元に落ちました。
そして波紋のように広がり、全てが真っ白い光に包まれました――――
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