閑短話

青の夢

 夢を、見た。


 白地に黒と茶色の毛の混じった子供の狼が、畑の土をせっせと掘り返して泥だらけになっていた。


 そこへ


『こらーっ! そこは種を蒔いたばっかりなんだぞ!』

 怒った黒髪の少年が、木でできた左腕を振り回しながら、子供の狼のところへと走っていく。

 しかし、遊んでくれていると勘違いした子供の狼は、畑を跳ね回りながら逃げ出した。

 それをなんとか捕まえようとして、少年も泥だらけになりながら畑中を走り回る。


 その様子を少し離れたところで、白地に黒と銀色の毛の大人の狼が、舌を垂らしながら笑顔で眺めていた。


 すると、近くにあった家の玄関から、白銀の髪を持つ透き通った肌の妙齢な女性が出てきた。


 腕組みをして、泥だらけになって走り回る少年と子供の狼を睨みつける。

『アンタたち……またそんな泥だらけになって。水風呂にぶち込まれたいのかい?』

 それを聞いた子供の狼が、急に勢いを無くして小さくなる。

 少年も急ブレーキをかけて、小さな肩を落としてシュンとした。

『冗談サ。お風呂沸かしてあるから、さっさと入っておいで。夕飯がもうすぐ出来上がるよ』

 その言葉に、急にパァっと笑顔になる少年。

 子供の狼をひっつかみ、家の中へとバタバタ戻って行った。


 笑顔でその様子を見送る女性。

 家に戻ろうと、大人の狼に合図して踵を返す。


 と、何かに気付いたように、足を止めて振り返った。

 そして──


『そんな所で何やってんだい。アンタも早く家に入りな──』


 ──ヤン──

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数多の誰かの物語 牧野 麻也 @kayazou

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