第五章 Wave Of Mutilation②

今いる外注受注クエスト課の面々を奥にある一番大きな会議室に集めた。


「ここにいない者にも後で通達するが、先ほどヴァリス・ラニスター氏からきよがくの依頼がい込んだ」


 課長がそういうと、履歴書ウオークオブライフに今回の依頼のしようさいが送られてくる。




依頼者  ヴァリス・ラニスター。ねんれい57。職業ジヨブ商人The Wealth

依頼内容 アリア・ラニスターの奪還。条件 アライブ オンリー

がいよう   4日前の夜よりラニスター家ご息女である、アリアじようが家に帰宅しなかった。れんらくを何十回も取るも、つながらない状態。私設兵団をそうさくに出したが、行方ゆくえ知れず。クートヴァス・インクへ通報済み

補足   ここ数ヶ月で起こっている連続誘拐事件とのかんが疑われる

依頼達成クエストアツプ 4

依頼額  5億ルード




 てんしてあった写真に写っていたのは、くりいろやわらかそうなかみで、目がクリクリした笑顔がとても似合う美少女であった。この子がアリア・ラニスターなのだろう。


「かわいい子だね」


 サリーはホールデンに耳打ちをした。

 しかし、ホールデンはその美少女よりも書かれていた依頼額に目を見張った。

 5億ルード。これはホールデンが入社してから最高額の依頼であった。5億以上の依頼ということは仮に1人で達成なんかした日には、5000万ルードが入る計算になる。


「現状、社長をふくめウチの主力メンバーのほとんどが第一級幻獣プロトスガタノトーアのとうばつでキースデーンの山奥にあるしん殿でんに行ってしまっているので1ヶ月は戻らない。なので、この件は今いる全ての社員で当たる事にする。もちろん今持っている仕事をこなしつつやる事だ。以上、業務に戻ってくれ」


 おのおの、自分の持ち場に戻って行く。


「それにしてもすごい依頼額だね」


「5000、5000、5000……」


 ホールデンはサリーに話しかけられているのにも気がつかずに、自分が成功した時の額を連呼していた。それを見たサリーはしようすると自分の業務に戻って行った。


「……ホールデン」


 いつの間にか現れたティアがホールデンの服のすそをクイクイと引っ張る。


「5000、5000、5000……」


「……ねぇってば」


 さらに強く引っ張るとようやくホールデンはティアに気がついた。


「なんだよ?」


「……私も美少女だから誘拐される危険があると思う」


「ええっと……だれが誘拐されるって?」


 ホールデンはキョロキョロとワザとらしく周りをわたす。


「……私に決まってる。この会社インクで私よりも美少女はいないから」


 いつも以上にな顔でそういってくる。


「いや、お前を誘拐しようとする命知らずはそういないと思うけどな」


 ホールデンののうに以前、あんきよの宿のメンバーの骨をぐちゃぐちゃにした事がかんだ。


「……私、か弱い美少女なのに」


「いでででででででででででででででででででででででででででででででででで!!!!」


 ティアは力任せにホールデンの太ももをつねった。

 ホールデンは身をひるがえしティアのの手からのがれる。


「か弱い美少女はこんなコトしないっての……」


 太ももをさすりながら非難の声を上げた。


「もし、私が誘拐されたら……ホールデンは助けてくれる?」


 ティアはうわづかいでホールデンを見る。その表情に非常に保護よくをかき立てられる。そして身長が低いためホールデンの視線にはティアの大きな胸が視界に入ってしまう。それにともない心音が大きくなり意識がうすれて行く。


(や、やばい……《女殺しジゴロ》が発動しちま……)


 ここ3ヶ月でなんとか《女殺しジゴロ》をせいぎよしていたのだが、こうして不意にくる時にはいかんともしがたかった。そしてホールデンは意志のづなを手放した。

 ひとみももいろになると、ティアの後ろのかべかたうでを押し付けた。


「君がそんな事になったら僕はいても立ってもいられなくなるさ。この身が引きかれる思いになる。その証左に誘拐されたって事を考えただけでも僕の心は落ちついていられない。もし、そんな事態になったらこの命にかけて助け出すよ」


(ああああああああああ。相変わらず脳みそがける様な事いいやがる……)


「……本当に?」


 ティアは小首をかしげると、熱っぽい瞳をホールデンに向ける。


「もちろんさ!」


 ぐっと親指を立てて快活に言う。


「……私を助ける事もできないなら、私の家に婿むこりなんてできないから」


(誰も婿入りそんなこと望んでないんだっての!)


 心の中でそう思ったホールデンとは裏腹にジゴロVer.は、ティアのあごをクイっと持ち上げた。ティアは顎を持たれた事により赤面して、ホールデンの手をりほどく。


「……かんちがいしないで。まだ私は貴方あなたを認めた訳じゃない。だから私のくちびるを……その……うばうのはまだ許可しない」


 ティアは視線をらすと、今のホールデンのこうおどろいたのか小刻みにふるえていた。


「あぁ……なんて愛らしく、いじらしい小鳥ちゃんなんだろうか。僕の中の君に対するいとおしさがてんじよう知らずで上がって行くよ。この気持ちは誰にもおさえられない! そう! さながらしく天を目指すのぼりゆうごとく! 誰にもじやなんてさせない! 早く君に僕を認めてもらいたい……そうしないと、僕の昇り龍の如き気持ちが天をはるとつしてしまい、空にこうこうと輝き続けるあのお月様を君への気持ちの強さでしようめつさせてしまいそうだよ」


 ホールデン・ジゴロVer.はおおぎようり手振りを交じえてその最高になぞ台詞せりふをティアに聞かせた。ティアはその熱がこもったホールデンの視線から逃れる様に顔をそらす。


「……なら、早く貴方の力を提示して」


「すぐにでも!」


 ホールデンはもう1度親指を立てる。


「……別に、アンタがいちゃつくのは勝手だけど、時と場所を選んでくれないかしら?」


女殺しジゴロ》がいつしゆんでとけてしまうほどの冷たさとあつをはらんだ声が聞こえてくる。


「邪魔だからどっか行ってやってくれない?」


 ホールデンがメグのその勢いに押されていると、ティアがいつもの調子にもどる。


「……メグ・フラワーズ。彼は今、私の家に相応ふさわしい男かどうかのきわめテスト中。横からしゃしゃり出て来てどろぼうねこみたいな真似まねするのは王族として品位に欠けると思う」


「ど、泥棒猫……?」


 メグはなんとか体裁を整えようと必死に表情を作るが上手うまくいかなかった。


「……ティアさん、何か勘違いしている様なのでていせいさせて頂きますね。ここは職場で仕事をする為の場所なんです。断じて貴方達みたいにいちゃいちゃする為の場所じゃないです。気が散るから少し……本当に少しだけ怒っているだけです。だから貴方達がその……いちゃいちゃしている事に対して怒っている訳じゃないんです」


 いかりを必死にかくそうと言葉を一気にき出すメグ。


「……なら、ほかのところでやれば問題ないってコト?」


 ティアはさらに追い打ちをかけるように言う。

 メグはゆがんだみを浮かべ、口角が細かくけいれんする。せっかくの美少女が台無しである。


「ど、どうぞ好きなだけ、満足するまで、気の済む様にして下さいまし。私の目の届かない所でね!」


「あんぎゃあああああああ!」


 フンっと鼻息あらくその場を去るメグ。その際にホールデンの足を力の限り踏みいて行った。


「な、なんでいつもこんな事に……」


 そんな悲痛なホールデンのさけびはそうぞうしい部屋のけんそうの中に消えて行った。

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