第39話・好物のバラを食べる横でひそひそ小声のないしょ話。

司祭様はやっぱりさっきと同じようにバラのつぼみをモシャモシャおいしそうに食べ続けています。

ポンポンはとってもビックリして、目をまんまるくして、思わず両手で口をしっかりとおさえました。

ポンポンとバェェとピョンピョンは3人ともまんまるい目で見つめあい、一度うなづきあってからまた静かに静かにドアを閉めて、静かに静かに祭壇まで戻って、祭壇の下でコソコソと小声で話し始めました。

「え…ねぇ、あれ、司祭様…なにしてたの…?」ポンポンは口をおさえたまま言いました。

「バラ、たべてた」ピョンピョンがビックリした顔のまま言いました。

「バェ…」バェェもビックリした顔のままです。

「え…だって、あのバラの苗、ポーツネールの人たちが頑張って作ったんだよ?司祭様がバラが好きだからって…。食べるのが好きなの?…司祭様ってバラを食べるもんなの?」ポンポンはもう、顔が真っ青です。

「わかんない。ピョンピョン、しさいさましらない。」ピョンピョンはまだビックリした顔のままです。

「なんで?アメーリアの祠にいた時からたまに来てたんでしょ?」ポンポンは首をかしげました。

「ほこらきた、ビャンビャンさま。ピョンピョン、しさいさましらない。」ピョンピョンも首をかしげました。

「え?ビャンビャン様は司祭様じゃないの?」ポンポンとバェェはビックリした顔をしました。

「ビャンビャンさま、ごまーべるのとーからきた。しさいさま、いまいないいってた。」

「え…じゃあ、ビャンビャン様は司祭様じゃなくて、ゴマーベールの塔の、おじじ様と仲の悪い魔法使い…?」

ポンポンとバェェは顔を見合わせました。と、そこへ…

「ふん、メリーベールのじじから、わしのことを聞かされていたようだな」

ポンポン、バェェ、ピョンピョンが突然声をかけられて振り返ると、そこにはビャンビャーが立っていました。

ビャンビャーは不敵な笑みを浮かべています。

「わしこそが、この国で一番最強の白き魔法使いビャンビャーじゃ!」

白き魔法使いビャンビャーは、ポンポンたちを威圧するように両手を大きく広げて言いました。

「あれ?この国いちばんの魔法使いはおじじ様だよ?」ポンポンは首をかしげました。

「バェェ」バェェもコクコクとうなづいています。

「ふん!メリーベール村のじじなど、今のわしの足元にもおよばんわ!

たしかに一時はあやつの方が強かったかもしれん。色の魔法使いのお前が行ったくらいだからな。

しかし、あのじじはずっとあんな田舎の小さな村に籠っていたから、今となってはもうろくしているだろうよ!」

「じゃあやっぱりビャンビャンさんがゴマーベールの塔の悪い魔法使いなの?」ポンポンは少し、後ずさりしました。

「ビャンビャーじゃ!あのじじめ、相変わらずあることないこと吹いてまわっておるようじゃな!」

「えー、あんまり聞いたことないよ?名前だって、あたし今日初めて知ったもん。」

ビャンビャーはカッとなって怒鳴りました。

「あのじじはいつもそうじゃ!人のことをバカにしおって!!」

ポンポンとバェェはもう少し後ずさりしました。

「しかし、お前の色集めの旅もここで終いじゃ。お前はここで白を手に入れることができず死ぬからな。

どちらにしろゴマーベールの塔にいるヌボチの紫も手にすることはできんじゃろう。」

ビャンビャーはニタニタと嫌な顔をしました。

「えっ!あたし、ここで死ぬの!?」ポンポンはビックリして目を丸くしました。

「お前は知らんだろうが、お前のその髪は使い方によっては永遠の命の源になるんじゃ。それにお前が魔力を送り込んだその祭壇の玉からお前の魔力をわしが取り込めば、わしはメリーベール村のじじよりもはるかに強力な魔法使いとなるのじゃ。

それから、その髪には今、ポーツネール村のバラの種を入れておるな?それを食べれば、わしは世界最強になれるんじゃ!!」

「え、えー…やだよ。」ポンポンは顔をしかめました。「それにゴマーベールの塔ならもう行ってきたから、ヌボチが紫色をくれたよ。ヌボチとともだちになったの。」

「なんだと!?」ビャンビャーは顔を真っ赤にして怒りました。

「あの小僧、ちっとも役に立たん!ヌボチには、わしがわざわざ紫を体の中に入れてやって悪い心を育ててやっていたものを!お前のせいで全部台無しだ!!」

ドンッッッ!!!

それまで黙って聞いていたピョンピョンが突然ビャンビャーに体当たりしました。ピョンピョンが後ろから飛んできたので、ビャンビャーはゴロンゴロンと倒れてしまいました。

「おまえ、わるいやつ!ヌボチさま、かわいそう!!」

ピョンピョンはとっても怒った顔で体をふくらませて、祭壇の玉の横にピョコンと立ちました。

「ビャンビャンわるいやつ!このたま、ポンポンの!」

ピョンピョンが祭壇の玉の上にピョコンと乗ると、玉はピカーっと光って、その光はピョンピョンの体の中に入ってしまいました。

「やめろ、バカ者!!」ビャンビャーは慌てて杖をかまえました。

「その魔力はわしの物じゃ!こっちに来い!」

ビャンビャーが杖をひとふりするとピョンピョンの体がふわふわと浮かび、ビャンビャーの方にゆっくりと漂っていきました。

「うわっ!うわっ!うわっ!」ピョンピョンは宙に浮いたまま耳と足をパタパタと動かしました。

「ピョンピョンちゃん!」ポンポンも杖をかまえました。「ダメだよ!あたしの魔力返して!」

ポンポンも負けずに杖に力を込めると、今度はピョンピョンがふわふわとポンポンの方に漂っていきました。

「うわっ!うわっ!うわっ!」ピョンピョンはまた宙に浮いたまま耳と足をパタパタと動かしました。

「ぐぬぬ…こしゃくな!!」ビャンビャーが杖に力を込めると、またピョンピョンはふわふわとビャンビャーの方に漂っていきます。

「ダメー!ピョンピョンちゃん、こっちだよ!」ポンポンが杖に力を込めると、またピョンピョンはふわふわとポンポンの方に漂っていきます。

しばらく二人がそんなことをしているのをソワソワしながら見ていたバェェがピョンピョンにボヨンと体当たりしました。

「バェ!!」

「うわわ!!」

バェェに体当たりされたピョンピョンはポンポンの杖に向かってピョーンと飛んで行きました。

ピョンピョンはポンポンの杖に耳でつかまると、ピョコンと器用に杖の魔石の上に立って突然歌い始めました。


ピョーンピョコピョコンピョコン

ピョーンピョコピョコンピョコン

あーかのまーりょくー

あーおのまーりょくー

きーいろみーどりもーもいろー

ピョーンピョコピョコンピョコン

ピョーンピョコピョコンピョコン

とーびだーせほーら

まーほうのいーろー

ピョーンピョコピョコンピョコン

ピョーンピョコピョコンピョコン

ピョーンピョコピョコンピョコン

ピョーンピョコピョコンピョコン

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