第10話・満天の夜空の中で私だけをみつけて欲しい。
バシャッ!!
ポンポンとバェェはずぶ濡れでコンコルド鉱山の入り口に立っていました。
突然あらわれたポンポンとバェェにドワーフの奥さんたちが驚いて大きい声を出しました。ドワーフの奥さんたちは互いに四角い体をぶつけ合って、1つの大きなかたまりみたいに見えます。ドワーフの奥さんたちは髪の毛がとっても多くてモジャモジャしているので、1つにかたまっていると、まるで大きな苔玉のようです。
とってもおいしそうな苔玉に見えたのでしょうね。
バェェが苔玉と間違えて、ドワーフの奥さんたちの頭に噛りつきました。
「バェェ!!ダメだよ!苔じゃないよ!!食べちゃダメだよ!髪だよ!ダメだよバェェ!!!」
「バェ?」
バェェは残念そうにドワーフの奥さんたちの頭から口を離しました。だけど、バェェが噛りついたので、ドワーフの奥さんたちの髪の毛はバェェのヨダレまみれになってしまい、ドワーフの奥さんたちはカンカンに怒ってしまい、ポンポンともバェェとも口をきいてくれなくなってしまいました。
と、その次の瞬間、
ドッカーン!!
サンサーン火山が噴火しました!
火の粉が鉱山までいっぱい飛んできて、ドワーフの家の屋根に火がつきました。
「わー!火事だー!火事だー!」
ドワーフの奥さんたちはとっても慌てて、また四角い体をぶつけ合っています。
「バェェ!どこ行くの!?」
バェェがどこかに飛んで行ってしまいました。このままだとドワーフの家が全部火事で焼けてしまいます。ポンポンはドワーフの奥さんたちに声をかけて井戸から水をくんで、火を消そうとしました。
ところが、火山から飛んできた火の粉なので、バケツの水をいくらかけてもちっとも消えません。
どうしよう…このままだとみんな焼けちゃう!と、ポンポンが思ったとき、そこに、さっきまでよりも2倍くらいの大きさになったバェェが戻ってきました。
バェェは火を消すために、口の中に湖の水をいっぱい入れてきたのです。
バェェが口から水を出すと、さっきバンパルネールの森で食べた苔も一緒に出てきましたが、あっという間にドワーフの家の火は全部消えました。
みんなとっても喜んで、もう誰もポンポンとバェェのことを怒っていませんでした。
そして、ドワーフの奥さんたちは、ポンポンにコンコルド鉱山に何をしに来たのかと聞きました。ポンポンは色の杖につける魔石の元となる宝石を探しに来たと言いました。ドワーフたちはもうポンポンにもバェェにも怒っていないので、鉱山に入って好きな宝石を持っていっていいと言ってくれました。
「いいのー?ありがとう!バェェ、やったよ!!」
「バェェェェ」
バェェはさっき水と一緒に苔を出したので、体が少し小さくなっていました。だから、ポンポンと一緒に鉱山に入ることができました。
鉱山は天井が低くて、とっても暗い場所です。どこまで行っても真っ暗かと思いましたが、奥に行くにつれ、壁や天井にキラッキラッと、たまに光るものがありました。宝石です。それは奥に進むほど増えていくので、まるでたくさんのお星様の見える夜空の中にいるような感じがします。
いっぱいキレイな宝石が見えたのですが、ポンポンは不思議と、自分の魔石になる宝石はまだ出てきていないと思いました。
そうしてしばらく進むと、ポンポンは突然ピタッと足を止めました。
「バェッ」あんまり突然だったので、バェェはポンポンにぶつかってしまいました。
「バェェ、あったよ!あたしの魔石の宝石だよ!」
ポンポンは右側の壁に埋まっている、少しだけ見えている透明な宝石を指差しました。
「ドワーフのおじさん、あったよ。これ、掘って?」
「この透明のかい?わかったよ。」
ドワーフがコンコンコンッと透明な宝石を掘って、ポンポンに渡してくれました。
それは、ポンポンの両手よりも少しだけ大きい、ほとんど四角のゴツゴツした宝石でした。
(これが、あたしの魔石になるんだ…。)
ポンポンはとってもドキドキしながら、宝石を持つ両手に少しだけ力を入れました。
さて、来るときはギムナージュの泉からあっという間に移動できましたが、帰りは歩いて行くしかなさそうです。
「せめて、メリーベール村に近いとこに橋がかかってたらいいのになー…」
ポンポンがため息をつくと、ドワーフがこれからトットッタ村まで行くから一緒においで、きっと川を越えれる方法があるから、と言いました。
トットッタ村はコンコルド鉱山から北西に行った場所、ユンユルガーの川の近くにあります。
「さあ、トットッタ村が見えてきたぞ。」と、ドワーフが言いましたが、村なんてちっとも見えません。
「村?どこに村があるの?大きな穴しか見えないよ?」
「その穴がトットッタ村なんだよ。」
トットッタ村は大きな穴の中にありました。その穴にはたくさんのはしごがかかっていて、いろんな所から下に降りれるようになっています。穴の中の壁には穴がいくつもあいていて、よく見るとその穴は1つ1つにドアがついています。トットッタの村人たちはそのドアがついた穴を家にして暮らしているようです。
大きな穴の真ん中は広場みたいになっていて、四角い大きな石のかたまりがいくつか置いてあり、トットッタの村人はその石を切ったり細工をしたりしているみたいです。大きな穴の中は一部が石切場になっているみたいで、大きくえぐれている部分があります。
ドワーフがトットッタの村人に声をかけました。
「おーい!トットロットさんはいるかい?」
「ドワーフのおっちゃんだー!トットロットさんなら、あそこで石を切ってるよ。」
「ああ、ありがとう。」と言い、ポンポンとバェェには少し待っていろと言って、ドワーフはトットロットさんのところへ行ってしまいました。
ドワーフが戻ってくるのを待っている間、ポンポンとバェェはトットッタ村の子供たちとお話しました。子供たちはトットッタの村人とドワーフ以外の人間をあまり見たことがなく、特にバェェを珍しがりました。
しばらくして、トットロットさんと話し終わったドワーフが戻ってきました。
ドワーフはトットロットさんと交渉して、鉱山の宝石をいっぱいあげるから、ユンユルガーの川に石の橋をかけてくれることになったのです。
「ホントに!?ありがとう!!」ポンポンとバェェはぴょんぴょんボヨンと跳ねて喜びました。
「火事を消してくれたお礼だよ。あの火山の火の粉でいっつも家が焼けちゃうんだ。」
「いっつも?」
「ここ最近は特にひどくてな。焼けた家を新しくしても、またすぐ噴火しちゃうんだよ。」
「そっかー。じゃあ、すぐ消せるように、大きい水瓶を用意しておいたら?そしたら井戸から水を汲むより早いよ。」
「そうか!なるほどなー。ありがとう!」
そうこうしているうちに、ユンユルガーの川に石の橋がかけられました。とってもじょうぶそうな橋です。バェェもたくさんお手伝いしたんですよ。
ポンポンとバェェはドワーフとトットッタの村人たちと別れてメリーベール村に帰って行きました。
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