他の方と同様コミカライズから来ました。興奮冷めやらぬまま、コミックと小説を購入して、その先もここで読んだところです。
Amazonのレビューで、1巻の時点で「すっきりした読後感!この調子で!」みたいなのを見ると、これを書いた人は無事だろうかと要らぬ心配をしてしまいます。それくらいこの作品は、出だしこそテンプレだけど、思わぬ方向へ展開が深化していきます。冴えわたる文章(特にボスと対戦するところ、こんなんどうコミカライズするんだと思ったら、コミックの方もすごくよくてテンション上がりました)はもちろん、人物の掘り下げもすごくて、主人公やヒロインだけでなく、ざまぁの対象となるクロノスですら解像度の高い描写がされてて「生々しいクズ」なところが素晴らしいです。
過去編を読んで、自分は女だからこんな感想を持つのかもしれませんが、ヴィムとハイデマリーは、嵐が丘のヒースクリフとキャシーみたいだなと思いました。女性向け作品も多く読みますが、嵐が丘を連想させるモチーフは見たことがありません。確かに、あの激しい関係は女性向けでは消化しきれないと思います。でもまさか、こんなところで見つけるとは思いませんでした。ヴィムとハイデマリーの孤独な魂はどこへ行きつくのかまだ分かりませんが、世間一般の幸せとは違う形でも「よかったね」と思える着地を望んでいます。
こんな主人公アリなのか??
めちゃくちゃカッコいい。ただ、普通のかっこよさではない。
見た目は根暗で卑屈で猫背で短髪で。
目立つようなキラキラの大技もない。
必殺技だってない。
よくあるハーレムモノでもない。
読み進めてると「最弱職が実は最強」系のやつだと思った。
違った。
見事に、いい意味で裏切られた。
主人公の心理描写に思わず引っ張られてしまう。
明るい描写にひとついつまでも消えない黒いシミを残す文章が「早く次を」とページを捲らせる。
コミカライズも最初の方は読者コメントが辛口だったが、回を追うごとに「早く続きを」と求める声に変わった。
スッキリとした読後感はないかもしれない。
スカッともしないかもしれない。
主人公の彼と一緒に読者も気持ちよく闇へ沈んでいくような、そんな作品である。