第6話・苔塚のとなり村の少女がくちびるをとがらせる理由。
…おしまい。」
「………」
「どうですか?おじじ様!!」
おじじ様と呼ばれた魔法使いのような立派なおひげを生やしたおじいさんが、かかえていた頭をゆっくりと上げて、目の前に立つ目をキラキラさせた少女をじーっと見てから大きなため息をつきました。
「…ポンポンよ」
「はい!おじじ様!!」
「ポンポンよ、そなたの作る物語は、なぜこうも救いがないんじゃ?」
「…今回は気を付けましたよ?最後、空と太陽が黒のために涙まで流してますしね!」
この世界について少し説明をしましょう。
この世界には2種類の魔法使いがいます。
まずは先程頭をかかえていたおじじ様と呼ばれた魔法使い。ほうきで飛んだり、物を飛ばしたり、薬を作ったり、占いをしたりするよくいるタイプの魔法使いです。
そしてもう1種類がポンポンのような魔法使いです。ポンポンは別にお話を書く魔法使いではありません。ポンポンは色の魔法使いなのです。色の魔法使いはとっても珍しくて世界に1人しかいません。なぜかというと、色の魔法使いは死なないと新しい色の魔法使いが生まれないから世界に1人しかいないのです。
色の魔法使いは、その時いちばん魔力のある普通の魔法使いの家の玄関に突然現れます。突然現れるのになぜ色の魔法使いか分かるかというと、色の魔法使いは生まれてすぐ七色の髪をしているのです。ポンポンもきれいな七色の髪をしていました。
色の魔法使いはたった一人しかいませんから、全部一人でやらなけりゃいけません。
色のことをみんなが忘れないように『色の始まりの物語』を書かなくてはなりません。先程ポンポンが書いていましたね。それから、今ある色を正しい色のままにしておいてあげたり、新しい色を作ったり…色の魔法使いはけっこう忙しいのです。
何をかくそう、先程バェェから出てきて、モック(あの子の名前は実はモックといいます。)とピッピとお話していたお姫様こそが、このポンポンなのです。
今はまだポンポンがおじじ様のところで修行をしている大昔のことなので、ポンポンも話し方がだいぶ違いますね。
さてさて、お話に戻りましょう。
「まぁ~、これで良しとするか…」
おじじ様が渋々と真っ白なあごひげをなでながら言いました。
「やったー!!」ポンポンはぴょんぴょん跳ねて喜びました。
「おじじ様、『色の始まりの物語』が合格なら、もう新しい色を作ってもいいんですよね!?」
「まぁ~だじゃ、ポンポン」
「えぇ~」ポンポンはちょっとだけ、くちびるをとがらせます。
「新しい色を作る前に、今ある色を集めにゃならん。」
「はぁ~い」
「ポンポンよ、そこの棚から地図を一つ持ってまいれ。違う、それではない。奥から2番目にある1番大きい、そう、それじゃ、それじゃ。」
1番大きな地図はとってもとっても大きくて、ポンポンの背の2倍くらいの大きさがあります。ポンポンはヨタヨタと地図を持っていって、うんしょっとテーブルの上に乗せました。
おじじ様が魔法の杖をひとふりすると、地図がひとりでにテーブルの上で広がりました。
(最初っから、杖で持ってこればいいのに…)
ポンポンはこっそり、くちびるをとがらせました。
コツンッ!
「いてっ!!」ポンポンはおじじ様に魔法の杖で叩かれてしまいました。おじじ様はなんでもお見通しなのです。
「ごめんなさ~い」と、ポンポンはくちびるをとがらせたまま謝りました。
「ポンポンよ、この地図を見てみよ。これが何の地図か分かるか?」
「これは、この大陸、アンギンザラー大陸の地図です!」地図が好きなポンポンは元気に答えます。
「では、この地図に載っているものを説明せい。」
「はい!」ポンポンは、はりきって説明を始めました。
アンギンザラー大陸はちょっと横に長いほとんど四角みたいな形をしています。
上にサンピアーヌ海、下にカンドンゴラ海があります。
カンドンゴラ海から南に行くと、離れスミレ諸島があって、ここには怪魚伝説があります。
大陸の右上にはトンギース島。ここにはオシーゲの大渦があるので、トンギース島にはめったなことでは行けません。トンギース島のことを知る人はめったにいないのです。
大陸の真ん中には首都ションシャンシャンの都と大きな港があります。ここには今の王様であるゴードロンド大王がいます。
都から2本の川が流れていて、北にのびている川はユールーリの川。西にのびている川はユンユルガーの川です。ユンユルガーの川は大きな川なのでギームンナー大橋がかかっています。この2本の川によって、大陸は3つの地域に分かれています。
ユールーリの川とションシャンシャンの都から東側の地域は真ん中にドールブラーイス山脈がある少し寒い地域です。ユールーリの川の下流にヨンヨンピーの浜辺があり、この浜辺と山脈の間にアランドの村とサンボーラの祠があります。ドールブラーイス山脈から南には大きな湾があって、トーワイライトーの町とエドガールの町という2つの港町があります。
ユンユルガーの川から南の地域は真ん中にサンサーン火山がある暑い地域です。サンサーン火山のふもとにはコンコルド鉱山とサンサーンの湖があります。サンサーンの湖のすぐ近くにはアメーリアの祠。そこから南東に港町ポンプルー。ポンプルーの町から西に行くと、ガンガルゲンの崖と、トイトイトー岬、トイトイトー小岬。この2つの岬の間くらいにピヨーロール神殿があって、そこから北西に、順にポーツネール村、ゴマーベールの塔、トットッタ村があります。
ユールーリの川とユンユルガーの川に挟まれた地域には、ユールーリの川の下流、ヨンヨンピーの浜辺から川を挟んだところにシーラーの町があります。ここも港町です。この地域の真ん中にモンタルタルの砂漠とコントッタ山があって、そこから西にバンパルネールの森とクドゥリ苔塚、その間にポンポンが住む隠れ里メリーベール村があるのです。
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