第53話・最終話・色の始まりの物語

「…ック…モック……モック!!」

ピッピの呼ぶ声で目を覚ますと、お姫様もバェェも夢みたいにいなくなっていた。

あたしがキョロキョロしているとピッピが言った。

「あたしもさっき起きたら、お姫様もバェェもいないからビックリしちゃった。」

「夢、だったのかなぁ…?」

「でもね、本と鍵はまだあるの。」

ピッピがあたしに、バェェが出てきたツヤツヤした本と金色で大きいハートがついた鍵を渡してくれた。

本はピッチリ鍵がかかっていた。

「開けてみる?」

あたしはちょっとだけふるえる手で鍵をギュッと握った。

ピッピは黙って本をジっと見てからうなづいた。

「うん。開けよう。」

本に鍵をさしても、さっきみたいに光ったりしないけど、さっきと同じ、また勝手に開いて風が吹いた時みたいにパラパラパラーってめくられていった。

あたしとピッピは、またバェェが出てくるかとみがまえていたけど、ピタッととまったページから出てきたのは、煙でもバェェでもお姫様でもなくて、色とりどりのたくさんの蝶々だった。

あとからあとから、見たこともないようなたくさんの数のたくさんの色の蝶々が飛び出して、地下室のドアから外にいっぱい飛び出して、どこかに飛んで行ってしまった。

「ピッピ、行ってみよう!!」

「うん!!」

あたしとピッピはバタバタと駆け出して蝶々のあとを追って外に行ってみた。

するとそこには、いろいろなまぶしくて明るい色と空の色と土の色が混ざったような世界になっていた。

蝶々がふれたところが次々に色がかわっていっている。

葉っぱは空の色からみどり色に。

家の壁や屋根は土の色から黄色やら青色やらに。

花は空の色からピンク色やら赤色やら紫色に。

「すごいね!すごいね!」

「うん!すごい!こんなに色がいっぱいあったんだね!」

あたしとピッピは次々に色あざやかになっていく世界を目の前に、ドキドキで心臓が大きくなったり小さくなったりするのを感じた。



おしまい。

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色の始まりの物語 苔海苔 @kokemikoke

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