第35話・神殿へのお供え物を重い頭で抱えていく。

「ポンポン、杖を出せ。」

ポンポンが杖をかかげると、ヌボチも自分の杖をかかげました。

ヌボチの杖を持つ両手が紫色になり、その紫色はヌボチの杖の先まで移動し、ポンポンの杖の魔石に入っていきました。

ポンポンの杖の魔石はちゃんと一部が紫色になって、髪の毛もほとんど全部が七色になりました。

「ありがとう、ヌボチ。」ポンポンは満足そうに自分の杖を見てからヌボチにお礼を言いました。

「…ポンポンは、友だちがいっぱいいるのか?」ヌボチがそわそわしながらポンポンに聞きました。

「お友だち?んーっと、バェェと、村のおばばと、ドワーフの人たちと、トットッタの人たちと、サンサーン火山のドラゴンさんと、ここの3階にいる白くまさんと、ヌボチかなー?」ポンポンは指折り数えました。

ヌボチはとってもビックリした顔をしましま。「友だちとは、そんなにたくさんいるものなのか?」

「あー、そうだね。でも、ムラのおばば以外は色集めを始めてからお友だちになったばかりだよ。」

「そ、そうか…。友だちとは、どれくらい会うものなんだ?」

「えー。わかんないけど、会いたくなったら会うんじゃない?バェェは毎日一緒にいるしさ。」

「毎日一緒…。」そう言ってヌボチはまた少しだけボーッとしたような、なんとも不思議な顔をしました。

「ポンポン、お前はまたここに来るのか?」

「うん。白くまさんとお茶の約束もしたし、たまに来るよ。」

「たまにとは、なんだ!?」

ポンポンは、なんでヌボチは王様のイスから立たないのか不思議に思って言ってみました。

「あんたがあたしに会いに来たら?」

ポンポンは鞄から地図を出してヌボチに見せながら言いました。「ここが今いるゴマーベールの塔でしょ。北に行ったらトットッタ村があって、トットッタの人たちがね、ユンユルガーの川に石の橋をかけてくれたの。その橋をわたって、メリーベール村があるの。色集めが終わったら村に帰るから会いにおいでよ?」

「ボ、ボクはそんな遠くに行ったことがない。」ヌボチが小さな声で言いました。

「あたしだって、今回色集めのために初めて村から遠くに来たんだよ。外はいろいろあって、すっごく楽しいよ!ちっともこわくないよ!」

「こわがってなんかない!!」ヌボチは顔を真っ赤にして怒りました。

ポンポンはクスッと笑って言いました。「まずはさ、この塔の3階にいる白くまさんに会いに行ってあげて?一人で退屈して編み物ばっかりしてるんだって。きっと4階にいるペヨヌース3世も遊びに行ってるはずだし、白くまさんの焼きたてのビスケットはとってもおいしいんだよ!」

「…気が向いたら行ってやる。」ヌボチがまた、小さな声で言いました。

「じゃあ、あたしそろそろ行くね。」

ヌボチはようやっと王様のイスから立ち上がって、外に直接行けるドアのところまでポンポンを連れていきました。「このドアをあけると外に行ける。今度からここのドアを使え。」

「ありがとう!もう小人さんの薬がないから、どうしようかと思っていたの。」

ポンポンはドアをあけてバェェを呼びました。

バェェはすぐに飛んできてくれて、ポンポンをボヨンと乗せてくれました。

ポンポンはヌボチと別れてから、ふと、疑問が浮かびました。

「あれ?ゴマーベールの塔の魔法使いって、おじじ様と仲が悪いんだよね…?もっとおじいちゃんかと思ってた。キンティールのおばば様が言ってたみたいに、のろし台の魔女よりも悪い魔法使いって感じでもないしなー。…まーいっか!」

「バェェェェ」バェェは、よく分かっていないのに、分かったふりをする時の返事をしました。


ポンポンはポーツネール村に戻ってきました。

なれてきたので頭をおさえなくても大丈夫になりましたが、髪の毛の籠に入れたバラの種はやっぱり重いのです。

「ねえ、このバラの種って、まだ入れてなきゃダメ?」ポンポンは紫色が入ってからさらに重たくなったように感じる頭をおさえてポーツネール村の村長に聞きました。

「色はもう全部そろったのですか?」

「まだだよ。あとは白だけだよ。白はピヨーロール神殿にあるから、もうすぐ終わるの。」ポンポンはちょっと得意そうな顔で答えました。

「ならば是非!是非ともそれまでバラの種を入れといてはくれませんか!?わしらポーツネール村の悲願である七色のバラのために、なにとぞ!なにとぞ!!」

ポーツネール村の村長は必死にポンポンに頼み込みます。村人たちも必死な顔でポンポンのことを見てきます。

「…白が集まるまでだよ?」ポンポンは結局断れませんでした。

「ありがとうございます!!!」村人たちは、みんなとってもうれしそうな顔をしたのでポンポンは、まあいっかと思いました。

「ピヨーロール神殿に行かれるならば、これを持っていくといいですよ。」そう言って、ポーツネール村の村長はポンポンにバラのジャムとバラの苗を渡しました。

「ピヨーロール神殿の司祭様はバラのジャムが好物なのです。それに司祭様はバラを育てるのもお好きなんだが、このところちっともバラが育たないと言っていたので、強くていい苗を植えてもらえば、きっと今度こそは立派なバラが咲くはずですからね。これをポーツネール村からだと言って渡してください。きっと司祭様はあなたに良くしてくれるはずですよ。」

「うん、わかった。行ってみるね。」ポンポンはバェェにボヨンと乗って、ピヨーロール神殿に向かいました。

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