第41話・軽くなった頭でもたいした知恵がわいてこない。

「じゃあ、ピョンピョンちゃんは、まだあたしとバェェと一緒にいる?」

「うん。ピョンピョン、ポンポンてつだう。」ピョンピョンは耳をピョコンピョコンとさせました。

髪の籠に入れているバラの種が白を入れてから、いよいよ重くなってきたポンポンは、ポーツネール村に行く道すがら、ピョンピョンにこれからどうするかを尋ねました。

ポーツネール村に行った後にピョンピョンがゴマーベールの塔にいるヌボチに会いに行きたいと言うなら、送って行こうかとしたのですが、ピョンピョンはポンポンとバェェにお礼がしたいから、杖が完成するまで一緒にいると言ったのです。

「んー、でも色をまとめるって、どうゆうことだろうねー?」

ポンポンは重い頭を左右にゆすゆす揺すって考えました。

「ドラゴンは?」ピョンピョンがポンポンの顔を覗きこんで言いました。

「ドラゴン、いろのこと、いっぱいしってる。」

「あー!そういえば、サンサーン火山のドラゴンさんが色をくっつけれるって言ってた!」

ポンポンとバェェとピョンピョンは、はやくドラゴンのところに行けるように、ポーツネール村での用事をすますため、急いで飛んでいきました。


ポーツネール村のおばばに髪の籠をほどいでもらってバラの種がなくなったポンポンは、ほっとした顔をしました。

ポーツネール村の人たちは悲願である七色のバラの種がようやっと手に入ったと、とても喜びました。ポーツネール村の村長なんて涙を流して喜んでいます。

「色の魔法使いポンポンさん、どうもありがとうございました!我等ポーツネールの村人一堂、あなたにどのようにお礼をしたら良いのでしょうか!!」

「えー、いいよお礼なんて。」ポンポンは照れながら答えました。

「そこをなんとか!なにかお礼をさせてください!」

ポーツネール村の村長は泣き続けたままポンポンに詰め寄りました。

「えっと、じゃあ…。」ポンポンはビックリして、ちょっと後ずさりしました。

「あ!じゃあ、また今度、バラのジャムをちょうだい?ゴマーベールの塔の白くまさんもヌボチもバラのジャムがおいしいって言ってたし。また遊びに行くって約束したから、そんときにもらいにきてもいい?」

「はい!お安いご用です!最上級のジャムをご用意してお待ちしておりますよ!」

ポーツネール村の村長がようやっとポンポンに詰め寄るのをやめたので、ポンポンはほっと胸を撫で下ろしました。

「そうそう。ピヨーロール神殿の司祭様ね、にせものだったの!ゴマーベールの塔にいた悪い魔法使いが本物の司祭様のことを閉じ込めてたの。」

ポンポンは司祭様のことをポーツネールの村人たちに話していなかったことを思い出して、あわてて言いました。

「なんと!司祭様はご無事ですか!?」ポーツネール村の村長がまたポンポンに詰め寄りました。

「大丈夫だよ!大丈夫!悪い魔法使いは、あたしたちがやっつけたし、司祭様の縄はちゃんとあたしがほどいたもん!」

ポンポンもまた後ずさりしました。

「司祭様が、バラはちゃんと元に戻るって言ってたよ。」

「そうですか!重ね重ね、なんとお礼を申してよいか…!」

ポーツネール村の村長は感動したのか安心したのか、また涙を流し始めました。

ポンポンはまたポーツネール村の村長に詰め寄られるのはいやだったので、あわててバェェに乗りました。

「あたし、もう行くね!急いでドラゴンさんのとこに行かなきゃないの!」

ポンポンは、ピョンピョンもバェェに乗ったのをちゃんと確認すると、あわててポーツネール村をあとにしました。


「ぼく、ムリだよ?」

ドラゴンがまじめな顔でポンポンに言いました。

「ぼくは色と色をくっつけることは出来るけど、こんなにいっぱいの色はムリだよ。」

「えー、そうなんだ…。」

ポンポンとバェェとピョンピョンは、火山の暑さで汗をダラダラかきながらドラゴンの言葉にがっかりしてしまいました。

ドラゴンは、あんまりはっきり言いすぎたかと、ポンポンを気づかって、少し考えてからこう言いました。

「うんとね、魔法使いのことは、魔法使いがいちばん詳しいと思うよ?

それに、なにか方法がわかって、ぼくが手伝えそうなことだったら、いつでもまたおいでよ!」

「うん…ありがとう。おじじ様んとこに行ってみるね。」

ポンポンとバェェとピョンピョンはがっかりしたのと暑いのとで、フラフラと力なく火山から出ていきました。


ポンポンとバェェとピョンピョンはメリーベール村に戻ってきました。

おじじ様なら、きっと何か知っているはずです。

おじじ様は目を閉じて、気持ちよさそうにピョンピョンのモコモコした体をモミモミしながら言いました。

「そうさのぅ。色をまとめる…色をまとめる…昔、なぁんか聞いたんじゃがなぁ…。」

「ドラゴンさんも、色と色をくっつけるのはできるけど、こんなにいっぱいの色をまとめるのはムリだって…。」

ポンポンは少しだけくちびるをとがらせて、杖の魔石を見ました。

「あ!そうだ、おじじ様と仲の悪い魔法使いのビャンビャンって人ね、ピヨーロール神殿にいましたよ。」

「ビャンビャン・・・ビャンビャン?」おじじ様は目をつぶったまま、うんうんうなって、なんとか思い出そうとしました。

「そうです。ゴマーベールの塔に弟子のヌボチを置いて、あたしが来るのをピヨーロール神殿で待ってたの。」

「あー、そんな名前じゃったか。仲が悪いというより、なにかあると、あやつはすぐに、わしのせいにするんじゃ。

して、そのやり方がどうにも、小ずるくてな。今は神殿におったのか。なんでかわからんが、わし、あやつの名前をどうにも覚えられんのじゃ。」

「そっかー。すっごい怒ってましたよ。でも、杖の光でね、顔が半分とけちゃったの。突然消えちゃったけど、死んじゃったのかなあ?」

ポンポンはビャンビャーのことを思い出して、顔をしかめました。

「いやいや、また戻ってくるじゃろう。」

おじじ様があんまりピョンピョンをモミモミし続けていたので、ピョンピョンは気持ちよさそうにスヤスヤ眠ってしまいました。

「えー…ヤダなー…。」ポンポンはとってもイヤそうな顔をしました。

「まあ、杖が完成すりゃ、なんとかなるじゃろう。」

おじじ様はとってもニコニコして答えました。

「…おじじ様、色をまとめるのがなにか思い出せないんでしょ。」

ポンポンはあきれた顔でおじじ様をじーっと見つめました。

おじじ様はごまかすように咳払いをひとつして、言いました。

「星の涙とかなんとか…もうひとつあればどうとか…昔、キンティールのばばから聞いての。あのばばに聞けば、はっきりわかるじゃろう。」

「おじじ様!!」ポンポンは腰に両手を当てて、プリプリ怒っておじじ様にほっぺたを、ふくらませてみせました。

「…わし、色の魔法使いじゃないもん…。」

おじじ様が小さな声で答えました。

「おじじ様…。」

ポンポンは、大きなため息をひとつついてから、ションシャンシャンの都のキンティールに会いに行くことにしました。


「と、いうことで、キンティールのおばば様、星の涙と、もうひとつがなにか教えてください!」

キンティールも、おじじ様と同じように、目を閉じて気持ちよさそうにピョンピョンのモコモコした体をモミモミしながら言いました。

「あのおじじは、相変わらず人の話を覚えてないみたいだね。正しくは、七色の星の涙と、七色の太陽のほほ笑みだよ。この二つがあれば、色がまとめられるはずだよ。」

ポンポンとバェェは、ようやっとはっきりした話が出てきたので、ぴょんぴょんボヨンと飛び跳ねて喜びました。

「それで、キンティールのおばば様、その七色の星の涙と、七色の太陽のほほ笑みはどこにあるんですか?」

ポンポンとバェェは、期待のまなざしをキンティールに向けました。

キンティールは口を開いて、なにか言いかけましたが、言いづらいのか、口を開け閉めして、なかなかなにも言ってくれません。

「…キンティールのおばば様?」

ポンポンは、まさか…と思って、少しあきれた顔でキンティールをじーっと見つめました。

「…あたしゃ、色の魔法使いじゃないからねえ…。」

キンティールが小さな声で答えました。

「調べ物をするなら、トーワイライトーの町に行くといいよ。」

ポンポンは、キンティールも、おじじ様とかわんないなあと、大きなため息をひとつつきました。

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