第42話・奇妙な問い合わせから専門家をつきとめる

トーワイラートーの町は学問の町です。研究家や科学者、発明家がいっぱいいて、町には美術館や博物館、研究施設、図書館があります。

トーワイライトーの町に住む人々は、珍しいものが大好きです。だから色の魔法使いで七色に輝く髪の毛のポンポンと、モコモコで顔が5つもあるバェェ、モコモコで長い耳とよく跳ねる足はあるのに手はないピョンピョンがトーワイライトーの町に着いた途端、3人のことを研究したいという人がたくさん集まってきました。

「あなたは色の魔法使いですよね?普通の魔法使いとは、何か違う生活をしているのですか?食べ物や飲み物はなにを?髪の毛はなんとも不思議な色をしていますね。少しだけ、いただけませんか?それは色の魔法使いの杖ですね?材料と宝石はなにを使用されてますか?」

「あなたの体はなにでできているのですか?とてもモコモコしていますね。綿でもなく、煙でもなく、なんとも不思議です。なぜ目と鼻と口が5つもあるのですか?それに、その鼻毛の生え方には法則性かなにかはありますか?あなたは何か食べるのですか?え?苔?なぜ苔なのですか?苔以外は食べないのですか?飲み物はなにを飲みますか?」

「あなたはウサギの一種なのですか?その耳はどのくらいよく聞こえるのですか?普通のウサギよりも大きな耳をしているので、聞こえもいいのですかねえ?その足も立派で良く跳ねそうですね。どのくらい跳ぶのか測らせてもらえませんか?それにその立派な前歯!どのくらい硬いものを噛めますか?ああ、あなたは話ができるのですね。生まれつき話せたのですか?それとも、いつからか言語を習得したのですか?」

ポンポンとバェェとピョンピョンは、あっちこっちから質問ぜめにされてしまい、すっかり目を回してしまいました。

このままでは質問されるばっかりで、日が暮れてしまいそうです。

「あの!あの!きいて!あのね!」ポンポンは、手をバタバタさせて、みんなの質問をなんとかさえぎりました。

「はい!なんでしょうか!?」

あんなにいっぱい質問をしてきたのに、みんないっせいに返事をしてポンポンが話すのを、ピタッと黙って待ち始めました。トーワイライトーの町の人たちは、質問をするのも好きですが、質問をされるのも大好きなのです。

「あの、あのね、あたし、七色の星の涙と、七色の太陽のほほ笑みを探しているの。それがあたしの杖に必要なんだけど、誰かなにか知りませんか?」

ポンポンは杖をみんなに見せて尋ねました。

すると、一人の若い女の人が、ずれ落ちたメガネを上げながらポンポンにこう聞きました。

「杖に必要、というのは、色の魔法使いである、あなたの持つ色の魔法使いの杖に必要ということでしょうか?」

「そうだよ!」ポンポンは女の人のほうを見てうなづきました。

「でしたら、町はずれに住んでいるロロさんが何か知っているかもしれません。

ロロさんは長年、色の魔法使いについて研究されていますからね。

ロロさんのお宅までご案内しますよ。」

女の人がもう一度、ずれ落ちたメガネを上げながら、そう言ってくれました。

「ほんとに!?ありがとう!!」

ポンポンとバェェとピョンピョンはぴょんぴょんボヨンと跳ねて喜びました。

この女の人は本当にいい人ですが、みなさんは、ポンポンたちのように、知らない人について行ったりしてはいけませんよ。


町はずれにあるロロさんのお家は小さなレンガのお家で、小さいのに、屋根がとっても大きなお家です。屋根からは草やら花やらがいっぱい生えていて、お家の壁は窓までツタで覆われています。

女の人が、ロロさんのお家のドアをノックしました。

「ロロさん、ロロさん、いますか?」

ロロさんは留守なのか、誰も出てきません。

「いないのか?」ピョンピョンがピョコンと一回跳ねました。

女の人は、ニヤッと笑ってこう言いました。

「いいえ、いないふりをしているんです。ロロさんは、もう何年も何年も家にこもっていますから、出かけているわけがないのです。すぐに出てきますよ。」

そう言って女の人はもう一度、ドアをノックしながら、大きな声でこう言いました。

「ロロさん、色の魔法使いをお連れしましたよ!

出かけているようでしたら、色の魔法使いは、私の家にお連れして、私の研究を手伝ってもらいますよ!」

「あたし、あなたの研究を手伝うの!?」ポンポンはビックリして女の人に尋ねました。

「私としては、そう望んでいますが、あなたにはそのお時間がないみたいですから、いつかあなたの気が向いたら手伝ってもらいたいですね。ただ、今こう言ったのは、そう言えばロロさんがすぐに出てくるからですよ。」

女の人は、またずれたメガネを上げてから時計を見て、ロロさんが出てくるまでの時間を計り始めました。

すると、あんなに静かだった家で、突然バタバタと走る音が聞こえてきたかと思うと、バタンバタンゴトンと、何かにぶつかったり、ひっくり返しているような音がしたかと思うと、バタンッ!!と、とても勢いよくドアが開いて、男の人が一人出てきました。

男の人はポンポンのことを上から下までまん丸い目でジロジロと見たかと思うと、突然両目から大粒の涙をボロボロとこぼし始めました。

女の人が時計から目を離し、ポンポンにこう言いました。

「わずか15秒で外まで出てきて、本物の色の魔法使いであるあなたを見て8秒で泣き始めたこの人こそ、色の魔法使いの研究家であるロロさんですよ。」

「ロロさん…。」ポンポンは、不安そうに女の人を見ました。

「ロロさん、そんなに泣いたりして、みっともないですよ!色の魔法使いさんも戸惑ってらっしゃる!私はもう帰りますからね。ロロさん、しっかりなさってくださいよ!」

そう言って、女の人は、またメガネを上げながら帰っていきました。

女の人に言われたからか、ロロさんはハンカチで涙をぬぐってから、ポンポンに深々とおじぎをしました。

「私は色の魔法使いについて研究しております、ロロと申します。」

ポンポンとバェェとピョンピョンは、ロロさんにつられて深々とおじぎをしました。

「あたしは、色の魔法使いのポンポンです。こっちのモコモコはバェェで、こっちのモコモコはピョンピョンちゃんです。」

ポンポンが自己紹介をしただけで、ロロさんはまた両目からダラダラと涙を流し始めました。

「ロロさん、大丈夫?何で泣くの?」

ポンポンはロロさんを見て、少しだけ顔を引きつらせました。

「申し訳ありません」ロロさんは、またハンカチで涙をぬぐって答えました。

「私はもう、何年も何年も長い間、色の魔法使いに会えることを夢見て研究をしてきたものですから、まさか、色の魔法使い自ら私に会いに来てくださるだなんて、それこそ夢のようでして…。

それも、あなたは私の想像していた通りの年の頃で、七色の髪の毛と色の杖を持ったお姿をしているので、まだ現実という感じがしないのです。そもそも私が色の魔法使いについて…」

「ロロさん!」

ロロさんの話がとっても長くなりそうだったので、ポンポンは先に自分の用件を言うことにしました。

「ロロさん、あたしね、七色の星の涙と、七色の太陽のほほ笑みを探しているの。なにか知らない?」

ポンポンの質問に、ロロさんはにっこりと笑ってから答えました。

「七色の星の涙と、七色の太陽のほほ笑みですね!もちろん知っておりますとも!と、それについてお話しするのは、お茶でも飲みながらにいたしましょう。

どうぞ、お入りください。」

ロロさんは、ポンポンとバェェとピョンピョンをお家の中に入れてくれました。

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