閑短話
風の夢
夢を、見た。
向かいから、親子が歩いて来た。
街の雑踏の中。
父親と、母親と、その真ん中に、二人に両手を繋がれて、きゃっきゃと笑う男の子。
買い物の帰りなのか、父親は手を繋いでない方の腕に、沢山の野菜や果物が入った袋を抱えている。
母親の方も、繋いでいない方の腕に、ピンク色の花束を抱えていた。
三人の会話が聞こえてくる。
『今日はお客さんが来るんだよ』
『そう、おとうさんとおかあさんのお友達よ』
『おともだち?』
『そう。おとうさんと、おかあさんの、大事な大事なお友達』
『ぼくよりもだいじ?』
『同じぐらい大事さ』
父親が、手を離し、子供の頭を優しくわしわしと撫でる。
母親が、それを愛しそうな目で見ている。
その三人が、立ち尽くす僕の脇を通り過ぎる。
『なにやってるんだ?』
立ち止まった父親が、振り返る。
『そうよ。早くいらっしゃいな。今日はごちそうよ』
母親も振り返る。優しい優しい微笑みで。
『はやくはやく!』
子供が僕に両手を振る。
『今日は、あなたが久しぶりに訪ねて来てくれた、お祝いなんだから』
『そうだぞ。おい、早く来いよ──』
──ティム──
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます