第48話・ドラゴンの生唾が七色の玉を炎と一緒にはきだした。
ポーツネール村では、ポンポンたちがお願いしていた通り、大きめの樽一杯分の七色のバラの雫を用意しておいてくれました。
七色のバラの雫は樽一杯になみなみと入っていて、見る角度によって色がかわって見える、とっても不思議な色をしています。
七色のバラの雫があんまりいい匂いなので、ピョンピョンが七色のバラの雫を少しだけ飲んでみると、とってもおいしかったのでしょうね。
ピョンピョンはフワフワと夢を見ているような顔をして、コテッと眠ってしまいました。
ポンポンとバェェとロロさんも、七色のバラの雫がとってもおいしそうなので、少しだけ飲んでみたかったのですが、ピョンピョンの様子を見てとたんに不安になり、絶対に飲まないと決めて、すぐにサンサーン火山のドラゴンのところに持って行くことにしました。
「ピョンピョンちゃん、ちっとも起きないね。」
サンサーン火山について、とっても暑い火山の中に入っても、ピョンピョンはバェェの上で気持ち良さそうにスヤスヤと眠っています。
「バェ…!」バェェは火山の暑さで小さくなってピョンピョンを落とさないように、5つの顔に力を込めました。
「七色のバラの種や花、そこから採れる雫には何か特別な力があるのかもしれませんね…。」
ロロさんは火山の薄暗さなんかちっとも気にせずに、歩きながらノートに七色のバラのことやら、ピョンピョンの様子の変化やらをすごい勢いで書いています。
そうこうしているうちに、火山のいちばん下にいるドラゴンのところに到着しました。
「ドラゴンさん、こんにちは。色をまとめるための、七色の星の涙と七色の太陽のほほ笑みを持ってきたの。ドラゴンさんなら、まとめられるでしょ?」
「やあ、ポンポンさんにバェェさん。ピョンピョンさんは眠っているし、それから新しい人もいるね。こんにちは。
七色の星の涙と七色の太陽のほほ笑みか!懐かしいな!
前の色の魔法使いもぼくのところにそれを持ってきたよ。
ポンポンさん、バラの雫は持ってきたかい?」
ロロさんが背負っていた七色のバラの雫が入った樽を足元に置きました。
それからポンポンはドラゴンの指示通り、七色の星の涙の真ん中のへこんだ丸いところに七色の太陽のほほ笑みを置いて、その上から七色のバラの雫をたらしました。
七色のバラの雫はトローッとしているからか、不思議とこぼれたりせず、七色の太陽のほほ笑みを包み込んで、七色の星の涙の上でタプンタプンと揺れていました。
ポンポンは、それを崖のドラゴンからいちばん近いところからそっと押してドラゴンに渡しました。
ドラゴンは大きな口を目一杯あけて、ひと飲みしてしまいました。
それからドラゴンは目をとっても大きくあけてから、すぐに真上を見て、上に向かって口から炎をたくさんたくさん出しました。
そして、なにやら口をムグムグと動かして、もう一度、上に向かって今度は炎ではなく、七色の玉を出しました。
その玉はすぐにまっすぐ降りてきて、ポンポンの目の前でピタッと止まりました。
ドラゴンは汗をいっぱいかいて、大きなため息をひとつついてからポンポンに言いました。
「ふぅ…。これで、ポンポンさんの杖の魔石の色をまとめることができるよ。
もしかしたら、ポンポンさんには重たいかもしれないなぁ。」
ポンポンの目の前にある玉は、ポンポンが両手を出すと、ストンと落ちてきました。
「重い!!」
たしかにドラゴンの言う通り、ポンポンひとりでは持てないくらい重たいです。
「ロロさん!あたしのカバンから白くまさんのマフラーを出して!!」
「はいっ!!」ロロさんはポンポンのカバンの中から白くまのおばあちゃんがくれたマフラーを出して、それを何回か折って袋のようにして地面に置きました。ポンポンはその上に静かに玉を置いて、マフラーの折っている角をつかんで持ち上げました。
「うわぁ!やっぱり白くまさんのマフラーはよくのびるね!」
白くまのおばあちゃんのマフラーは玉の重さでたくさんのびていましたが、ロロさんが折って重ねたので、マフラーの編み目のすき間から玉は落ちたりしませんでした。
玉の入ったマフラーを両手で持って、ポンポンはロロさんに尋ねました。
「ロロさん、この玉、どうしたらいいの?」
「こっちに渡してもらおうか!」
「えっ!?」
ロロさんではない、別の人の声に驚いてポンポンとバェェが声の方を見てみると、そこには神殿にいたにせ物の司祭、ビャンビャーがロロさんを杖でおさえつけて立っていました。
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