第五章 Wave Of Mutilation③
17時になりホールデンは約束通り第1区画の中央にある時計台広場に来ていた。ここから東西南北に延びる道にはびっしりと商業店が並び、人で
「フラワーズ、わりー待ったか?」
「……
メグは先ほどのことを根に持っているのか、非常に
「お、おう……」
ホールデンはその
しばらく会話が無いまま買い物が続けられる。その買い物の内容は、
ホールデンは気まずい中、荷物運びを
やがて、
「奇書、稀書? なんだこの店」
そう言うと、店に入る。
『自殺用・読むと7日後に死ぬ本』『
『魔導書 金の
その本からは
「オヤジ、これいくらすんの?」
「5500ルードだよ」
「5500ルードぉ!? 間違えてねーか!?」
「5500ルードで間違いないよ。この本は絶版してるからもう新品じゃ手に入らないよ」
「ぐっっ……少し考える」
ホールデンはそういうと店から
しかし、どうしても先程の本が読みたかったので、ぐるぐると買うべきか、買わざるべきかを考えながら歩く。
そこに銀のアクセサリー屋をじっと見つめているメグの姿を発見した。
「こんなものまで買い物
ホールデンが横から声をかける。その店は色々な形の指輪、ネックレス、ピアスを売る店であった。メグは、その中の指輪を手につけ
「……違うわ。これは個人的に欲しいと思って見てるだけ」
そういうメグの瞳は年相応にキラキラと光っていた。
「そんなに欲しいなら買えばいいじゃんか」
「私は
そんなに高いのかと思い値段を
「1万ルードならお前の
ホールデンは、あの
「……そんな事できないわ」
それ以上
そこで
(
ホールデンは
(こいつを使えば、難なくあの本をフラワーズに買わせる事ができる!)
そう思い至ったホールデンは努めて冷静にメグに勝負の提案をしようとする。
『あぁそれと人を
ヴィンセントに言われた言葉が思い起こされる。
(100億も借金背負わされたんだから、少し位返してもらっても
そう結論づけると、メグに話しかける。
「あー、フラワーズ君。提案があるのだが聞いてくれはしまいか?」
「君も個人的に欲しい物があるみたいだね。何を隠そう、私も欲しい本があるのだよ。で、そこで提案なのだが、ある勝負をしてそれに負けた方が勝った方にその欲しい物をおごるっていうのはどうだろうか?」
ホールデンは大仰に身振り手振りを交えて
「はぁ? なんで私が
メグはホールデンの提案に乗ってこない。が、ホールデンは根気づよく提案を続ける。
「まぁ聞けって。フラワーズが欲しい指輪は1万4000ルードだろ? 俺が欲しい本は5500ルードだ」
「だから何?」
「お前が1万4000に対して俺は5500。どう考えたって俺のがリスキーだろ?」
「……」
メグは思案顔になった。先ほどの反応からすればかなり
「それとも、俺みたいな【遊び人】に負けるのが
正直
「そこまでいうならやってあげるわよ。後で泣きをみても知らないから」
(かかった!)
「勝負は簡単さ。この1ルード硬貨を投げて、裏表を当てるだけだ」
そういうとホールデンは右手で1ルード硬貨をポケットから3枚取り出した。
「ちょっと待って」
メグが声を上げた。ホールデンの心臓は
(ま、まさか……ばれたのか……?)
メグは自分の財布から1ルード硬貨を取り出し、投げてよこした。それを危なげなく左手でキャッチする。
「あなたが提案してきた勝負なんだから、コインはこっちを使いなさい」
「ああ、もちろんだとも」
(あっぶねー! マジでビビった! が、コインは何を使っても
「そんじゃ、投げるぜ」
右手にコインを持ち直し、
『私は無駄遣いできないの……』
そう言ったメグの言葉は重く、何かしらの事情があることは容易に想像できる。
(……俺はこいつから100億ルードの借金を背負わされてるんだ……少しくらい)
『……そんな事できないわ』
父親に買ってもらえばいいと言った時のあいつの表情。親には絶対に
そこでホールデンの心象に映し出されたのは、自分達を見捨てた父親の姿だった。金に
「……表、裏どっちを選ぶ?」
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