第38話・魔法使いの弟子の条件と不信感。

ピョンピョンは両方の耳をピンっと立てて、ポンポンをじっと見つめてから話し始めました。

「ピョンピョン、ずっとずっとずーっとまえから、あめりあのほこらにいた。

あるとき、あかちゃんすてられた。

ちいちゃいちいちゃいあかちゃん。

ピョンピョンそだてた。

あかちゃん、まりょくいっぱい。

あかちゃん、おっきくなった。

それ、ヌボチさま。

ピョンピョンとヌボチさま、いっつもいっつもいーっつもいっしょ。

あるとき、あめりあのほこらにビャンビャンさまきた。

ビャンビャンさま、ヌボチさまのまりょくいっぱい、でしにする。

ビャンビャンさま、あめりあのほこらにたまにきた。

ごまーべるのとーにヌボチさま、なんにちかつれてく。

ごまーべるのとーのヌボチさま、むらさきになってかえる。

しんぞう、むらさき。

すぐ、おこる。

すぐ、ものなげる。

でも、なんにちかでもどる。

またビャンビャンさま、ごまーべるのとーにヌボチさまつれてく。

ごまーべるのとーからもどるヌボチさま、むらさきなの、どんどんながくなる。

なつのはじめ、ビャンビャンさまいった。

ヌボチさま、これからごまーべるのとーにすむ。

ピョンピョン、いろのまほーつかいくるから、しんでんにいく。

ビャンビャンさまいった。

ピョンピョンしんでんいく、ヌボチさまよろこぶ。」

ポンポンとバェェは黙ってピョンピョンの話を聞いていました。

「なんで、司祭様がヌボチを弟子にしたの?」ポンポンは不思議そうに首をかしげました。

「ヌボチさま、まりょくいっぱいだ。」ピョンピョンが一回耳をピョコンとしました。

「えっ、だってヌボチは魔力がいっぱいなら魔法使いでしょ?杖だって持ってたし。それに、魔法使いを弟子にするのって魔法使いだけだよ。司祭様の弟子にするなら、ピョンピョンちゃんよりヌボチを神殿に連れてこないと変だよ。」

ポンポンは少しモヤモヤした気持ちで司祭様がいるドアの方を見ました。

「ピョンピョン、わかんない…。」ピョンピョンは少しビクビクした顔をして耳をタランとたらしました。

「でも、ピョン…ピョ…ちゃ……。」

ポンポンは話してる途中で突然、居眠りをする人のように頭をコックリコックリとし始めました。目もほとんど閉じています。両手を玉にあてたままでしたが、すっかり玉によりかかるようにして、もうほとんど寝てしまっているみたいです。

「バェ!?」突然のポンポンの変化にバェェはビックリしてボヨンボヨンと跳ねながらポンポンのそばにやって来ました。

「おまえ、どうした!?」ピョンピョンもビックリしてピョコンピョコンと跳ねています。

バェェとピョンピョンはポンポンに声をかけたり、まわりをうろうろと跳ね回ったりしましたが、ポンポンはいつまでたってもちっとも目を覚まさないので、司祭様なら、なにか分かるかもしれないので、ついに司祭様の部屋をちょっとだけ覗きに行ってみることにしました。

「バレたらおこられる。ちょっとのぞくだけ。」ピョンピョンが小声でバェェに言いました。

「バェバェ」バェェも小声で返事をしました。

司祭様のいるとなりの部屋はピッチリとドアが閉まっていましたが、ピョンピョンがバェェに乗ってドアノブに耳をかけ、静かに静かにドアを開けました。

すると、なんということでしょう!

司祭様は部屋にこもってポーツネール村の人たちがくれたバラの苗からつぼみを摘んでバラのジャムにつけてモシャモシャとおいしそうに食べていたのです!

バェェとピョンピョンはとってもビックリして、開けた時と同じように静かに静かにドアを閉めて、大慌てでポンポンのところまで戻りました。

「バェェ!バェェ!」

「おきろ!おきろ!」

バェェとピョンピョンがいくら呼んでもポンポンはやっぱりちっとも目を覚まさず、コックリコックリし続けています。

ついにピョンピョンはポンポンに体当たりをしました。もちろんポンポンが地べたに転がったらかわいそうなので、バェェは大慌てでポンポンの真下に行って、ポンポンをボヨンと乗せました。

祭壇の玉から手が離れた途端にポンポンはやっと目を覚ましました。

「え…?バェェ…?なに?あたし…玉…魔力、送んなきゃ…」

ポンポンはまだ眠いのか、寝ぼけたような声を出しました。

バェェはポンポンを乗せたまま司祭様のいる部屋に飛んでいきました。後からピョンピョンも大慌てでついて来ます。

ドアの前につくと、ピョンピョンはピョコンピョコンとバェェとポンポンの上に乗っていって、さっきと同じくらい静かに静かにドアを開けました。

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