第29話・うんざりくたびれた日の空は赤色の直前、紫色の直前の桃色。
「バェェェェ!!!」
そろそろ1時間たつ頃に、バェェが大きな声を出したので、ポンポンはバェェのいる外を見ました。すると、いつの間にか、もうすっかり夕焼けの時間になっていて、もう今にも山がいちばん桃色になる時間になってしまいそうでした。
「大変!おばあちゃん、あたしもう行くね!」
「ああ、気を付けて行っといで。」
のろし台の魔女はまた歯を出してニッと笑いました。
このまま走ればなんとはいちばん桃色になる時間に間に合いそうだったのに、まさかすごい速さで山が一瞬で真っ暗になってしまいました。
「えっ…うそ…、なんで!?急に真っ暗になっちゃった!!」
「バェェェェェ!!!」バェェもビックリしてあたりをキョロキョロしています。
ポンポンが山小屋を出て行った後すぐに、のろし台の魔女がまた意地悪をして魔法を使って夕焼けの時間をうんと早くして夜にしてしまったのです。
ポンポンとバェェは一つ目ののろし台と二つ目ののろし台のちょうど真ん中まで来れたのに、いちばん桃色の時間にまた間に合わなかったし、のろし台の魔女から色々頼まれて、もうなんだか、疲れたし、悲しいし、悔しいし、とにかくうんざりしてしまって、座り込んで立てなくなってしまい、それからワーワー泣き始めてしまいました。
「うわ~ん!うわ~ん!」
「バェェェ~!バェェェ~!」
ポンポンとバェェはとってもいっぱい泣きました。いっぱい涙が出てきて、ポンポンは顔中涙でグシャグシャになってしまい、拭いても拭いても涙がいっぱい出てきます。
そのうち、そのたくさん出てくる涙は、キンティールにもらった耳飾りに1滴、2滴とついて、それが地面にポタっと落ちた瞬間、地面がパーッと明るくなって、地面も空もなんもかんもが全部明るくなりました。それからすぐに夕焼けのいちばん桃色であたり一面が染まりました。
ポンポンは涙とキンティールの耳飾りで、のろし台の魔女の、夜にする魔法をといてしまったのです。
ポンポンはいっぱい泣いて、なにがなんだか分からなくなっていたので、耳飾りのおかげだとは気づいていませんが。
とにもかくにも、山がいちばん桃色になる時間には間に合ったのです。
とってもとっても桃色で、赤色の直前、紫色の直前の桃色になった時、ポンポンは夕陽に向かって杖をかかげました。すると、太陽がひときわ強く光り、その光は、山のいちばん桃色に見える場所に刺さりました。
そしてその山に刺さった強い桃色は、山から跳ね返ってポンポンの杖の魔石に入っていき、魔石の一部を桃色にしました。それからポンポンの髪の毛もまた少し七色の部分が増えました。
「バェェ、やったよ!ちゃんと桃色が取れたよ!」
「バェェェ!!」
ポンポンとバェェはぴょんぴょんボヨンと跳ねて喜びました。
それから帰り道は、またのろし台の魔女につかまると大変なので、ポンポンはバェェに乗ってひとっ飛びで山を降りて行きました。
「キンティールのおばば様、ドールブライス山脈に行ってきたよ~。」
「バェェ」
「おや、思ったより早かったね。」
「でも、のろし台の魔女のおばあちゃんがいなけりゃもっと早く終わってたよ。」
ポンポンはのろし台の魔女のことを思い出してブーたれました。
「だから言ったろ。あの魔女と話すんじゃないよって。」
「だって、おばあちゃんたち、困ってたんだもん…。」
「おばあちゃんたち?あんた気付かなかったのかい?あれは3人じゃなくて1人なんだよ。とっても意地の悪い奴で、昔っから何かっていうと、あたしのことを目の敵にするんだよ。」
「1人なの!?全然気付かなかった…、ねえ、バェェ?」
「バェェ」バェェはボヨンと1回跳ねました。
「まあ、無事にすんだみたいで良かったじゃないか。」
そう言ってキンティールはポンポンとバェェにレモンを甘く煮たスープを出してくれました。
「そりゃそうだけどさ…。」ポンポンはレモンの皮の苦いところをかじって、ちょっとだけ顔をしかめました。
「さあさあ、気を取り直して!次はゴマーベールの塔だろ?あそこにいる魔法使いは、あののろし台の魔女なんかより、よっぽどひどいからね。」
そう言われても、ポンポンにはあののろし台の魔女よりも悪い人がいるだなんて、ちっとも想像がつきませんでした。
「耳飾りはつけたままだね。外すんじゃないよ。今に役に立つからね。」
「はーい。」
「バェェェェ」
「そうだ、ポンポン。ゴマーベールの塔に行く前に、ポーツネール村に寄っていくと良いよ。」
色集めは、あと紫色と白だけなのに、思ったより簡単に終わらなそうで、ポンポンはちょっとだけ、くちびるをとがらせました。
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