第30話・おばばが編んでくれたバラの種入りの七色の籠。
ポーツネール村はピヨーロール神殿とゴマーベールの塔の間にある小さな村で、村人たちはいろいろな色のバラを育てたり、コンコルド鉱山から採れた宝石を細工してピヨーロール神殿におさめたりして暮らしています。
ポンポンとバェェがポーツネール村に到着すると、村人たちが少しザワザワしてから、建物の中からポーツネール村の村長が転がるように飛び出してきました。村長はポンポンを見て、目を丸くして言いました。
「あなたのその髪の毛はもしや、色の魔法使いか!?」
「そうだよ。今、色を集めていてね、これからゴマーベールの塔に行くの。」
ポンポンがそう言うと、村人達がとてもザワザワしたので、ポンポンとバェェは少し落ち着かない感じがしました。
村長がポンポンに言いました。
「ゴマーベールの塔には悪い魔法使いがいます。塔の入口をわしらのかわいいバラを使って閉ざしてしまっているのです。」
「えっ!じゃあ、バェェで上から入れないかな?」
「バェェェェ」バェェはちょっと膨らんでから1回ボヨンとしました。
「それは難しいでしょう。塔の入口は下のバラで閉ざされた所にしかないはずですから。」
「そっかー。でも、なんとかなると思うから、行ってみるね!」
ポンポンはモンタルタルの砂漠の小人にもらった小さくなる薬のことを思い出してそう言いました。
「お、お待ちなさい!」村長が慌ててポンポンを止めました。「このジャム!わしらの作ってるこのジャムを食べれば、バラのトゲが刺さっても痛くなくなるから、これでゴマーベールの塔の入口まで行けますよ!」
「ありがとう。じゃあ、このジャム、食べてみるね。」
ポンポンがジャムの瓶を受け取って鞄にしまうのを見て、ポーツネールの村人たちは、ホッとした顔をしました。そして、村長がポンポンにこんなお願い事をしました。
「かわりと言ってはなんですが、あなたのその七色に染まった美しい髪の毛の中にバラの種を入れて欲しいのです。」
「髪の毛の中に?」ポンポンが首をかしげました。
「そうです。色の魔法使いの髪の毛を籠のように編んで、その中にバラの種を入れておくと、その種は七色のバラの種になるのです。わしらポーツネール村の悲願なのです!」
「んー…、いいよ。入れとくだけでいいんでしょ?」
ポンポンはまた、よく考えずに返事をしてしまいました。
「ありがとうございます!!おばばや!色の魔法使いさんの髪の毛を編んでさしあげなさい!」
村一番のおばあちゃんが、ボコボコと節くれだった指でポンポンの髪を結いあげ、七色とまだ少し残っている黒のキレイな髪の毛の籠を作りました。よく見ると、村の女の人たちはみんな同じ髪型をしているので、ポーツネール村の女の人はみんな髪の毛にバラの種を入れているようです。
できあがった髪の毛の籠の中に、村人5人がかりで大量のバラの種を入れました。
完成してみると、思ったより重たくて、頭がフラフラしそうなので、ポンポンは両手で頭をおさえました。
バラの種で大きくなった頭を両手でおさえたポンポンはバェェに乗って、ゴマーベールの塔までやってきました。ポーツネール村の村長が言う通り、たしかに塔の1階部分はいばらで閉ざされていて、とても入れそうにありません。近付いてみると、いばらで閉ざされた上のあたり、2階の下の所に小さな小さな入口が見えます。
「バェェじゃムリそうだねー。」
「バェェェェ」バェェはとっても残念そうです。
「でもこれ、バラのジャムでトゲが痛くなくなっても、バラの枝がいっぱいあるから、小人の薬を飲んで行った方がいいね。入口も小さいしさ。」
ポンポンは、ポーツネール村でもらったジャムを一口食べてから、モンタルタルの砂漠の小人にもらったリピスターリピマックスを一粒食べました。
すると、みるみる体は小さくなって、これならバラの枝の隙間を通って塔の中に入れそうです。
「バェェはここで待っててね!」ポンポンはバェェに向かって叫びました。
「バェェ!」バェェは、シャチーハタの穴の時のようにポンポンが飛んで行かないようにボヨンとするのを我慢しました。
バラのジャムのおかげで、バラのトゲは刺さってもちっとも痛くありません。だけど、トゲに引っかかると服がやぶけちゃいそうなので、ポンポンはなるべくバラのトゲをよけてウネウネと進み、塔の下まで辿り着き、バラの枝をよじ登って、塔の2階にある小さな小さな入口までやってきました。とっても小さな入口でしたが、リピスターリピマックスで小さくなった今のポンポンなら少しかがめば入れる大きさでした。
ドアノブの上と下にはひとつずつ鍵穴があります。上の鍵穴は金色、下の鍵穴は銀色です。ポンポンはすぐにピンときました。
「これ、きっと祠の鍵と一緒…」ポンポンはゴソゴソと鞄の中からアメーリアの祠の銀色の鍵と、サンボーラの祠の金色の鍵を取りだし、それぞれの鍵穴にさしてみました。ポンポンが思った通り、鍵はピッタリで、塔の2階のドアを開けることができました。
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