第7話・ごっこ遊びのワクワク感を、明日の私の地図にして。
「ではポンポンよ、そなたが作った『色の始まりの物語』、あれに出てきた色を順に答えよ。」
「色ですか?まず、黒が出てきて、次に海と空の青、それから太陽と星の黄色、島の茶色に、草のみどり色、星の赤に、橙、桃、紫かな?ああ、それから白です。」
「うむ。では、それらの色はこの地図上のどこで取れるか申してみよ。」
「どこで取れるか?えっ?どこかで取れるんですか?」ポンポンは首をかしげます。
「どこでもいいから、そなたの思うままに申してみよ。取れる場所など最初っから決まっておらんしな。」
どこでも好きな場所に決めていいと言われ、ポンポンはごっこ遊びみたいなもんかな?と思い、少しワクワクしながら答えました。
「じゃーあ、まず黒は…バンパルネールの森です!バンパルネールの森はこの大陸でいちばん暗い森だから。どこか、奥のところに黒があります。
次に青色は、サンサーンの湖。サンサーンの湖はこの大陸でいちばん濃い青色と、いちばん薄い青色の湖なんですよね?この湖の真ん中の小島に青色があります。
太陽と星の黄色はオシーゲの大渦。渦の真ん中が目玉みたいでしょ?太陽がまばたきした時みたいに黄色が出てくるんです。
トンギース島は茶色。あたしの『色の始まりの物語』も茶色は島から生まれたから。よく分からない島だけど、きっとどこかにありますよ。
みどり色はクドゥリ苔塚。クドゥリ苔塚はこの大陸でいちばんみどり色だから。苔がかたまってるところの奥の奥のところにみどり色があります。
赤色はもちろんサンサーン火山です。火山は真っ赤だから。きっとドラゴンが卵と宝石と一緒に赤色を守っています。
橙色はモンタルタルの砂漠です。砂漠の砂って、茶色よりも赤い色だって、おばばが言ってたから。いちばん大きくていちばん立派なサボテンの下に橙色があります。
桃色はドールブラーイス山脈から取れます。山脈のいちばん急な崖のところで、いちばん夕日がピカピカに当たるところから桃色が取れます。
ゴマーベールの塔は紫色です。ここの魔法使いって、おじじ様と仲が悪いんでしょ?だったらきっと悪い奴ですよね。紫色は悪い奴の色なんです。
あとは白ですね。白はピヨーロール神殿です。神殿ってすごく真っ白なんですよね?多分、この大陸でいちばん白い場所ですよ。
こんな感じでいいですか?」
「うむ。まあ、そんなもんじゃろう。」と言ったおじじ様の顔はなんだかとっても嬉しそうです。それからおじじ様は少しだけ大きな紙を取り出しました。その紙はポンポンの両手を広げたのと同じくらいの大きさです。
おじじ様はテーブルの横の台の上にその紙を広げ、テーブルに置いてる地図を杖で2回コツンコツンと叩きながらなにやらブツブツと呟いて、先程の紙の上でも2回コツンコツンとやってからなにやらブツブツと呟きました。
すると、その紙の上に黒いウネウネした線がたくさんあらわれて、真っ白だった紙があっという間にアンギンザラー大陸の地図になりました。
「うわー!」ポンポンはビックリしながら声をあげました。
それからおじじ様は先程ポンポンが言った色が取れる場所を杖で叩いていきました。叩く時に黒だとか黄色だとか赤色だとかみどり色だとか、ポンポンが言った場所と同じ色の丸い点になりました。
「さて、ポンポンよ、この丸く色をつけた場所は、さっきそなたが言ったのと同じ場所じゃな?」
「そうです、おじじ様。」
「それでは、今からこの丸く色をつけた場所にさっき自分で申してた通りの順で行き、色を集めてくるんじゃ。」
「え?あたしが色を取りに行くんですか?」
「そうじゃ。そなた、自分でこの場所でこの色が取れると言ったじゃろ。」
「えーっ!!だって、こんな火山だとか砂漠だとか危ないですよ!!」
「しかしそなた、自分で決めた場所じゃろ。自分で決めた場所に取りに行かにゃ色を集めることはできんぞ。」
「え~……」もっと簡単な場所にしときゃよかったとポンポンはちょっとだけ泣きそうになりました。
おじじ様はそんなポンポンを気にせずに続けます。
「まず、色を集めるための杖を作らにゃならん。」
「杖ですか?おじじ様が持ってるみたいなやつですか?」
「カタチは好きにしてかまわん。その杖の元となる木をバンパルネールの森で取って来にゃならん。どのような杖にするかは道すがらしっかりと考えるがよい。出来るだけ具体的にイメージすることが肝心じゃからな。それから、そなたの杖は色の杖じゃからな。集めた色を留めておく魔石を付けにゃならん。」
(おじじ様の意地悪…なんだかやることがどんどん増えてってる…)
ポンポンがそう思った瞬間に、
コツンッ!
「いてっ!!」
またおじじ様に杖で叩かれちゃいました。おじじ様はなんでもお見通しなのです。
「その魔石の元となる宝石はコンコルド鉱山に取りに行くがよい。質の良い魔石を杖に付けることで、色の辞書の質も上がるからな。」
「色の辞書?」
「左様。色を集め辞書を作るんじゃ。これも色の魔法使いとしての大事な勤めじゃからな。」
「でもおじじ様、あたし、この村から遠くに行ったことないですよ?」
「何事も初めてはあるもんじゃ。」
ポンポンがまたちょっとだけ、くちびるをとがらせると、おじじ様が杖をさっと振りあげたので、また叩かれる!と、ポンポンは頭をおさえました。ところが、おじじ様はポンポンのことを叩かずに、なにやらブツブツと呟いて杖から白いモコモコした煙を出しました。
その煙はモコモコモコモコと大きくなって、なにか小さい声で言っています。耳をすませてみると、聞こえてきます。
「…バェェェ…」
「ばぇぇ?」
ポンポンが首をかしげると、声が大きくなりました。
「バェェェェェ!!!!」
「ばぇぇぇぇぇ~~~~!!!」
ポンポンの絶叫と同時にバェェが誕生しました。
「バェェじゃ。」
「バェェェェ」バェェはなんだか嬉しそうにボヨンボヨンと跳ねています。
「ばぇぇ…?」ポンポンが不安そうにおじじ様を見ます。
「バェェを供として連れて行くがよい。杖と魔石の元となる宝石を手に入れたら一度戻ってくるんじゃぞ。
さあ、ポンポンよ。色の魔法使いとしての旅立ちじゃ。行ってまいるがよい。」
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