第三章 Absolute Beginners
第三章 Absolute Beginners①
どうやらホールデンは知らない間に社員になっていた様だ。
それもあの一流
ホールデンはおそるおそる扉を開く。すると、目の前の受付の
「ラロケット・インクへようこそ。私は受付のメリー・ルウです。本日はどのようなご用件でしょうか?」
営業スマイルだが、彼女の持つゆるやかな雰囲気のせいか非常に癒される
「え、えっと……あの……その……」
ホールデンはそんなメリーの雰囲気にのまれしどろもどろになる。
「あっ! もしかして新入社員の子かな?」
そんなホールデンの様子を見たメリーは先程までの事務的な口調を改め、
「あっ、えっと……そ、そうだと思います……」
「『そうだと思います』って、なんで自信がないのかな」
メリーはくすくすと笑う。
「その、これにはやんごとのない事情がありまして」
「名前教えてくれるかな? 調べてみるからさ」
ホールデンは自分の名前を告げる。すぐにメリーは自分の
「ええっと……あったあった! ホールデン君はちゃんとウチの社員に登録されているよ」
「……本当だったんだ」
「えっ?」
「あっ、いえこっちの話です」
「そっか。それにしても初日から
「す、すいません」
顔を赤らめ、ホールデンにしては
「うんうん。人間だもん、
メリーは
その
ホールデンは自然な流れで己の手をメリーの
(ま、まずい! これはあの時のスキル《
「はっは。お互い遅刻なんて運命を感じずにはいられないよ」
(コイツ、こないだ運命は
「? 運命?」
「そう! 運命さ! 君みたいな愛らしい子と同じ日に遅刻したなんて運命以外当て
(なんなんだよ! 『遅刻って概念を共有した』って誰か俺に説明してくれよ!)
「概念???」
メリーは頭上にいくつものクエッションマークが出現したように小首を
「君は考えなくてもいいんだよ。このボクに
ホールデンは
(このダボが! なんでこいつはすぐにキスをしようとするんだよ!)
「あっ、もう始まっちゃう! こっちこっち!」
そう言うとメリーはホールデンの
「はっは! 奥ゆかしいな。こんな公衆の面前ではその
ホールデン(ジゴロVer.)が何かおぞましい事をつらつらと語っているうちにメリーは目的の新入社員説明会会場に
「ここだよ。ギリギリ間に合ったかな。それじゃあホールデン君またね」
「はっは。ここが君と僕の愛の巣ってわけだね。さぁはじめ………うん?」
ホールデンの心音が一瞬で元に
「愛の巣? 貴様何を頭が
みるとそこは大きな会議室の様な場所で、部屋の奥のホワイトボード前にいる背の高い女性があきれた表情でホールデンを見る。
「……お、おはようございます」
ホールデンはとりあえずといった感じで
そこにいた新入社員10人が
ホールデンが部屋の中を
1つがサリー・バーンズ。ホールデンを見ると
そしてもう1つは……
「アナタは……」
その人物はあまりにも
「げっ! メグ・フラワーズ……」
メグは、ホールデンに
ホールデンは
「誰だ貴様は? ウチになんの用だ?」
カツカツと
「ホールデン・ドハーティです……」
「ああ。あの【遊び人】の〝
「い、一応ここの社員になってるみたいなんですが……」
「はっ!?」
メグは
「静かにしていろフラワーズ」
そうメグはたしなめられると、「ぐぬぬ……」なんて
その場にいた新入社員達はホールデンがラロケット・インクの社員だと告げると、にわかに
「静かにしろ! 私語を許した覚えは無いぞ」
背の高い
「社員だと? ……知らんな。私は何も聞いていないが」
ホールデンに向けた声には、
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