第9話・七色の髪の毛はお願い事3回分。
妖精は今度はサンドイッチを両手でつかみ、お腹の顔と半分ずつ食べ始めました。ポンポンはとてもビックリして、ただ黙って妖精のことを見ていました。
お腹がいっぱいになった妖精がポンポンにたずねました。
「お前、なにしに森に来た?」
「木、木だよ…。杖に使う木を取りに来たの…。泉のとこに木がいっぱい生えてるでしょ?」
「ふーん。ここ、まっすぐ行ったら着く。」
そう言って妖精は藪の方を指差しました。とても進める道があるように見えない藪です。
ポンポンは藪を見てから、もう一度妖精を見ようとしましたが、そこにはもう妖精の姿はありませんでした。
「えー、妖精いなくなっちゃった…。ホントかなー?おばばが妖精はイタズラ好きだって言ってたし…。」
「バェェェェ」
バェェは苔をいっぱい食べたからか、少しだけ大きくてなっていました。そして妖精が指差した藪の方に「バェバェ」と言って体を揺らしながら進んでいきます。
「待ってよ、バェェ!」ポンポンはしかたなくバェェのあとを追いかけました。
バェェが先に行ってくれたので、藪はならされてだいぶ進みやすくなっていました。
しばらく進むと妖精が言っていた通りにギムナージュの泉が見えてきました。
泉は陽が当たってキラキラと輝いています。そのまわりには白くて細い木、うす茶色で太い木、濃い茶色で中くらいの太さの木、みどり色の木、橙色の木…いろんなキレイな木が生えています。
ポンポンはその中から中くらいの太さで、筋や節がいっぱいある少しウネウネした濃い茶色の木を選びました。
ポンポンはカバンからナイフを出して切ろうとしましたが、ナイフはポンポンが片手で持てるくらいの、草やパンを切るのにちょうどいい大きさなので、とても木を切ることができません。
「バェェ、どうしよう切れないや。」
「バェェェェ」
ポンポンとバェェは困ってしまいました。
するとそこに、白くて太い木の陰からさっきの妖精が顔を出し、ポンポンにこうたずねました。
「きのこ、もうないのか?」
「もうないよ。」
「ふーん。その木が欲しいのか?」
「うん。杖にするのにちょうどいいの。」
「切ってやろうか?」
「ホントに?」
「お前の髪の毛、少しくれたら木を切ってやる。」
妖精がとても気持ち悪かったのでポンポンはとってもイヤだったのですが、このままだと杖の木が手に入らないので、しかたなく髪の毛をナイフで少しだけ切って妖精に渡しました。
すると、ポンポンの髪の毛はナイフで切ったところが黒から七色になったのです。
「お前、色の魔法使いか?」妖精はポンポンの髪の毛を受け取り、お腹の顔と半分ずつ食べました。お腹の顔はポンポンの顔をじっと見ながらヨダレをいっぱい出しています。
「そうだよ。はやく木をちょうだいよ。」ポンポンはもう、妖精の方をなるべく見ないようにして言いました。
妖精は細長い指をとっても長くして、その指を木に引っかけました。するとバターを切るみたいに木が簡単に切れたのでした。
ポンポンは妖精に髪の毛をあげてよかったと思ったのですが、やっぱり妖精はとても気持ち悪いので、そのことは黙っていました。
妖精とお腹の顔はなにやら相談をしていましたが、ポケットから黒い液体の入った瓶を取り出してポンポンに渡しました。
「これ飲んで、この泉入ったら、どこでも行ける。」
「くれるの?」
「3回分だ。」
「ありがとう。ねえ、あたしコンコルド鉱山に行きたいんだけど、これ飲んで行った方がいいの?」
妖精がまたお腹の顔と相談をし始めました。
「コントッタ山とモンタルタルの砂漠とサンサーン火山を越えたら行ける。でも、お前の足ならこの森を出るの2ヶ月かかる。」
「そんなに?じゃあ泉から行くね。ありがとう、妖精さん。」
「バェェェェ」
「バェェ、行くよ!」
ポンポンはバェェを体に巻きつけて、妖精からもらった液体を瓶の3分の1だけ飲んで泉に飛び込みました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます