第44話・ドラゴンの生唾の重みを頭で量る
「じゃあ、まずは離れスミレ諸島に行ったらいいの?」
ポンポンは全部の色のところが丸くふくらんで光っている地図をひろげて、ロロさんに尋ねました。
「いいえ。まずはポーツネールの村に行きましょう。そこで採れるバラの雫のことを調べに行かなくてはなりません。」
ロロさんはポンポンが色をとったところが光っている地図を食い入るように見ながら答えました。
「それって、七色のバラの種から採れる雫のほうがいいの?」
「七色のバラの種ですか!?」
ロロさんが地図からガバッと顔を上げてポンポンを見ました。
ポンポンは少しだけ後ずさりして、「ポーツネールの村のおばばがね、あたしの髪の毛を籠みたいに編んで、そこにバラの種を入れたの。全部の色が集まったときに、七色のバラの種になるんだって。
ポーツネールの人たち、すっごい喜んでたけど、いっぱい入れてたから、とっても重かったの。」
ポンポンは、バラの種を入れていた髪の毛の籠がどれくらいの大きさだったかを両手でロロさんに示しました。
「ああ!!私はなぜもっとはやくポンポン様に出会えなかったのでしょうか!?もし1日でもはやく出会えていれば、ポンポン様の行動をすべて私の記録に残し、あなたの伝記を書くことができたのに!!」
ロロさんが突然、空に向かって両手を大きく広げて叫びだしました。
ポンポンとバェェとピョンピョンは。ポカンとロロさんを見つめました。
ロロさんは一度、咳払いをして、「失礼しました」と言いました。
「バェ…」バェェに少し小突かれてから、ポンポンはハッとしてロロさんに尋ねました。
「じゃあ、ポーツネールの村に行けばいいの?」
「そうですね。今の時点ではバラの雫がどれ程あるかわかりませんから、足りなかったら追加して作ってもらわなければなりませんしね。
なんせ、ドラゴンの生唾1回分は最低でも必要みたいですよ。」
「なまつば?なまつば?」
ピョンピョンがピョコンピョコンと跳ねて尋ねました。
ロロさんは、人差し指を立てて、「大き目の樽1杯分だそうです。」と、言いました。
「すごいね…。」ポンポンは両手を大きめの樽くらい広げて言いました。
「ドラゴンは体が大きいですからね。」
トーワイライトーの町から、ポーツネールの村までは少し距離がありますので、バェェに乗って行くことにしました。
ロロさんは大人の男の人だからポンポンよりもずっと大きいので、バェェがポンポンとピョンピョンとロロさんを乗せても大丈夫か心配だったのですが、バェェはとっても力持ちなので、3人が乗ってもいつも通り「バェッバェッ」と言って、スイスイ飛んでいきました。
ロロさんは、バェェに乗っている間、ずっと、落っこちやしないかソワソワと落ち着かなくなってしまい、それでいて、緊張しているのか、ずっと黙っていたので、ポンポンとピョンピョンはこっそりホッとしました。
ポーツネールの村の人たちは、ポンポンたちを喜んで出迎えました。
七色のバラは普通のバラよりも成長がはやいみたいで、ポンポンが種を置いていってから、まだ何日かしかたっていないのに、もう蕾になっていました。
「明日にも咲くでしょう。」
ポーツネールの村の村長がやさしく七色のバラの蕾に触れて言いました。
「その七色のバラから採れる雫がほしいんだけど、もらえますか?」ポンポンが村長に尋ねました。
「雫ですか?」
村長の問いかけにロロさんが答えました。
「朝露がついたバラの雫が必要なのです。それがあれば、色の魔法使いの杖が完成するのですよ。」
ロロさんは、なんだか自分のことのように、得意気に言いました。
村長は、少し考えてからこう言いました。
「では…杖が完成する頃まで、また髪の毛にバラの種を入れてくださいますか?この七色のバラよりも、美しいバラの種になることでしょうから。
それならば、バラの雫はご用意いたしましょう。」
ポンポンは少しイヤな顔をしてからため息をつきました。
「前ん時より減らしてくれるなら、いいよ…。」
「ありがとうございます!!おばばや!色の魔法使いさんの髪の毛を編んでさしあげなさい!」
また村一番のおばあちゃんが、ポンポンの髪の毛を結い上げました。
今はもう、ポンポンの髪の毛は全部が輝く七色なので、それはそれはきれいな籠になりました。
また村人5人がかりで前の時よりも少しだけ少ない量のバラの種を入れました。
ロロさんは、奇跡的な瞬間に立ち会えたと泣きながら、髪の毛を編まれるポンポンの姿を絵に描いたり、文字にしたりしていました。
「雫はどのくらいあればいいですか?」
村長がポンポンとロロさんに尋ねました。
「樽一杯分だっけ?」ポンポンがロロさんの方を見ました。
「大きい樽、一杯分です。」
ロロさんは、ポンポンのことをいっぱい記録できたからか、とっても満足そうに、ご機嫌にそう言いました。
「朝露だけなので、10日程かかると思いますよ。」
村長も満足そうに、ポンポンの頭を見て、コクコクとうなづきながら答えました。
「じゃあ、離れスミレ諸島に行って、コンコルド鉱山に行って戻ってきたらちょうどいいかな…。」ポンポンは地図をひろげてブツブツと言いました。
「バェ!」
バェェがボヨンボヨンと跳ねたので、ポンポンとピョンピョンとロロさんはバェェに乗り込んで、離れスミレ諸島へと向かいました。
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