王宮にて② ~王様のお気に入り~
王様は、時々質問を交えながら、楽しそうに話を聞いてくれた。
組んでた足をそのうち崩し、身を乗り出して話に聞き入ってた。
僕も調子づいてきて、そのうち身振り手振りを交える。
熱く語った!
語り尽くした!
そして、話の最後を締めると、王様は拍手を送ってくれた。
補佐官のオジサンや、兵士たち、少年達、エルザも、僕に拍手をくれた。
「面白かった! 客人──アル、と申したな。まだ面白い話は持っているのか?」
「そうですね。色々な国を見て来たので、それなりに」
「そうか」
王様は、本当に面白かった、といった顔でご満悦。
よかった!
僕はやりきった!
やりきったよ!
僕の命は未来へと繋がったよッ!
「では、明日も話を聞かせてくれ。今日は城に泊まるといい」
──はい?
「誰か。客人に部屋を用意しろ」
「かしこまりました」
かしこまらないでよ!
「あああああああああああああ……あのッ……」
「今日はもう遅い。ご苦労だったな。下がっていいぞ」
有無も言わせてもらえなかった……
「それでは、私めもこれにて御前を失礼させていただきます」
「ああ」
エルザが、再度深々と頭を下げる。
僕も慌ててそれにならい、スタスタと部屋を後にするエルザの後ろをついていった。
「じゃあ、今日はここでお別れだな。──まあ、アタシはこのまままた執務室に戻る」
部屋を出てすぐ、エルザは僕に向かって言った。
顔はにやけてる。
「あの……エルザ……?」
「大丈夫。とって食われはしないから。何かあったら連絡くれればいい」
「いや……そうではなくてですね……」
「気に入ったんだよ。アイツは友達が少ないからな。──友達になってあげてくれ」
──友達?
エルザは、にっこり笑ってぽむぽむと僕の肩を叩くと、そのまま、キョトンとして言葉を失ったままの僕を置いて、自分の執務室へと戻って行った。
友達って?
僕が?
王様の友達に?
なれるわけないじゃん!
という心の叫びも、エルザには届かず。
結局、僕は王宮の客間(死ぬ程豪華)に案内され、お泊りする事となってしまった。
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