第24話・シャチーハタの中にキャプレ6世とディアレ姫と朱の油。
モンタルタルの砂漠には大サボテンとオアシスがありましたが、ヨンヨンピーの浜辺には何もありませんでした。小人族の都、シクオースも見当たりません。ただ、ヨンヨンピーの浜辺にはいくつか小さな穴が開いています。
「キャプレ6世さん、この浜辺、穴しかないよ。」ポンポンはバェェの上でキョロキョロとしました。
「あの穴こそシャチーハタの巣なのです。シャチーハタは巣に入る時に、必ず額を穴の周りに押し付けるので、穴の周りに少しへこみがある所が今シャチーハタがいる穴のはずです。」
「へこみ?あっ!あそこの穴のとこ、へこみがあるよ!」ポンポンが指差した穴にはその周りにへこみが3つくらいありました。
「そうです!バェェ殿、降りてください!」
「バェェ!!」
ポンポンはバェェから降りて、穴の前に立ちました。キャプレ6世はポンポンのスカートのポケットから降りてポンポンの足元に立ちました。。
「ではポンポン殿、リピスターリピマックスをお食べ下さい!体がシャチーハタの穴に入れるサイズになります!」
「うん…。」ポンポンはキャプレ6世に渡された砂糖粒みたいな小さな小さなリピスターリピマックスを食べました。あんまり小さかったので、噛むどころか口の中ですぐに溶けてしまいましたが、たしかに体がどんどん小さくなっていって、キャプレ6世と同じ大きさになってしまいました。
小さくなってみると、バェェは入道雲よりも大きく見えます。あんなに小さく見えていたシャチーハタの穴もとっても大きな洞窟に見えます。
「バェェは入れないよね…。」ポンポンはバェェに向かって大きな声で言いました。
「バェェは、ちょっと、ここで待っててね!!」
「バェェェェ」
バェェがボヨンと一回、強めに跳ねたので、ポンポンとキャプレ6世はシャチーハタの巣の穴の中に飛ばされてしまいました。
「うわー!!!」穴の中は入ってすぐ地下にのびていってたので、ポンポンとキャプレ6世はどんどんどんどん穴の奥の方に転がっていきました。
ドンッ!!!
ポンポンとキャプレ6世は何かにぶつかって、転がるのが止まりました。
「ポンポン殿、無事か!?」キャプレ6世は目が回ってフラフラした足でポンポンに近付いて来ました。
「いてててて…。うん、大丈夫だよ。」ポンポンも目が回ってフラフラしながら立ち上がりました。
「キャプレ6世さん、真っ暗でなんも見えないよ。」ポンポンはどこにいるか見えないキャプレ6世に言いました。
「お待ちくだされ。今、この、暗闇でも光る石を出しますから…ほら、明るくなりましたぞ!」
と、明るくなると、目の前にいるシャチーハタがまず目に入ってきました。
シャチーハタはキャプレ6世が歌った砂漠の歌に出てきたのと全く同じ、真っ黒な悪魔みたいでした。つぶらな瞳がふたつと、ギザギザな歯が見える横に開く大きな口、額には朱の油が出てくる三角形のでっぱりがあります。そのでっぱりだけは朱色で、あとは真っ黒な頭だけ大きい細長い体をしています。
「ポンポン殿!私の後ろに来てくだされ!!」
「う、うん!」キャプレ6世はポンポンをかばってくれました。
ところがキャプレ6世はシャチーハタに吹き矢を向けていますが、シャチーハタはつぶらな瞳をパチクリするだけで、ただ口を開けて、キャプレ6世とポンポンを見ていました。
「ねえ、キャプレ6世さん、シャチーハタって、危険なの…?」
「何を言うかっ!危険に決まっておろう!ディアレ姫を拐っていったのだ!危険に決まっておろう!」
「そうかなぁー…。」シャチーハタがおとなしそうに見えるので、ポンポンにはシャチーハタがバェェと似たようなもんに見えてきました。そこで、ポンポンはシャチーハタに話しかけてみることにしました。
「シャチーハタさん!あたしたち、ディアレ姫様に会いに来たんだけど、どこにいるか知らない!?」
「ポンポン殿!?」キャプレ6世はビックリしてしまいました。
でも、どうやらポンポンが正しかったみたいで、シャチーハタは「シューシュスターシューシュスター」と変な声を出して、ディアレ姫を呼んでくれたのでした。
「キャプレ6世ではないか!!」
シャチーハタの尻尾の方からディアレ姫が出てきました。
「姫様!!」キャプレ6世はディアレ姫の姿を見て、嬉しくて泣いてしまいました。
「そなたは…小人族ではないな?」ディアレ姫がポンポンを見て尋ねました。
「こんにちは、ディアレ姫様。あたしは色の魔法使いのポンポンです。キャプレ6世さんがリピスターリピマックスをくれたから小さくなったんだよ。」
「リピスターリピマックスを!?それは、キャプレ6世が、そなたに何か迷惑をかけたのではないか、ポンポン殿よ。」
「ううん。キャプレ6世さんは、すごく親切にしてくれたよ。ディアレ姫様にどうしても会いたいからって一緒に来たんだよ。」
「姫様、お迎えに上がりました!モンタルタルに帰りましょう!」キャプレ6世はやっぱり泣いたままディアレ姫に言いました。
「姫様がシャチーハタに連れ去られ、我等家臣がどれ程眠れぬ夜を過ごしたかお分かりですか?こんなにおやつれになって!おいたわしや!姫様、もう何も心配いりませんよ!さあ、帰りましょう!」
「帰らぬ。」ディアレ姫はあっけらかんと答えました。
「なっ!なんですと、姫様!!」
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